“Mr.リモートワーク”として数々のメディアで活躍している、キャスター取締役CRO(Chief Remote work Officer)の石倉秀明さんと、同社の広報であり、パラナビお馴染みの複業家・坪井安奈さんの対談が実現。パラレルキャリアを実践しているお二人に、キャリア論を聞きました。新しいキャリアの始め方がわからない、やりたいことがみつからない……そんな悩みを抱える人へのアドバイスも。必見です!
Contents
「下手でもいいからとりあえずやってみる」が、パラキャリの第一歩
――今、パラレルキャリア(複業)の機運が高まっています。先駆者として、坪井さんが思う「パラキャリのよさ」って何ですか?
石倉
今は、少し先の未来すら不透明な「VUCA時代」といわれます。どんな能力がある人でも、どんな大手企業に勤めていても「100%の安定」はありえません。収入源が複数あることの安心感は、相当大きいと思います。
坪井
石倉さんが思う、パラキャリの面白さはどんなところですか?
石倉
キャスターの取締役になって少し経ち、いろいろなメディアに出るようになったのが僕にとってのパラキャリ第一歩です。やってみて感じるのは、「アウェイな環境には、ホームとは違う面白さがある」ということ。僕にとってキャスターはホームで、外の世界はアウェイですが、求められる役割も、頭の使い方もまったく違うんです。それから、外に出ることで改めてキャスターのよさを感じる場面も多いですね。「あ、キャスターでの当たり前って、世間の常識とは違うんだ」って気付ける。
――パラキャリって面白そうだなと思い、興味を持っているものの、勇気がなくて踏み切れないという人もたくさんいます。
坪井
前提として、全員がパラキャリをしなきゃいけないなんてことはないですが、もし興味があるものがあるなら、「何かしら始めてみること」がいちばん大事だと思います。簡単なことからスタートすればOK。必ずしも、資格を取ったりスクールに通ったりする必要はないと思いますよ。
石倉
例えば「私はデザインが好きだから、まずは資格を取ってデザイナーになろう」と考える人がいますが、それよりも「とにかく、何か1つデザインしてみること」が大事。下手でも失敗してもいいから、とりあえずやってみることですね。失敗してもリスクが少ないし、間違えたと思ったら軌道修正できるのがパラキャリのいいところです。やってみて初めて、次のステップが見えると思います。
目の前の仕事に全力でコミットすることが、意外だけど近道
坪井
1つの仕事を突き詰めているうちにどんどん活躍の場が広がって、気づいたらパラキャリになっていた! というケースも意外とあります。仕事仲間から信頼されていたら、何かの折に、ほかの場所で「一緒にやろうよ」って声をかけてもらえるかも。何が未来につながるかわからないですよね。
石倉
かくいう僕も、文章を書く練習をしたいと思ってブログをコツコツ書いていたら、反響を呼んで書籍になりました。未来への1歩目は、意外と身近にあるのでは? まずは、目の前にある仕事に全力でコミットすることですね。そこで結果を出し続けるのが、意外かもしれませんがいちばんの近道です。パラキャリ全盛の世の中だからこそ、1つのことに集中して努力できる人の価値が高まっていると感じます。
坪井
「みんながやってるから、私もパラキャリしなきゃ!」と、周りを見て焦る必要はありません。パラキャリをしているという事実よりも、「私はなぜ、何のためにパラキャリするのか?」を考えること自体が価値です。
「やりたいこと・好きなこと」よりも「できること」のほうが大事
――「好きなこと」「やりたいこと」が見えない人は、どうしたらいいのでしょう?
石倉
「やりたいこと呪縛」に苦しめられている人、たくさんいますね。でも大丈夫。必ずしも「好き」から入る必要はありません。好きなことと得意なことは、必ずしも一致しないからです。逆に、それほど好きじゃない仕事だって、目の前のことに淡々と取り組むうちに面白くなってきて、やがて「やりたいこと」に変わるかもしれません。
坪井
石倉さんが以前「ほかの人はどうやら苦労しているようだけど、自分はなぜかサッとできちゃうこと」が得意なことだって言われてたじゃないですか。あの言葉が印象に残っていて。得意なことって、意外と自分では自覚がなかったり、見えづらいものなんじゃないかなって思うんです。そこにもっと目を向けられると、生き方や仕事の仕方も変わってくる気がします。
石倉
僕は、キャリアにおいて大事なのは「やりたいこと」ではなく「できること」のほうだと思います。どんなにやりたいことでも、それが求められていなければ仕事にはなりません。それに、自分の希望する仕事に就いて希望したキャリアを歩めるかどうかは、自分の力だけでは決められないケースが大多数。だから、あるかどうかもわからない「やりたいこと」を延々探すよりも、「できること」を地道に増やしていくほうが、自分の可能性が広がると思いますよ。
坪井
そうですね。「やってみたいこと」や「興味があること」ってある意味、自分が持っていないものへの「憧れ」みたいな側面もあると思っていて。実際にやってみたら想像と違った! やっぱり興味ないかも! なんてことも往々にしてあります。私も自分の興味や好みって、信じられないくらいどんどん変わりますし(笑)。だから、もし「やりたいこと」をキャリアにしたい意志が強いのなら、さっきも言いましたが考え込まずに「まず何か小さなことをやってみる」のが大事。やってみて初めて、自分に足りないものや今やるべきことが見えてくると思います。
――最後にパラナビ読者に向けて、お二人からメッセージをお願いします。
坪井
パラキャリを踏み出せないでいる人は、「他人にどう思われるか」を考えすぎちゃう人が多い気がします。他人の目は、自分を客観視するための1つの指標としてはアリですが、そればかり気にしていると窮屈です。それよりも、自分自身が気持ちよくいられることや今のスキルでできること、やりたいことの実践に目を向けて。それを優先してみてください。
石倉
自分をメタ認知するのは意外と難しいので、例えばSNSにアウトプットして、ブレイクダウンしてみるのがオススメです。どういう状況で自分の感情が動くのか、そのとき自分の中にどういう変化が起きるのか見えると、自然と自分を客観的に眺められるようになると思います。
――やりたいことよりできること。肝に銘じます。ありがとうございました!
坪井
私が思うパラキャリのメリットは主に4つあります。まずはやりたいことが複数あるときに、どれも諦めずに済むこと。挑戦したいことがあるのにできない環境って、すごくもったいないですよね。2つめは、違う仕事同士で相乗効果が生まれること。ある仕事で得たスキルや能力を、ほかの仕事でも生かせるというのはよく聞く話です。3つめは、精神的な安定を図れること。例えば、どこか1つの組織でモヤモヤすることがあったり、人間関係のトラブルがあったとしても、「私の世界はここだけじゃない!」と思えることで悩みすぎなくなりますし、フラットな目線や態度でいられます。そして4つめは、経済面。お給料を上げることって難しいですが、仕事を増やすことって実はそこまで難しくないんですよね。