Paranaviトップ ノウハウ お金 10人に1人はマルチと思え? エンジニアは狙われやすい? 怪しい自己啓発系、ターゲットにされやすい人の特徴を解説

10人に1人はマルチと思え? エンジニアは狙われやすい? 怪しい自己啓発系、ターゲットにされやすい人の特徴を解説

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新生活が始まる4月、情報収集や人脈形成のために、勉強会や異業種交流会、社会人サークルなどに足を運ぶ人も多いはず。そこで知り合った人から、ある日突然、マルチに勧誘された、なんて経験がある人もいるかもしれません。マルチ商法と呼ばれるネットワークビジネスや、サイドビジネス商法、デート商法といった悪徳商法や詐欺に狙われない、騙されないようにするには、どういったことに気をつければいいのでしょうか? 自身のYouTubeチャンネルやSNSで悪徳商法への警告を発信しているエンジニアの勝又健太さんに詳しく聞きました。

「将来への不安」を持っている人が狙われやすい

――勝又さんは「雑食系エンジニア」として、登録者5万人のYouTubeチャンネルを発信しています。マルチ商法などの悪徳商法の情報は、主に視聴者から寄せられることが多いのでしょうか?

以前、僕のYouTubeチャンネルで、マルチ商法をやっている団体についてその実態を喋ったところ、その団体から僕個人への攻撃が始まったんです。ネットに誹謗中傷を色々と書かれまして、最初はスルーしていたのですが僕のコミュニティ内で業務妨害をしてくるところまでエスカレートしていきました。これはもう放置できないなということで、「とことんやってやろうじゃないか」と応戦することに。とりあえずブログで僕を誹謗中傷してきた人を特定して名誉毀損訴訟を起こしました。以後も発信を続けていたら、その団体を脱退した人たちが僕に協力してくれるようになりました。その団体の人が経営している小売店だとか、マルチ的な勧誘をやっているプログラミングスクールだとか、怪しいことをやっている組織があるとタレコミが来るようになったんです。

自分の周りで言うと、最初に勧誘されたのは高校生のときですね。2022年に消費者庁から6ヶ月の取引停止命令処分を受けたことでも話題になったアムウェイです(※)あとは、社会人になってからも趣味のダンス仲間とかクラブ仲間に何度か勧誘を受けましたね。特にダンサーって将来に不安を持っている世間知らずな若い人が多いので、ネットワークビジネスにハマってしまいやすいんです。勧誘された経験は多いので、自然と詳しくなりました。また、僕自身が渋谷に住んでいるので、必然的に渋谷のアムウェイ本社ビルが近かったというのもあります。

(※)アムウェイの取引停止期間は2023年4月13日で終了

――将来への不安を持っている人はターゲットにされやすいんでしょうか?

将来に不安を持っている人、情報をあまり持っていない人はターゲットにされやすいです。若いダンサーとかは一つの例ですね。あとは「オレオレ詐欺」が、同じ高齢者でも頑固なお爺さんよりも優しいお婆さんをターゲットにするように、人が良くて猜疑心のあまりない人は狙われやすいですね。すごく疑り深いような、いわゆる「嫌なやつ」はあまり勧誘されないです。実際、僕が勧誘されたダンサーの子達もすごく朗らかでいい子ばかりでした。押しに弱くて世間知らずといった感じですね。上京してきたばかりで友達の少ない人とか、上下関係を受け入れやすい体育会系の人とかも当てはまります。

旅行クラブやエンジニア求人など種類も細分化している

――マルチ商法では実際にはどういうことが行われているんでしょうか?

マルチ商法は、消費者が会員になって、商品を販売すると同時に、新規会員を勧誘し、その会員が増えるたびに紹介料が得られるという仕組みです。会員を増やすことで、ランクがアップし、高額な収入が得られるということになっています。ですが、たいてい、収入よりもノルマや月会費などのほうが上回ってしまい、借金を抱えてしまう人も非常に多いです。

シャンプー

例えば、ある団体だといわゆる「師匠」と呼ばれる人達の経営している小売店から毎月15万円分のシャンプーを自己投資として購入する必要があります。自分が勧誘して、下に一定数以上の「弟子」をつけることができれば、自分もショップを出すこと=起業ができるという仕組みです。実際には、マインドコントロールのためにタコ部屋のようなシェアハウスに引っ越しさせて、土日やときには平日もセミナーやイベントに出席させ、最終的には「師匠」の家の近くに住むことまで強要されるそうです。

――「リスキリング」という言葉も流行っていますし、将来への不安をきっかけにプログラミングスクールなどの自己研鑽の場に行く人も多いと思います。そこで、巻き込まれないようにするにはどういうことに気をつければいいのでしょうか?

