“Mr.リモートワーク”ことキャスター取締役CRO(Chief Remote work Officer)の石倉秀明さんと、キャスターの広報であり、パラナビお馴染みの複業家・坪井安奈さんの対談が実現。「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げるキャスターでは、約1500人のメンバーが全員リモートワークで働いています。リアルで会わずとも、確実に会社を育てていくキャスター流・リモートワークの極意とは?
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リモートワークによって、マネジメントの課題が浮き彫りに
――今、リモートワークをはじめ、働き方・働く場所の選択肢が大きく広がっています。
坪井
非ITの業界でいかにリモートワークを活用していくか、ですね。
石倉
そうですね。例えばクラウド監視カメラを使えば、飲食店の店長が1人で複数店舗の状態を見て、現場にリアルタイムで指示を出すことができます。また、分身ロボットを通して障がいを持つ方が接客業に就いている例もありますね。身体的・物理的な制約を減らせることは、リモートワークの大きなメリット。新しい働き方の可能性がどんどん広がっているのは、歓迎すべきことです。
――一方、リモートワーク環境で「チームビルディングができない」「メンバー同士の信頼関係を築けない」という悩みを抱えている現場が多いようです。
石倉
逆に、全員がオフィスに出社していた頃を振り返ると、必ずしも良いチームをつくれていたとは言い切れない企業が多いのではないですかね? とくにメンバー同士のコミュニケーションは、昔からマネジメントの課題としてよく耳にするものでした。つまり、リモートワークによって働き方やコミュニケーションの方法が変わったことは本当の課題ではなく、マネジメントスキルの問題なのではないかと思うんです。
坪井
もとからあった課題が浮き彫りになってきたということですよね。
――坪井さんは、リモートワークによるご自身や周りの変化は何か感じられますか?
坪井
コロナ禍でリモートワークが増え、家にいる時間が長くなったことで、ワークライフバランスを考える人がより増えたように感じます。私自身はコロナ禍より前からリモートワークをし始めていましたが、振り返ってみると会社に求めるものを改めて考え直すようになった気がします。
石倉
会社に求めるものが変わってきたということですか?
坪井
昔は、職場に対して多くのものを求めすぎていたように思います。お金を稼ぐのも、生きがいを見つけるのも、人との出会いや人間関係を構築するのも、すべてを職場に求めていたんですよね。でも今は、職場以外の場所にも分散させる方が、ずっと健全なんじゃないかなと思うようになりました。無理に切り離す必要もないですが、無理に1ヶ所にまとめようとする必要もないのかなと思いますね。
「自社にとってのベスト」を追求した結果、会社が成長
――「全員リモートワーク」を実施されているキャスター。何か、ルールを敷いているんですか?
石倉
よく聞かれるんですが、特別なルールはつくっていません。大事にしているのは、「嘘をつかない」「担当業務をまっとうする」といった、リモートワークの有無に関わらない基本的なことばかり(笑)。メンバーには、自分の役割をまっとうすることだけに集中してもらえればと思っています。
坪井
「持ち場を守る」って表現を社内では石倉さんからもよく聞きますね。他には、ルールではないですが、生産性を上げるためになるべくチャットを活用する文化はあります。必要以上にオンライン会議をせず、できるだけチャットで話し合って業務を進めるようにしています。また、セキュリティ面などはマニュアル化されており、高いレベルで統一できていると思います。
石倉
テキストコミュニケーションは、正しくやれば、オンライン会議や電話で話すよりも早く正確にものごとを伝えられます。ここ数年、多くの会社でビジネスチャットを使うようになり、利便性をしみじみ感じた人は多いでしょう。チャットのコツやドキュメントの書き方など、テキストコミュニケーションのスキルはもはや必須です。詳しくは、2022年11月に出版した『THE FORMAT』(サンマーク出版)に書きましたので、ぜひご覧ください(笑)。
――同僚にも取引先にもリアルで会うことなく、業績を伸ばしているキャスター。組織としてうまくいっている秘密はどこにあるのでしょうか。
石倉
世間の常識を疑って、「自社にとってのベスト」を追いかける会社だからだと思います。リモートワークだからといって仕事の生産性が下がることはまったくないし、むしろ場所の制約をなくせる分、多くの人が働けるようになり、それまで埋もれていた能力を存分に発揮できます。役員も含めて、「世間がこうしているから、うちも同じようにしよう」という発想はほとんどないと思います(笑)。理由がないことはしない。あくまでも合理的に考えています。
坪井
キャスターって、本当に世間に合わせるとか、トレンドに乗っかるみたいなことがないですよね。別の言い方をするなら、「嘘をつけない会社」というか。会社のスタンスがはっきりしていてブレないから、それに賛同する人が集まって、組織の規模も拡大しているのだと思います。私はこれまで複数社で広報の仕事をしてきましたが、キャスターは過去の経験や定説にあてはまらないものが多いです。固定観念を覆され続ける日々(笑)。
ミッション・ビジョンに100%共感してもらう必要はない
――会社としてのミッションやビジョンは、メンバーのみなさんに浸透していますか?
石倉
ビジョンはありますし、採用面接の際に必ず僕の口から伝えていますが、全員に100%共感してもらう必要はないと考えています。それは、「キャスターにいる理由は人それぞれだから」。「リモートワークを当たり前にする」というミッションに惹かれたという人もいるでしょうし、「業務が楽しいから」「フルリモートがいいから」「仲間が好きだから」など、なんでもアリだと思うんです。ミッションやビジョンは会社としての方向性や方針を定めるものであって、メンバーに強制するものではないと考えています。バリュー(行動規範)に至っては、たぶん社内の認知度5%未満ですが(笑)なんの問題もありません。
――キャスターのどこかしらに魅力を感じて、メンバーが集まってくるんですね。
石倉
キャスターはメンバーの女性比率が80%以上と高く、また本社が宮崎県にあることから、イメージだけで「女性活用に積極的」「地方創生に積極的」みたいな“弱者救済企業”的に見られることがたまにあります。が、もともと僕たちにそんな目的や戦略はありません。
坪井
結果論ですよね。結果的に救われている人もいるとは思いますが、目的にしているわけではない。「女性活用」も「地方創生」も世間では引きの強いワードですが、キャスターはそのキャッチーさに安易に乗っかろうとしません。メディア受けする発言をして、目立とうという考えがない(笑)。パラレルキャリアでいろいろな会社を見てきた立場からすると、そこがある意味で特殊であり、会社として魅力的です。
――独特の文化が築かれているキャスター。その内幕を教えていただきました。ありがとうございました!
石倉