会社経営者として、オリジナルコスメブランド「Enamor(エナモル)」が大ヒット。YouTubeチャンネルも人気の「発信型メイクアップアーティスト」である、かじえり(梶恵理子)さん。多忙な日々を送りつつも、「プライベートが充実してこそ仕事も頑張れる」と話します。2022年に第1子を出産し、仕事と育児の両立を模索する中での苦労や気づき、そして令和の女性の新しい生き方について語ってもらいました。
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とことん言語化して、パートナーと意見をすり合わせる
――仕事と育児との両立については、どのように向き合ってきましたか。
子どもが1歳半ぐらいまではかなり無理をしていましたね。自分の中に、理想の母親像みたいなものがあって、ミルクあげなきゃとか、ご飯を作らなきゃとか、もちろん単なる義務じゃなくて「私がやってあげたいな」というのも本心だったんですが。加えて、夫の仕事の関係で週4でワンオペとかもざらにあって、子どもが生まれても男性は働き方も生き方も変わらない。なのに、「なんで女性だけこんなに調整して生きていかなきゃいけないの?」という思いが募っていきました。
仕事もどんどん忙しくなる中で、あるとき限界が来て爆発してしまった。私が抱えている状況を必死に訴えても夫はあまりピンと来てなかったけど、「まあでも、大変そうだから1週間くらいちょっと羽伸ばしてきていいよ。俺頑張るわ」と。

それでどうなったかというと、夫はたった2日で、「マジでごめん」と泣きついてきて。男性って経験しないと共感しないんだなとひしひしと感じました。でも夫も、一人で子どもを見るのってこんなに大変なんだ、送り迎えした後に仕事行くってこんなに体力を奪われるんだ、みたいなことを一通り経験したからか、それからは以前より私に寄り添ってくれるようになりましたね。
家庭によって考え方や事情は違うと思いますが、私は男女平等というスタンスだから、家計も完全に折半にしています。そのうえで、家事は私はこれをやるからあなたはこれをやって、といったことを話し合いで調整していきました。収入や仕事内容もさらけ出して、何がどう大変なのかも全部言語化しました。
――話し合いを通じて、お互いが納得できるポイントを見つけたんですね。
夫のいいところってめちゃくちゃ素直なところなので、それがあって成り立った部分もあると思います。お互い、「こっちはこんなに頑張っているのに」「察してよ」みたいな状況のままだとぶつかってしまうから、私はとことん言語化して相手に伝えました。
私たちが生きてきた昭和・平成の時代って、まだ男尊女卑の感覚が残っていて、結婚したら女性は仕事を辞める、家にはいつも自分のお母さんがいるのが当たり前という環境で育ってきました。昭和・平成の価値観を否定するわけではないし、専業主婦などの選択肢ももちろんあっていいと思うんです。でも、今って昭和・平成の時代よりも色々な選択肢があるし、令和の新しいお母さん像というのをつくっていくことも大事だなと感じています。
もちろん国や企業の制度とか、問題は単純ではないけど、もし、昔ながらの価値観に引っ張られて「母親である自分がもっと頑張らなきゃ」と思い詰めているなら、そんなに背負わなくてもいいんじゃない?と言いたい。ただ、自分たちのライフプランなどのイメージは、子育てが始まってからじゃなくてもっと早く、結婚する前の時点でパートナーと話してすり合わせておくことが大事だと伝えたいです。
産後に苦い経験をしたからこそ、「もう無理はしない」
――出産を経て、仕事に対するモチベーションに変化はありましたか。
今までは自分がどうなっていきたいのかが軸だったけれど、子どもが生まれてからは家族のために自分がどうなりたいか、というふうに変わりましたね。
YouTubeやオリジナルブランドなど幅広く活動させてもらっているからか、キャリアウーマンのようなイメージで見られがちなんですが、実際の私は、「プライベートが充実してこそ仕事も頑張れる」と思うタイプです。仕事もプライベートも、両方とも誰かの役に立っていたいですし。
だからこそ後悔しているのは、産後2週間で仕事復帰して、あまりの忙しさに当時の記憶が全然ないこと。わが子の、新生児という本当に尊い時期のことをちゃんと思い出せないんです。2022年の1月末に出産して、ボロボロの体調のまま2月に書籍発売、3月にEnamorのローンチというあまりに過酷なスケジュールで、二度とこんな無理はしちゃいけない。今後、私や誰かのライフイベントが重なっても会社が回るよう、体制を整えておきたいと思っています。

撮影/大内カオリ
――一緒に働いているメンバーには女性の方が多いそうですね。
アラサーぐらいの同世代のメンバーが中心なのですが、彼女たちにもいつも、「プライベートが充実してこそ仕事があると思ってね」と言っています。まだまだ小さい会社ですけど、お盆休み期間も10日ぐらい設けましたし、週2出社で残りはリモート勤務、基本は定時に帰ってねっていうのが当社の方針です。フルリモートの時期もあったのですが、テキストベースだけだとコミュニケーションがうまく取れないので、いまの形に落ち着きました。
子育てで疲れていても、メイクをすれば背筋が伸びる
――仕事に子育てにと頑張っていると、自分のために使える時間は相対的に減ると思います。昔からメイクが好きだったかじえりさんですが、その余裕がなくなってしまう時はありましたか。
そうですね。ベースから整えていくメイクの工程がどうしても面倒くさくなって、ある日、ノーメイクでリップだけ塗って、マスクとキャップで隠して子どもとららぽーとに行ったんです。店内でベビーカーを押してたら自分の姿がぱっと鏡に映って、その姿を見たらすっごい萎えてしまった。「え、自分?」と。それでまた、そういう日に限って「かじえりさんですか?」って声をかけてもらったり……。それからは「ちゃんとメイクしよう!」と思い直しました。
最初は確かに面倒くさいんです。面倒くさいけど、メイクして、髪もセットして出かけると気分が上がるし背筋も伸びる。それに、ノーメイクの日はそれ以外のことも全部適当になっちゃうのに、ちゃんとメイクするとなぜか、「今日はご飯こういうの作っちゃおうかな」って前向きな気持ちになれるんです。
――大変なときこそ、メイクの力を借りて元気になりたいという女性はたくさんいるかもしれません。
私自身の中で、忙しくてメイクする時間や気力がないって悩みが生まれた瞬間に、「あ、時短コスメを作ろう!」と思い立ちました。そこから2024年に発売したのが「バイカラーアイズ」です。ツーステップで簡単におしゃれなグラデーションが作れるアイシャドウで、ブラシを使わず指でささっと塗れるように粉質を調整しています。これはもう世の中の、1分でも寝ていたいお母さんたちは絶対好きだろうなと思って出したら、実際にママをはじめ忙しい女性たちからの評判がすごく良かった商品です。ここからブランドの知名度もぐっと上がっていきました。

指でさっと塗るだけで綺麗なグラデーションに。Enamor公式サイト
世の女性たちの中に、「自分の肌質はこうだからメイクしても仕方ない」とか、「眉毛を描くのもどうしたらいいか分かんないからいいや」と諦めてしまっている人がいるとしたら、私は、そうじゃないよ、こういうアイテムがあるからこんなふうに変わることができるよと伝えたい。これからも、「Enamor」やYouTubeなどの活動を通じて、一人でも多くの人たちにメイクの楽しさを発信し、気分が上がる瞬間をつくり続けていこうと思っています。