手に職を持っていなくて不安だから、エンジニアになりたいという人は狙われやすいかもしれませんね。そもそもプログラミングにしてもダイエットと同じで、自己研鑽というのは基本的には一人でできるものなんです。それを、うちに入らないとダメだと脅してくるようなところは怪しんだほうがいいですね。不安を過度に煽ってくるようなコミュニティや個人はまず疑いましょう。

エンジニアというのは、時間にも場所にも縛られない自由な働き方ですし、それに憧れる人というのは「自由に生きる」という自己啓発系のワードに騙されやすい傾向があるのかもしれません。

プログラミング

一般的には、知り合って間もない人に、将来の不安や大げさな夢物語みたいな話はしないですよね。関係性があまりできていないのに、そういう話をするためにお茶に誘ってきたりする人たちは非常に怪しいと考えた方がいいです。さらに、陰謀論でも同じなんですが、自分達だけが真実を知っているとか、勝ち組になれる、というようなうまい話はまずあり得ないので、信じないようにしましょう。

――騙されないように知っていたほうがいい法律の知識などはありますか?

マルチ商法やネットワークビジネスは、法律上は「連鎖販売取引」と言われるもので、勧誘時に、勧誘を目的にしていますよ、ということを明示しないといけないというルールがあるものの、実態はそのルールも守られていないことが多いので、あまり縛りはない状態です。商材を伏せて「起業サークル」として、勧誘を行なっているところもあります。僕としては、連鎖販売取引自体をもう法律で禁止してしまえばいいのにと思うのですが…。

――よく知られている化粧品やサプリメントのネットワークビジネスに限らず、暗号通貨などの金融系や格安SIMなどニュースで報じられる悪徳商法も種類が増えてきたように思いますが、最近どんなものがありますか?

最近だとモノよりもサービスが商材になっているところが増えていますね。旅行とかもあります。会員制の旅行クラブで、毎月会費が発生するという。年に10回以上海外に行くような人であれば元が取れるので、完全に悪質とも言い切れないのがミソですね。

あとはエンジニア狙いのビジネスでいうと、未経験者募集という求人を掲げ、研修もあることを謳っていながら実際に行かせるところは家電量販店の販売員やコールセンターというITとはかけ離れた仕事をさせているというものもあります。エンジニアになれるというのを餌にして、貴重な時間を搾取しているという点で悪質ですね。

普段から話題に出して「いじる」ことで予防策に

――最近はマッチングアプリでのデート商法で勧誘されたという話もよく聞きます。

マッチングアプリはめちゃくちゃ多いみたいですね。勧誘のために高級車やタワマンなどわかりやすい成功のシンボルを出すことが多いので、プロフィールやSNSで過度にキラキラアピールをしている人には気をつけたほうがいいかと思います。

マッチングアプリ

タワマンパーティもバーベキューも恋愛・交流目的であればいいですけど、そこで「会わせたい人がいる」みたいな話が出てきたら気を付けた方がいいですね。ただ、全部怪しいから交流会やパーティにはもう行かないみたいにあまりにも身構えてしまうと、それはそれでちゃんとした人と出会う機会も喪失してしまうのでもったいないと思います。

なので、そういう社交の場には、怪しい商売の勧誘をしてくる人が10人に1人くらいはいるものだと思って参加するのがいいんじゃないでしょうか。勧誘されたら断ればいいわけですから。

――分では対策できると思うのですが、もし身近な人がハマってしまった場合はどうしたらいいんでしょうか?

