最近たびたび、テレビやネットで「依存症」についてのニュースを見ることがあると思います。とくにギャンブル依存や薬物依存については、多くの方が耳にしたことがあるでしょう。「依存症なんて、私は関係ないな」と思っていませんか?しかし、実は依存症はとても幅広く、誰にでも危険性があるんです。
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依存症は病気。こころが弱いから起きているわけではない
そもそも、依存症とはどういったものでしょうか? 依存とは、「ギャンブル・薬物などある特定のもので興奮し、やめたくてもやめられず、そのことで日常生活に支障をきたしている状態」のことを指します。依存する対象によって基準がわかれていますが、必ず共通するのは自分の意志でコントロールできない水準に達した状態であること、つまり「やめたくてもやめられない」ということです。
依存には、アルコールや薬物、たばこなどの「物質系」依存と、ギャンブルや買い物、ゲームやインターネットといった行動や習慣への「非物質系」依存があります。特定の物質や行動を続けることにより脳に変化が起き、症状が引き起こされている“病気”で、本人のこころの弱さのために起きている現象ではありません。
日本では、アルコール依存症が約10万人、薬物依存症が約1万人、そして昨今世間を賑わせているギャンブル等依存症は約3,000人が病院で治療を受けているといわれます。しかし、この人数が正確な患者数ではありません。
依存症は本人も依存症と気づいていない、もしくは本人が薄々気がついているものの、周囲に知られて止められてしまうことを恐れて周囲と距離を置いたり、病院にかかっていないケースも多いのです。ですので、現実的には“隠れ依存症”の方も多く潜んでいると考えられています。
典型的な依存症の症状5つ
依存症には、「強迫性(やらずにいられない)」「衝動性(後先考えることなく衝動的に行動してしまう)」「反復性(繰り返し繰り返しそれを求める)」「執着性(とにかくそれをすることに必要以上にとらわれる)」がみられます。
典型的な依存症の症状には、この5つが挙げられます。
- やめたい、やめなきゃと思ってもやめられない(自分でコントロールできない)
- 常に依存している物について考えてしまう
- とにかくそれがしたくてたまらない
- それをするために周りにウソをつく
- 家族を巻き込んでしまう
といったものがあげられます。
変化のステージは5つある
治療に入る前の段階では、ほとんどの方が「自分は病気ではない」と主張します。そもそも、自ら病院の門を叩く人は珍しく、多くはご家族などに連れられて、いやいやながら受診します。それでも、自身を見つめ直す機会や周囲の人とのコミュニケーションを持ち、治療をする中で、少しずつその人自身の考え方が変化していきます。
その変化は「変化のステージモデル」と言われ、5つにわかれています。具体的には、こちらの5段階です。
無関心期
まだ本人は問題行動に気づいていないので、行動を変えることを嫌がり、依存対象からはなれようとしません。そもそも問題であるという意識が薄い状態で、治療なんて必要ないと思っている方も多くいます。
関心期
自分が問題を抱えているという事実がわかり、その解決について関心を持ち始めます。自分自身を見返し、問題と向き合おうとし始めます。
準備期
依存について自分なりにいろいろ調べたり可能な解決方法を考えたりと、改善に向けた準備を始めます。ただ、なかなか行動には移せません。問題意識が出てきた結果、それについて触れると不機嫌になるケースもあります。
実行期
外面的に最も目立った変化を見せる時期です。準備してきた計画を実行に移します。たとえばクリニックに行ってみたり、依存物質を捨てたり距離を置いたりと、具体的な行動に移します。
維持期
実は、この「維持すること」が何よりも大変です。1日ずつ地道に積み重ねることが大切です。自助グループなどを使い、同じ悩みを持っている物同士で助け合うのも有効な手段です。
健康にも悪影響を及ぼす「インターネット依存」
“インターネット依存”ときいて、ドキッとした人もいるのではないでしょうか。「私もスマホを手放せないし、もしかしてネット依存かも?」と感じた方は決して少なくないはずです。
ネット依存とは、仕事や学業など生活の基盤があるにもかかわらずインターネットを優先してしまい、使う時間や方法を自分でコントロールできない状態のことを指します。特に中高生に多くひそんでいると言われています。
1990年代からインターネット使用の危険性を示唆していた専門家もいますが、今のところネット依存は、精神医学の疾患として定義されていません。しかし、ネットの中でも特にゲームに依存する方が多いことから、ついに「ゲーム依存」がアメリカの診断基準一覧に提示されるようになりました。そのくらい世界的な問題で、かつ健康面にも被害を及ぼす病態なのです。
ネット依存の特徴としては、この8つが挙げられます。
- 使用時間がかなり長く、とちゅうでやめられない
- 次の日があったとしても、夜中まで続ける
- ほかのことに興味を示さない
- 絶えずネットのことばかり考える
- ネットが使えない状況では不安になり、いてもたってもいられない
- 注意すると激しく怒る
- 使用時間や内容などについてうそをつく
- ネットにより成績や仕事の業績がさがったり、日常生活に影響が出る
これらがある場合、ネット依存の可能性が示唆されます。
自分の心身にも、人間関係にも悪影響が
ネット依存になると、心身の健康、家族や社会といった人間関係に問題が起こります。体の問題では、食生活の偏りや睡眠不足、昼夜逆転などの睡眠障害、運動不足などが生じます。心の問題では、ネット環境がない場合のイライラや、ネット以外のことについての無気力などがあります。
さらに、うつ状態に陥ることもあります。家族的、社会的には、ネットを強制的にやめさせたり注意をしたりすると、暴言、暴力を振るうなど人間関係のトラブルが生じます。また、ネットを優先してしまった結果遅刻が増えたり、仕事への集中力が低下したりといった症状が出て、休職まで進んでしまう人もいます。
私、ネット依存かな?と思ったら
依存症は、まずは自分で問題意識を持ち、脱却しようと思う意志が大切です。意志だけでは難しいのが依存症ですが、そもそもどんな病気でも「治したい!」と思わない限り治療は進みません。
ネット依存は、依存対象を生活から完全に排除することが不可能です。むしろネットは、日常のごく身近なところにつねにある物です。なので、「課金をしない」「ゲームや買い物はしない」「利用時間を減らす」といった明確なゴールを定めて治療を行っていきます。
またネット依存にならないように予防することが大切です。使用時間を決めたり、使用しない場所と時間を確保したり工夫しましょう。また周囲を巻き込んで、家族やカウンセラー、医師、友達などとインターネットの利用に関するルールを共有するのも有効です。一人でいるとネットを使いがちなので、家族や友人との対面での時間を増やすのも効果があります。
依存症は意外と近くにあるもの。少しでも不安を覚えたら、クリニックに相談してみるのもいいでしょう。依存症で自分の生活リズムを崩してしまうなんてもったいないです。まずはしっかり自分と向き合って、心身共に健康な生活を送りましょう。