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「ルッキズム」に苦しめられていませんか?摂食障害、醜形恐怖を防ぐ方法

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ルッキズムとは、外見を意味する“Looks”と、主義を意味する“ism”を組み合わせた造語。外見だけで他人を判断・評価したり、容姿を理由に差別をしたりすることを意味していて、日本語では「外見至上主義」と訳されます。海外を中心に問題視されていましたが、最近は日本でもよく耳にするようになり、2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされました。「ルッキズムは良くない!」という声が上がりつつも、SNSの存在もあって、なかなか消えない概念となりつつあります。

1970年代からスタート!意外と長いルッキズムの歴史

ルッキズムの歴史は実は結構長いのです。始まりは1970年代のアメリカで、肥満を理由とした差別に抗議する運動「ファット・アクセプタンス運動」のなかで、ルッキズムという表現が使われたことが始まりとされています。

しかし、それ以前から「外見で人を判断する」という行為は社会にはびこっていました。年齢や性別、体格やいわゆる見た目の美しさにとどまらず、出身地・人種・宗教等の外側だけで決めつけ、社会的あるいは人間的な価値を判断する行動は、昔から続いています。

過去には、奴隷制度や職業での階層制度などもありました。ルッキズムに関連する問題は、歴史とつねに結びついていると言っても過言ではありません。

現代での影響も深刻です。複数の調査で、外見が魅力的だとされる人々はそうでない人に比べ、就職の面接で高評価を受けやすく、給与も高い傾向にあることが明らかになっています。外見が魅力的でないとされる人々は、魅力的な人々よりも、生涯で数百万円を逃しているというデータもあります。

アイドルの体重がたびたび話題に

ルッキズムが起きる理由として第一に挙げられるのは、メディアの影響です。

痩せている女優やモデル“だけ”が美しく価値のあるものとして取り上げられるケースはいまだに多くあります。体重を公表するアイドルを見て「こんなに細いのが綺麗なんだ」と思ったことはありませんか? こうして、視聴者には「痩せ=綺麗」という思考が根付いていきます。

また、SNSの普及により、一般人でもSNSで気軽に情報発信できる時代になりました。もちろん、SNSによって疎遠になっていた友人と気軽につながれたり、近況報告できるという良い面もあります。一方で、いかにキラキラした生活を送っているか、見た目が魅力的かといったことを重視するようになり、行き過ぎるとマウントを取り合うような環境ができてしまいました。

加えてSNSでは、「いいね」の数やフォロワー数によって、自分に対して興味を持ってくれる人数が可視化されます。外見の良いユーザーに対する賞賛の声を目にする機会も多くなります。

こうしたことから、目に見える明らかな情報量が昔よりも増え、さらにそれが生活の中に深く入り込んでくるようになりました。それに伴い、自分自身と、一般的に「魅力的」だとされる人々のイメージ像を比較しやすい状況になっています。

社会問題として蔓延するルッキズム

他者の外見に対して、安易に意見したり要望を述べたりする行動は、ルッキズムに該当します。相手が知り合いや家族・友人など身近な人であっても、「痩せたほうがいいよ」「目は二重のほうがいいよ」などと口出しする人はまだいます。

ルッキズムは、単に「外見で人を判断するのはよくないよね」という話だけで終わりません。ルッキズムに苦しめられ、心身の健康に影響を及ぼす人もたくさんいます。その具体例を2つご紹介します。

摂食障害

ボディイメージの認知の歪みから「痩せたい」という願望が強くなり、食事を大幅に制限する、食後に嘔吐・下痢を誘発する行為を止められなくなるなどの症状があります。とくに若い女性に多く見られ、10代でもかかることが多くある病気です。

深刻になると、人前で食べることができなくなったり、頭の中がつねに食べ物のことでいっぱいになります。周りとのコミュニケーションに問題が生じ、精神的な状態にも変化が出て、人によっては抑うつ状態にもなります。また、女性の場合は生理が止まったり、肌や髪がガサガサになったりと、肉体にも影響をもたらします。

醜形恐怖

自身の顔や体型に重大な欠点があると思い込み、毎日何時間も考えたり、何度も鏡を確認したりと、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。

患者のほとんどは女性といわれていますが、男性でもルッキズムによって「筋力がないから筋力注射をしたい」「髪が薄い部分を隠したい」と、思い込みによる過剰な行動をとってしまうケースが見られます。例えば、醜形恐怖のせいで整形手術を何回も繰り返している人をお見受けします。

ルッキズムを見直そうと、社会も変わり始めている

今、ルッキズムがはびこる風潮を見直そうとする動きが活発化しています。代表的な例を2つご紹介します。

ミスコンテストの廃止

民間団体や大学などで実施されていた、女性たちが容姿の美しさを競う「ミスコンテスト」を廃止する動きが相次いで見られています。

ミスコンテスト自体は続けるものの、水着での審査を取りやめるケースや、性別を不問にするなどの配慮をするケースもあります。

プラスサイズモデルの活躍

モデル業界で、プラスサイズモデルが活躍していることをご存じでしょうか。決して「痩せ=美」ではなく、自分に合った体型こそ素敵です。プラスサイズモデルは、ポジティブな笑顔で雑誌やSNS上を飾り、いろんな美しさがあることを証明してくれています。

ありのままの姿と笑顔が何よりもその人自身の魅力であることは、誰もが頭に入れておきたいことですね。

ルッキズムを抜け出す第一歩。自分自身の魅力を自覚しよう

ルッキズムを解消するために、私たちには何ができるでしょうか。

まずは、ありのままの自分を受け入れ、「自分という存在」に魅力を感じること。つまり、今の自分の良さをしっかり自覚すること。そして他者に対しても、周りとの比較をするのではなく、その人の見えない魅力を探してみてください。

そして、SNSとの付き合い方を考えることも非常に重要です。キラキラした投稿はもちろん魅力的ですが、そもそもが「魅力的な自分」を切り抜いた場所であることを認識しておくべきです。そうはいっても、人間ですからうらやましいと感じてしまうこともあるでしょう。自分が疲れているときは、SNSから少し距離を置くことも必要です。

また、自分にもルッキズムがあるかもしれないと一歩引いて、客観視する考え方も重要です。美の基準は時代や国によって違いますし、真の美しさの基準なんて本当は存在しません。

2015年、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標:Sustinable Development Goals)では、17つの目標が設定されました。中でも特にルッキズムとのかかわりが深い項目として、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」があげられます。国籍や人種・性別にかかわらず、誰もが等しく生きられる社会システムを整えるように呼び掛けています。

見た目の美ももちろん一つの尺度ですが、それに引っ張られずに、自分の良いところに気が付くこと、人の見えない魅力に目を向けられることで肉体的にも精神的にもヘルシーな日々を送りましょう!

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木村好珠
Writer 木村好珠

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