パラレルキャリアで会社員としての収入以外にも継続的な収入がある場合、開業届を出して青色申告で確定申告をしたほうが税金面におけるメリットが大きいこともあります。とはいえ、確定申告の時期になって青色申告をしたいと思っても、できるものではありません。そこで、次のタイミングで青色申告をするために準備しておくべきことを、税理士の山口翔さん監修のもと、まとめました。
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まずは自分の活動が“事業”といえるかを確認
青色申告を行えるのは、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」です。会社員でも、これらの所得があれば、青色申告ができます。一方、「給与所得」や「雑所得」では青色申告をできません。
パラレルキャリアでポイントとなってくるのが、本業以外の収入が「事業所得になりうるかどうか」ということ。フリマアプリなどでお小遣い程度の収入を得ている場合や、継続的に利益が出ていない(=事業として成り立っていない)場合などは、事業所得ではなく雑所得となるため、青色申告はできないのです。
なお、事業所得か雑所得となるかの判断基準には、明確に『売り上げがいくら』といったラインはありません。「事業規模はどれくらいか」「継続性はあるのかどうか」「生活の糧となっているか」など、個々の状況を考えてみましょう。事業所得なのに毎年赤字などの場合には税務署から雑所得ではないのか、と言われてしまうこともあります。
青色申告をするために必要な書類は?
青色申告を行うには、管轄の税務署に「青色申告承認申請書」とともに「開業届」を提出する必要があります。
開業届は、正式名称を「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」といい、開業する(個人事業主となる)際に、所轄の税務署に「私はこういう事業をしますよ」と伝える“お知らせ”のようなもの。提出の対象者は「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」で、事業を始めた日から1カ月以内に提出します。
青色申告承認申請書は、その名の通り、青色申告をするにあたって、税務署からの承認を得るために提出する書類です。次の期限内に提出する必要があります。
・開業日が1月1日~1月15日の場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで
・開業日が1月16日以後で、新たに事業を開始した場合は、その事業開始等の日から2カ月以内
例えば、2020年分の確定申告を青色申告で行いたい場合は、2020年3月16日まで(基本的には3月15日ですが、2020年は日曜日のため)、もしくは開業開始日から2カ月以内に、青色申告承認申請書を所管税務署に提出します。
青色申告が税金面でお得といわれる、特別控除とは
青色申告の利点の一つは、所得金額から最高65万円または10万円を控除する「青色申告特別控除」が受けられることです。
2019年分までは、以下3つの条件を満たすと、65万円の特別控除を受けられました。
(1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
青色申告でも、単式簿記(簡易簿記)による記帳を行っている場合は、特別控除は10万円までとなります。
ただし、2020年分の確定申告からは65万円控除のための要件が追加となり、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことが求められます。従来の65万円控除の要件を満たす場合は、55万円の控除となるので注意が必要です。
ほかにも、青色申告にすることで、事業で損失(赤字)が出た場合は、その金額を翌年以降、最長3年間繰り越せるなどのメリットもあります。
税理士に相談した方がいい?
青色申告の55万円もしくは65万円控除を受けるには、簿記の知識も必要になるので、ハードルを高く感じてしまいます。
税理士の山口さんによれば、「個人事業主の場合は、会計ソフトを使いながら、税務署等で行われる『確定申告無料相談会』などを利用することでも十分対応できると思いますよ。税理士に相談するのは、事業規模が大きくなり、費用対効果が見合うと感じれば検討してもいいでしょう」とのこと。
本業以外の仕事が事業として成り立ちそうであれば、ツールや相談機会を上手に使いこなし、青色申告を検討してみてはいかがでしょうか。
監修 税理士・山口翔さん●山口翔税理士事務所代表税理士。平成18年に一橋大学商学部経営学科卒業後、平成22年に税理士試験合格、翌年税理士登録、平成24年に開業。会計・税務の専門知識を通じてお客様の人生・経営をサポートする。