Paranaviトップ ノウハウ 制度/法律 男性育休 「積水ハウスの男性育休はここがすごい」経験者に聞く、育休のリアル

「積水ハウスの男性育休はここがすごい」経験者に聞く、育休のリアル

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2018年9月から他社に先駆けて男性育休取得を推進してきた積水ハウス。2019年度以降、 3歳未満の子を持つ従業員に関して取得率100%を達成し、日本の男性育休取得をけん引する存在です。今回は、実際に第一子・第二子と2度にわたり男性育休を取得した椿啓一さんにインタビュー。取得者のリアルを根掘り葉掘り、伺いました。

取得時期や期間について産前から夫婦で相談した、第二子の育休

――椿さんが男性育休を取得された経緯を教えてください。

4、5年前に第1子の育休を1カ月、今年に入って第2子の育休を1週間ずつ合計4回に分けて取りました。小分けで取得したのは、妻から希望があったからです。「育児にフルコミットしてほしい」と思う特定のタイミングを、妻から指定してもらいました。

前回の育休を経てだいたい要領を掴めていたので、出産前から妻と取得時期や期間について話し合っていました。上の子の幼稚園の行事予定に合わせて育休を取ったので、行事にしっかり参加できたのはとてもいい思い出になりました。

――ご夫婦で話し合い、育児の負担を検討して取得されたんですね。

育児休業期間中に妻にリラックスしてもらう目的もありますが、期間が終わっても育児は継続していきます。事前に作成していた取得計画書を元に、2人の子をどのように育てていくか、家事分担を継続して実施していけるかなど、合意するための貴重な時間として利用しました。

育児中だからといって家に籠もる生活が続くと、意思疎通できる大人とのコミュニケーションが激減し、話す相手がいないことによる育児うつになってしまいそうで……。家族というチームメンバーとして、なるべく妻にリラックスできる時間を提供したいと思ったので、育休を取れて本当によかったです。

――第1子のときを振り返ると、どうでしたか?

第1子のときは正直、毎日が初体験の連続で、不安でいっぱいでした。産院や産後ケアの場で、1つひとつの作業のやり方や頻度を教わりつつ、細かい部分は手探りで進めていった感じです。オムツを持ち歩くことすら最初はわかりませんでしたから……。

新生児の子育て中は、いつ何が起きるか想像もつかず、かといって注意するべきポイントもわからず、ずっと気を張っていないといけない環境。覚悟していた以上に、莫大なパワーを使うものだと実感しました。こういう感覚は育児を体験して初めて理解できるのだと思いますし、作業の段取りを考えることもできたので、とても貴重な経験になった育休でした。

仕事を「自分がいなくても回る状態」にすると、組織が強くなる

積水ハウスで情報システム部門のグループリーダーを務める、椿啓一さん

積水ハウスで情報システム部門のグループリーダーを務める、椿啓一さん。リーダーとして、6人のメンバーと共に、総務会計及び人事システムを担当しています。男性育児休業の取得計画書の登録等のシステム作りも当グループが関わっています。

――積水ハウスは、子育てを応援する社会をリードする「キッズ・ファースト企業」として、男性育休を強力に推進されています。社内はどんな雰囲気ですか?

男性育休への理解は、年を追うごとにどんどん深まっていると感じます。僕が第1子の育休を取った4~5年前は男性育休が推進され始めたばかりだったので、制度について今ほど認知が進んでおらず、取得方法や期間、その間の業務の割り振りなどについて周りに説明したのが懐かしいです。当社には「『わが家』を世界一 幸せな場所にする」というビジョンがあり、それを実現する1つの切り口が育休だと感じています。

また当社は、2019年から「男性育休白書」(旧:イクメン白書)を発表していること、年に一度「男性育休フォーラム」が開かれ、育休経験者が「男性育休を取ってよかったこと」「取得前に気をつけたこと」などを共有していることもあって、職場で育児の話題を出しやすい雰囲気があります。

僕も最近は周りから、保育園のことや育児グッズについて相談されるようになりました(笑)。こうした空気が「いい職場」を作る1つの要素だと思いますし、社員同士でコミュニケーションを取るきっかけにもなっています。

――育休取得にあたり、業務の引き継ぎや部署内共有などはどのように進めましたか?

