本業以外の所得が20万円を超えている場合に必要となってくる確定申告。面倒に感じてしまうものの、きちんと行えば、払い過ぎていた所得税が戻ってくるのでお得になる一面も。そこで、税理士の山口翔さん監修のもと、確定申告書の入手方法から書き方、提出までの一連の流れをおさえましょう。(※2020年は、新型コロナウイルスの感染が広がっていることを受け、国税庁は、確定申告の期限4月16日まで延長すると発表。その後、さらに再延長し、4月17日以降も可能になりました。)
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確定申告はどう行う?
確定申告には、「開業届」と「青色申告承認申請書」を出して税務署の承認を得る「青色申告」と、承認不要な「白色申告」があります。いずれも確定申告書を提出して行います。
「手書きで作成」と「e-taxで作成・出力した提出」の場合は、確定申告書を税務署に持参するか、郵送するかで提出します。「e-taxで申告」を行うには、「マイナンバーカード(個人番号カード)」とマイナンバーに対応したICカードリーダーを用意するか、ICカードリーダーがない場合は税務署でIDとパスワードを発行してもらう必要があります。
確定申告書はどこで手に入れる?
手書きで行う場合、確定申告書は次の場所で入手できます。
確定申告書にはA様式とB様式の2種類があり、迷ったらB様式を選ぶといいでしょう。
A様式……給与所得者(会社員、アルバイト・パートの方など)や年金受給者向けのもの
B様式……個人事業主など、誰でも利用できる
今回は白色申告を想定し、かつ汎用性の高い確定申告書Bの書き方を見ていきます。
源泉徴収票があれば意外と簡単! 確定申告書Bの書き方
確定申告書のそれぞれの欄は、会社員であれば、いくつかの項目を源泉徴収票の内容をもとに記入できます。源泉徴収票から、確定申告書Bの作成と関係があるのは、次の項目です。
1. 支払金額
2. 給与所得控除後の金額
3. 所得控除の額の合計額
4. 源泉徴収税額
5. 社会保険料等の金額
6. 生命保険料の控除額
7. 生命保険料の金額
8. 介護医療保険料の金額
確定申告書Bは第一表と第二表で構成され、まずは第一表から見ていきましょう。
確定申告書第一表の書き方
「第一表」は、1. 「基本情報」、2. 「収入金額等」「所得金額」、3. 「所得から差し引かれる金額」、4. 「税金の計算」、5. 「その他」に分けて記入していきます。
1. 基本情報
所轄の税務署名、申告書の提出日、何年分の申告を行うか、また住所や氏名などの基本情報を記入。住所は、原則として申告する年の住所地(住民票に記載されている住所)を記入します。
2. 収入金額等、所得金額
申告する年の収入を記入します。
源泉徴収票の「支払金額」を(カ)の「給与」の部分に書きましょう。もし、別のアルバイトなどで給与所得がある場合は、合算した金額にします。
そのほか、個人事業で得た収入を該当する所得部分に記入します。たとえば、執筆業などで得た収入は、(ク)の「雑 その他」に書きます。
所得とは、収入から経費を差し引いたもの。そのため、「所得金額」には、上の「収入金額等」に記載した金額から必要経費を差し引いた額を記入します。
3. 所得から差し引かれる控除
源泉徴収票の「社会保険料等の金額」と「生命保険料の控除額」を、「社会保険料控除(10)」と「生命保険料控除(12)」に記入します。個人型確定拠出年金(iDeco)を行っている人は「社会保険料等の金額」が2段になっているので、下の段の金額を書きます。
また、「基礎控除(20)」は、誰でも38万円分の控除を受けられるので、忘れずに「38」と書きましょう。もし、ふるさと納税を行っている人は「寄付金控除(24)」に寄付金額から2000円を引いた額を記入します。
最後に、それぞれの合計金額を書くのも忘れずに。
4. 税金の計算
まずは「課税される所得金額(26)」に、3の「所得金額」の「合計(9)」から、4の「所得から差し引かれる金額」の「合計(25)」の金額を差し引いたものを記入します。
その後、「上の(26)に対する税額(27)」に、以下の「所得税の速算表」で計算した税額を入れます。
そのほか、住宅ローン控除などもこちらに記入していきます。控除金額や税額を計算したら、最後に「差引所得税額(38)」「再差引所得税額(基準所得税額)(40)」「復興特別所得税額(41)」「所得税及び復興特別所得税の額(42)」を計算します。
※第三表を提出する人(分離課税の所得を申告する人)は、第三表の「税額(84)」の金額を記載しますが、ここでは触れません。
5. その他
該当する項目があればこちらにも記入します。
「還付される税金(48)」がある場合は、「還付される税金の受取場所」に必要事項を記載するのを忘れずに!
確定申告書第二表の書き方
「第二表」は、1.所得の内訳、2. 雑所得などに関する事項、3. 所得から差し引かれる金額に関する事項を見ていきましょう。
1. 所得の内訳
「所得の種類」は、第一表「収入金額」に金額を記入した給与、雑などが該当します。給与所得の場合は、源泉徴収票の「支払者」「支払金額」「源泉徴収税額」を書きます。
原稿料などの雑所得は自分で「源泉徴収税額」を計算します。たとえば、3万円の原稿料の場合、「収入金額」に30,000、「源泉徴収税額」は10.21%をかけた3,063を書きます。
最後に、「源泉徴収税額の合計額(44)」を書きます。
2. 雑所得などに関する事項
著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料などが該当する雑所得、懸賞や福引の賞金品(業務に関して受けるもの以外)などが該当する一時所得がある場合に記入します。
3. 所得から差し引かれる金額に関する事項
源泉徴収票の「社会保険料等の金額」(iDecoを行っていて二段の場合は下の段)、「新生命保険料の金額」、「介護医療保険料の金額」を、それぞれ「社会保険料控除(10)」と「生命保険料控除(12)」に記入します。
確定申告書以外にも必要な提出書類は?
確定申告では、申告の種類や受ける控除によって、確定申告書以外にも必要な提出書類が異なります。白色申告では、本業以外の所得が雑所得ではなく事業所得などの場合は、「収支内訳書」も一緒に提出します。これは、その名の通り、収入と支出の内訳を記載した書類のこと。以下の条件にすべて当てはまる人が必要です。
1. 事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかがある人
2. 白色申告を行う人
3. 確定申告書の提出を行なう人
ほかにも、各種控除を受ける場合は、それを証明する書類も必要です。たとえば、ふるさと納税なら「寄付金受領証明書」を、医療費(支払額ー保険金)が10万円以上かかって医療費控除を行う場合は「医療費控除の明細書」を一緒に提出します。
なお、2020年の確定申告からは源泉徴収票の提出は不要になりました。ただし、源泉徴収票と領収書は7年間は保存しておきましょう。
難しく思える確定申告書の書き方も、源泉徴収票などをもとに一つひとつ記入すれば、実は意外と簡単に作成できるもの。確定申告時期は税務署が混み合うため、早めに準備して、終わらせましょう。
監修 税理士・山口翔さん●山口翔税理士事務所代表税理士。平成18年に一橋大学商学部経営学科卒業後、平成22年に税理士試験合格、翌年税理士登録、平成24年に開業。会計・税務の専門知識を通じてお客様の人生・経営をサポートする。