これは難しいですよね。マルチ商法だけじゃなくてカルトでもそうなんですが、結局、周りがどれだけ説得しても本人が自分で気づかない限り、洗脳は解けないので。マインドコントロールの本とかにも書いてありますが、周囲や家族の強い愛情と根気がないと連れ戻せないみたいです。予防を頑張るしかないですね。

おすすめは、家族の会話の中で普段からマルチについて話題に出していじることですね。マルチが使っている定型パターンを茶化すことで、事前情報も得られ、引っかかりにくくなると思います。

あとはとにかく、自由に生きていけるようになりたいなら、需要の高い仕事に就いて効率よく稼ぐのがいちばんだということを肝に銘じておくことですね。

勝又さん&編集部おすすめ参考本

勝又さんが「普段からマルチについていじるのがおすすめ」と話すように、話題に出すためにも、まずは知っておくことが何よりの予防策。事前の情報収集として、ピッタリな参考本をピックアップしてみました。

『テロール教授の怪しい授業』(カロル・ゼン、石田点/講談社)

大学進学で地方から上京してきたばかりの主人公・佐藤は怪しい勧誘に引っかかりそうになったところを大学教授のティム・ローレンツに助けられる。「流されやすい自分を変えたい」と思う主人公は、ローレンツ・ゼミを受講するが、それは「テロとカルト」をテーマにしたもので、「脱落=テロリスト」と認定される恐ろしいゼミだった……という内容。知らないうちに身についてしまっているバイアスに気付かされ、論理的に、公正に考えることの難しさを実感することができます。

『闇金ウシジマくん フリーエージェントくん編』(真鍋昌平/小学館)

言わずと知れた人気コミックのシリーズ。「フリーエージェントくん編」では、肉体労働の現場に派遣されている村上が、情報商材を商材にした悪徳ビジネスにのめり込んでいく話。経済的な不安から、判断能力が鈍くなり、どんどん沼にハマってしまう様子がリアルで怖い。

『ニューカルマ』(新庄 耕/集英社)

作家の新庄耕氏が、自身の経験をもとに「ネットワークビジネス」について書いた小説。大手電機メーカーの子会社に勤める主人公・ユウキが、「すごい人に合わせるから」と大学時代の友人に連れられて行ったのはネットワークビジネスの集会。最初は胡散臭いと思っていたものの、会社の業績不安もあり、気がつくと契約にサインしてしまう。成功していく優秀な幼馴染との対比も、心臓を抉られるような気持ちになります。マルチにハマる心理の一つに、「自分は人とは違う」という承認欲求があるのかもしれません。

『ルポ 脱法マルチ』(小鍜冶孝志/ちくま新書)

2020年のコロナ禍、駅前で「いい居酒屋知らない?」と声を掛ける男性2人組の誘いに応じてついていった毎日新聞記者のルポ。規制を逃れてグレーな活動をする団体の実態が明らかになっています。また、この潜入取材パートのほかに、後半は、元・構成員へのインタビューなど関係者への取材で構成。マインドコントロールの巧妙な手口や狙われやすい人物像について詳しく解説しており、その恐ろしさが改めてわかる一冊です。

『金持ち父さん、貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ/筑摩書房)

1997年にアメリカで発行、その後世界中で翻訳され、累計3000万部も売れている大ベストセラー。わかりやすい定番のビジネス書です。この本の内容にある「自分の時間を切り売りする労働者ではなくて、権利収入で自由な時間とお金を手に入れるビジネスオーナーになろう」という主張がネットワークビジネスと相性が良いため、勧誘でもよく使われておりマルチ商法ではバイブル的な存在です。

勝又健太(かつまた けんた)● 雑食系エンジニア。早稲田大学政治経済学部出身。本業での専門はクラウドアーキテクチャ設計、DevOps/MLOpsなど。AWSとGCPの両主要クラウドプラットフォームの様々なマネージドサービスに精通しており、EC/メディア/ソーシャルゲーム/アドテク/AI/ブロックチェーンなど、広範囲な分野での豊富な開発経験と幅広いモダンなスキルセットを保持。Sler/SES/Web系メガベンチャー等、多種多様な企業での勤務経験や、派遣社員/契約社員/正社員/フリーランス等の様々な就業形態における実体験を元に、Web系エンジニアを目指すプログラミング初学者や駆け出しエンジニア向けにキャリアハック情報やパラレルキャリア情報を日々発信している。登録者5万名超えのYouTubeチャンネルを運営するYouTuberでもあり、参加者600名超えのオンラインコミュニティ「雑食系エンジニアサロン」の主宰者でもある。

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岡部 のぞみ
Writer 岡部 のぞみ

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