業務の引き継ぎは、日頃から自分が不在の時に補完してくれるメンバーを育てることを意識しているので、不安や懸念はありませんでした。それに、例えば、1週間ずつ4回に分けるという休み方だと、引き継ぎもさほど大がかりになりません。こうした点は、分割取得ならではの良さだと思います。

普段から意識的に、僕が体調を崩したり急な予定が入ったりしたときに備えて、仕事を適宜整理しています。もちろん育児以外の理由でも、誰かが一定期間不在になるリスクは常にありますから、「誰かがいなくても回る状態」に整えておくのが大事。組織で業務をシェアしつつ、成果を上げる方法を探るという文化が、最近ますます強くなってきていると感じます。

――育休を取得していないメンバーにも、そうした意識が根付いているんですね。

はい。育休未経験のメンバーも、仲間が育休を取る前にチームでどんな準備をするべきか、だいたい把握しています。僕も、取得予定をチームメンバーに事前に伝えていたので、みんな「この週は椿さんがいないから、前倒しで決裁を取っておこう」というように、できるだけ前倒しで仕事をしてくれました。

――産後パパ育休の間、業務をするという方もいるようです。椿さんはどうでしたか?

自分で自分に「育休中は仕事しない」とルールを課しました。災害などの外的要因での対応が発生するリスクを考慮して業務用PCは持ち帰っていましたが、メールは見ませんでしたし、電話もかかってきませんでした。前もって「育休中は、メールは見ません」と宣言しておくことで、同僚や上司、部下が迷うリスクを減らそうと考えたのもあります。

夫婦が「なんとなく察し合う」コミュニケーションで共に育児をするのは難しい

積水ハウスで情報システム部門のグループリーダーを務める、椿啓一さん

――ご夫婦での育児の分担は、どうやって相談しましたか?

「家族ミーティングシート」をベースに考えました。ミーティングシートはタスクが網羅されていて、とても使いやすいツールだと評判です。タスクを可視化することで「これをやろう」と把握することができ、それをどんどんこなすことで生活の一部として取り込むことができました。

普段から家事をうまく分担している夫婦も、育休前に改めてチェックすると、何かしら発見があると思います。「お互いになんとなく察し合う」コミュニケーションで育児をするのは、相当なストレスがかかるはず。タスクがあいまいなまま育休に突入すると、それぞれが担当している負荷が見えず、感謝の気持ちも薄まってしまう気がします。

――育休の取得を通して、ご夫婦の関係性が変化した点はありましたか?

とくにありませんでした。土日は僕も育児をメインで担当してきたからか、いつも通りの日常とそれほど変わりませんでした。育児を「手伝う」という感覚はなく、夫婦で一緒にやるという意識があるからだと思います。

――ここ数年、男性育休が社会的に大きく注目されている一方、数日の取得にとどまる“取るだけ育休”も多い現状があります。椿さんはどうお考えでしょうか?

最適な育休の期間は、人によって異なると思います。日数よりも、育児に向けて何を準備したか、夫婦で何をどう話し合ったかが重要。個人的には、2~3日の超短期では育児関連のタスクを習慣づけるには足りず、「手伝った、やってあげた」という感覚になってしまう可能性があるように思います。

また、本来「育児休業」の目的に沿った過ごし方をするべきだと思います。夫婦で育児を分担するのはもちろん、子どもと向き合う時間をたっぷり取れたら成功ですね。子どもが赤ちゃんでいるのはごく短い期間ですから。

男性育休は、ゆっくりですが確実に日本社会に浸透しつつあります。特に20代の若い夫婦は、育休取得に対して経済面、キャリア面で不安を抱きがちですが、僕のような経験者の声を発信して、不安を和らげられたらいいなと思いますね。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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