働く上で、欠かせない「お金」の話。副業をはじめとしたパラレルキャリアで収入を得ていると、避けて通れないのが「確定申告」です。でも、いまいちよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか? 難しく感じられて、つい目を背けたくな理そうな確定申告は、1年間に発生した収入と収支を振り返る大事なもの。今後も様々な働き方を探っていくならば、お金との付き合い方を見つめ直すチャンスになります。そこで、税理士の山口翔さん監修のもと、確定申告についての基本を解説していきます。
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面倒だけど大切! 確定申告は1年間の収支を把握する機会
確定申告とは、1月1日から12月31日の1年間に発生した所得や経費から「所得税」を計算し、税務署へ申告する手続きのこと。2020年は2月17日(月)から3月16日(月)が申告期間です。(※2020年は、新型コロナウイルスの感染が広がっていることを受け、国税庁は、4月16日まで延長すると発表。その後、さらに再延長し、4月17日以降も可能になりました。)
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の大きく2種類があり、青色申告はさらに、控除額の違いによって、2つに分けられます。
ただし、青色申告は「開業届」と「青色申告承認申請書」を出して税務署の承認を受ける必要があります。承認を受けていない人は、自動的に白色申告になります。
会社が行ってくれる年末調整との違いは?
本来は国民一人ひとりが収入を申告をして、所得税を納める必要があります。その申告納税を会社が行うのが「年末調整」、個人が行うのが「確定申告」です。
給与所得については、会社が税金を給与から毎月天引きし、税務署に納税。この徴収額は概算のため、年末に過不足を計算することで、税金の納付と清算が完了します(=年末調整)。
そのため、給与所得以外の収入がある場合は自分で計算し、申告する必要があるのです。
確定申告が必要な基準は「所得」が20万円以上かどうか
会社員の仕事とは別に収入を得ている場合、確定申告が必要な主なパターンは2つです。
1)給与所得が1カ所のみで「給与」「退職」以外の所得が20万円以上ある
2)給与所得が2カ所以上からあり、副業の給与収入が20万円以上、または「給与」「退職」以外の所得が20万円以上ある
ポイントとなるのは、本業以外の「所得が20万円を超えているかどうか」ということ。もし20万円超の売り上げがあっても、経費を差し引いて20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。まずは、自分の売り上げと経費を把握し、所得を確認しましょう。
ちなみに、フリマアプリなどで洋服や本などの生活必需品を売って収入を得た場合、生活必用品は非課税のため、確定申告は不要です。ただし、1個もしくは1組で30万円を超える宝石や絵画などを売る場合や、営利目的(※)の場合は、確定申告が必要になります。
(※)営利目的の例:転売やせどりなどで生活必需品を販売、ハンドメイド作品などを販売
パラレルキャリアで得た収入は、何所得になる?
所得税は、収入から必要経費を差し引いた「所得」を基準に税金を計算します。所得は職業や収入の得方などによって10種類にわけられ、自分の得た所得がどの区分に該当するのかを把握し、申告する必要があります。パラレルキャリアに関係する主な所得は以下です。
確定申告をしないと、ペナルティも
確定申告を行わずにいてもバレないのでは……と思うこともあるかもしれませんが、税務署は個人の口座を調査でき、最近ではSNSなどから収入を得ていることがわかるケースもあるそう。
また、企業から仕事を受けた場合、企業側は報酬の支払いがあった際に発行する「支払調書」などの記録を残す必要があるので、こうした記録から個人に報酬を支払ったことがわかります。
もし申告期間内に確定申告を行わないと、次のような罰則が発生します。
延滞税
法定納期限の翌日から納付するまでの日数に応じて、延滞税が加算されます。
・納付期限日の翌日から2カ月以内に完納した場合……年率7.3%、もしくは特例基準割合に1%を加えた割合の、いずれか低い方
・納付期限日の翌日から2カ月を超えて完納した場合……年率14.6%、もしくは特例基準割合に7.3%を加えた割合の、いずれか低い方
無申告加算税
納めるべき税金の申告し忘れや、そもそも申告しなかった場合は、無申告加算税が発生します。原則として、納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%を乗じて計算した金額を支払います。税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は5%です。
確定申告の義務が発生しているにも関わらず、確定申告を行わないと、申告漏れになってしまいます。また、本来は得ている所得を申告しないことで、住宅ローンなどの借入限度額が下がったり、そもそも借りられなくなってしまうことも。
確定申告は、いわば個人の決算。自分のスキルで得たお金をきちんと把握することは、新しい働き方への道筋を立てていくことにもつながるといえそうです。
監修 税理士・山口翔さん●山口翔税理士事務所代表税理士。平成18年に一橋大学商学部経営学科卒業後、平成22年に税理士試験合格、翌年税理士登録、平成24年に開業。会計・税務の専門知識を通じてお客様の人生・経営をサポートする。