時短でのヘアケアが叶う商品として大ヒット中の「cocone(ココネ)クレイクリームシャンプー」。その商品開発に関わったのが、「cocone」ブランドを展開する株式会社はぐくみプラスで執行役員を務める松浦理奈さんです。大企業や農業での体験や人との出会いを経て、松浦さんが働く上で大事にしていること、そしてこれからのビジョンについてお話を聞きました。
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時短×高機能のクリームシャンプーが大ヒット
――2021年に発売した「coconeクレイクリームシャンプー」は、どのように誕生したのでしょうか。
「cocone」のスキンケアシリーズ自体はすでにあり、市場リサーチをする中で、会社として次はヘアケアに挑戦しようと検討していました。たまたま、子育てママたちにヒアリングする機会があり、そこで聞いたのが、「お風呂は戦場です」というパワーワード。子どもと一緒にお風呂に入っていると自分の髪をちゃんと洗う余裕がないことを知りました。そこから時短のヘアケア商品のアイデアが生まれました。
クレイクリームシャンプーは数々のベスコスを受賞。 出典:はぐくみ公式サイト
従来のオールインワンシャンプーといえば、髪がぱさぱさになるイメージで、実用的すぎてテンションも上がらない。「cocone」では、髪や頭皮に優しくて、コンディショナーなしでも髪がつやつやになって、子どもと一緒でもさっと洗えて……そんな課題解決にいちばんフィットする商品としてクリームタイプに着目しました。泡立たなくても「洗った感」を感じてもらえるにはどうすればいいかなど、何十回も試作を重ね、開発には1年ほどかかりました。その頃は1日に何度もシャンプーをしていましたね(笑)。
発売後はインフルエンサーマーケティングを軸に、コスパ、タイパといった時代のキーワードもうまくかみ合ったことで注目されるようになりました。発売から4年になりますが、シリーズ累計販売個数は1000万個にのぼります。ロフトの年間ベストコスメも受賞するなど、着実に世の中に浸透してきたと感じています。
仕事の価値観を変えた、離島での農業
――現在の会社に入社されるまでの、松浦さんのキャリアについてお聞かせください。
実は、私の最初のキャリアはリクルートで、新卒で入社し、3年ほど企画や営業の仕事をしていました。まさに結果にコミットするという環境で、同僚も仕事への意識が高い人ばかり。大好きな会社でした。一方で、達成しても達成しても上がり続ける目標。大企業のため、いつまで経っても自分は歯車の1つ。いつしか虚無感や疑問を感じるようになりました。
――その後、大企業を離れて、離島で農業をするようになったと伺いました。大きな決断ですね。
今までとは全然違う環境に飛び込んで、色々な価値観の人に会ってみようと思ったんです。じゃないとつまらない人間になってしまいそうだったから。学生時代の縁から、鹿児島県の離島で農業に携わることになりました。そこにいたのは1年弱ほどでしたが、島の人たちと一緒にじゃがいもを育てて、仕事の後はみんなで飲んで喋って、といった日々を過ごすうちに、人生の価値観ががらりと変わったんです。
これまで、良い大学に入って大企業に就職して、バリバリ働いてお金を稼ぐ。大変だけどそれが絶対的な幸せだと思っていたし、そういう選択肢をずっと選んできました。一方、島で出会った人たちはそういう人生とはすごく対照的で、でも、仕事をそんなに頑張らなくたって幸せになれている。それを見たら、すごく心が楽になったんです。
もう1つ、離島で「キャリアブレイク」の時間を過ごす中で、自分の、仕事に対するモチベーションを見つめ直すこともできました。リクルート時代に「自分は組織の歯車なんじゃないか」と思い悩んでいたのは、「自分の力で物事を動かしながら働きたい」という気持ちが強いからこそだと気づいたんです。
人と会うことで自分のスキルの枠を広げる
——そのときの気づきが、ベンチャーであるはぐくみプラスへの入社につながったのでしょうか。
そうですね。エージェントからの紹介で今の会社を知ったのですが、代表(代表取締役の山村昌平氏)と15分ほど面談した際に、「この会社なら何でもできそうだ」と感じたのが大きかったです。当時はまだ立ち上げて4期目くらいのベンチャーだったので社員も常に少なく、マーケティングや商品開発を担当する部署に配属されました。
クリームシャンプーの開発中には、ちょうど社員の産休や退職が重なり、部署が私1人だけという時期もありました。商品開発だけでなく、発注や在庫管理、工場の交渉まで何でも自分でやらなければいけなかった。毎日夜遅くまで残業して、何人分かの仕事量を1人でこなすうち、幅広いスキルが自然と身に付いていくのを実感しました。
——会社の成長とともにメンバーが増えた今は、どんな風に働いていますか。
執行役員として、現在は社員たちをフォローする立場でもあります。当社は女性社員が多い分、顧客目線に立てることが強みなので、その部分は任せつつ、私は彼女たちから相談を受けたら別の視点を返すようにしています。自分は問題解決型というか、構造化、仕組み化が得意なタイプなのですが、そこがうまく活かせていると思います。
――今後、会社として、松浦さん個人として、挑戦していきたいことはありますか。
事業面では、2024年秋にスキンケアの新ブランド「ESIENCE(エシエンス)」を立ち上げたほか、「cocone」でも新しい取り組みや新シリーズに取り組んでいきたいと考えています。
私自身としては、会社での活躍と個人の活躍を両立したいですね。最近は、外部の方から私個人にもウェブやマーケティングの仕事をご依頼いただけるようになりました。30代になって改めて思うのは、上の人間のスキルが上がらないと、新しく入社するメンバーのスキルも、会社全体のスキルも上がらないということです。だからこそ、外にどんどん出て行って、高いスキルを持つ人と仕事をしたい。自ら高めたスキルを会社に還元していくことが、会社のさらなる成長にもつながり、相乗効果を生むと考えています。
「仕事とプライベート、どちらを優先したいですか?」と聞かれることもあるのですが、私はそこはグラデーションでいいと思っています。その時々でバランスも変わるでしょうし。でも、仕事なら「経験」、プライベートなら「思い出」、そういう形のないものをずっと大事にしてきましたし、これからもそういう自分でありたいです。
松浦 里奈(まつうら りな)●同志社大学卒業後、新卒で(株)リクルートに入社し、企画営業を担当。その後ゲストハウススタッフ、人口1万人の島での農業など不定住で働く生活を経て2018年(株)はぐくみプラスに入社。2021年執行役員就任。累計出荷1000万本を突破したcoconeクレイクリームシャンプーをはじめとする複数の商品開発、事業のマーケティング領域を統括。趣味はサウナと資格取得。