Paranaviトップ お仕事 起業/独立 個人の情熱をビジネスに灯して。15万人のママに支持される助産師サキココさんが“指名される存在”になった理由とは?

個人の情熱をビジネスに灯して。15万人のママに支持される助産師サキココさんが“指名される存在”になった理由とは?

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

自分の専門性を活かしつつ、組織に縛られない新しい働き方を模索する女性は少なくありません。コロナ禍を機に「産後のママたちが頼れる居場所を作りたい」と発信を開始した、助産師のサキココさんもその一人です。

病院勤務から一転、オンライン講座とコミュニティ運営を通じて自分らしい働き方を模索してきた彼女。これまでSNS発信やビジネスの経験もない中で、どのようにしてフォロワーの信頼を築き、事業を拡大してきたのでしょうか。

MOSH株式会社が開催したトークイベント『子育て事業で想いとビジネスを両立させるには 〜ゼロから15万人のママに支持されるまでの歩み〜』より、その挑戦の軌跡をたどります。

「ママたちにもっと寄り添いたい」助産師のたった一人の挑戦

—— まず、サキココさんのこれまでのご経歴と、独立する道を目指した理由について教えてください。

私はもともと病院で助産師として働いていました。当時からママたちにもっと寄り添いたいと思っていたものの、現場にはどうしても時間の制約があり、密に関わることができずもどかしく感じていました。

そのような気持ちを持っていた中で、コロナ禍をきっかけに自分自身の働き方を見直すようになりました。自分個人でもできることがもっとあるはず、産後のママたちが頼れる居場所を自分の手で作りたい、と心から思ったんです。

しかしそれを実現するには、自分の存在を認知してもらい集客する方法が必要です。その手段としてInstagramを始めたのが、今から約4年ほど前になります。SNSの使い方、サービスの作り方、集客の方法に至るまで、何もわからないところからのスタートでした。最初からインフルエンサーになるとか事業をするという意識はありませんでしたね。

現在は3つのInstagramアカウントを運用。第一子の妊娠中のリアルな体験談も発信。
引用:サキココさんInstagram(@sakicoco_mw、@sakicoco_mw2、@sakicoco_mw0)

——最初は、手応えがまるでなかったような時期もあったと思います。どのように試行錯誤してきたのでしょうか?

Instagramを通じてママたちとつながっていく中で、次第にニーズも把握できるようになってきて、実際にサービスを小さく始めてみようと動いたのがInstagramを始めて3ヶ月ぐらい、フォロワー数1,000人ぐらいの頃です。最初は何をサービスにしたらいいのかもわからないし、助産師としての経験もまだまだ未熟な中で、「果たしてお金をいただいてサービスを販売していいのだろうか」というためらいもありました。

そこで最初は、世の中にあるサービスを自分なりに真似してみるところから始めました。産後ママの悩みは、授乳やねんねなど顕在化しやすいものが多いので、まずは単発の授乳講座をオンラインで提供してみたんです。

ときには申込者が1名ということもあり「これでやっていけるのか」という焦りもありました。ただ、そこであきらめずにスキンケアバージョンやねんねバージョンなど、自分が教えられる知識をもとに複数のパターンを試して、反応の良いテーマに絞っていきました。たとえば、ベビーマッサージは思った以上に反響がありましたね。

——子育て領域のビジネスは、購入者がパートナーの収入に依存していたり、独断で意思決定できなかったりで、価格を上げにくいマーケットだなと感じていますが、価格についてはどのように考えていますか?

価格について学びがあったエピソードとしては、フォロワーさんへの日頃のお礼として相談無料を企画したことがあったのですが、無料にしてしまうとお客様への期待値調整が難しくなってしまうことがわかりました。また、無料よりも有料のほうが、より熱量の高い方が来てくださるということも無料企画をやったからこそわかったことでした。

その経験を通じて、サービスを提供するからにはお客さまに対して精一杯のことをやる覚悟を持てるだけの価格設定にして、続けられる体制にしていかないと失礼だということを学びました。

価格については市場価格を基準にスタートしつつも、徐々に自分の価値と向き合って、上げていくことを意識しています。価格を上げるとむしろ意欲ある人が来てくださり、着席率も上がり、感想を送ってくださる人も増えたんです。そこではじめて「価格を上げることが付加価値になる」という実感を得ました。

認知から信頼へ——購入者から指名される存在になるには?

——現在サキココさんは、ベビーマッサージ講師の養成講座『ベビマル』と、ママ向けのオンラインコミュニティ『ママミー』の二つの事業を展開されています。事業が軌道に乗っていく中で、どのようにして選ばれる存在になっていったのでしょうか?

私が最も大事にしているのは「自分が一番身近に感じてもらえる存在であること」です。ママたちは通常、病院などで知らない人からケアやサービスを受けます。でも、もしそれを知っている人から習えるなら、安心感は段違いです。また購入者目線で考えると、ママ向けのコンテンツを発信するクリエイターがたくさんいても、その中でもより好きなクリエイターから買いたいですよね。だからこそ高頻度に発信を行い、接触回数を増やすことは常に意識してきました。

発信はいつも、誰に届けたいかを逆算して設計しています。私の場合は「孤独や不安を感じている産後すぐのママ」です。だから一般的にユーザーが集まりやすいとされる夜ではなくあえて平日昼間にインスタライブをして、育休中の方がアクセスしやすい時間帯を選んでいます。そのような細かな配慮を重ねて、共感し信頼してもらえる関係性を育てていきました。

MOSHが提唱する指名経済のように、顧客から“指名される”存在になるには、まず体験してもらうことです。私はハードルが低めな単発講座が“出会い”になるように設計しました。受講してもらって「この人から学びたい」「この人と続けたい」と思ってもらえるような体験を細部まで作ることが大切です。加えて私は穏やかな発信を心がけているので、フォロワーさんにもそのスタンスが伝わり、居心地の良さを感じてもらえているのかもしれません。

引用:『ベビマル』公式サイト(https://nihon-babycare.com/bebimaru/lp)

——ベビーマッサージ講師の養成講座『ベビマル』は、どのようにして生まれたサービスなのですか?

ベビーマッサージの単発講座を続けているうちに、ママたちは子育てが少し落ち着いてくると、今後の自分の働き方など自己実現にも目が向いてくるのだと気づきました。私自身も講師の経験を積んで「人に教えられるかな」と思えるタイミングになっていたので、そこで初めて一対多の高単価サービスとして、ベビーマッサージ講師の養成講座「ベビマル」が誕生しました。

すると、これまでベビーマッサージのレッスンを受講してくれていたママたちが開講をすごく喜んでくださって。「もっと深く学びたい」「私も教える側になりたい」という声が集まり、「これも私に教えてほしいと思ってもらえるんだ!」と発見がありました。

当初は個別形式の講座も考えましたが、これまでの参加者の反応を見てきてグループ形式を採用しました。これまでの単発講座では1時間のうち45分くらい私が講義をして、その後に質疑応答の時間を設けていたのですが、参加者から「同じ悩みを持つ人がいたと知れてよかった」「他の人の質問も聞けて安心した」という声が多かったんです。

そこで「他の人がいる安心感」にも大きな価値があると気づき、養成講座でも私自身が架け橋となって、ママ同士のつながりができるような仕組みを作りたいと思いました。ママたちが“自分だけじゃない”と思える居場所をつくることが、私の事業の核となっています。

ママたちをつなぐ架け橋を目指して。オンラインコミュニティ『ママミー』が叶えたい未来

——事業のスケールを目指す場合、一般的には属人性を排除していくと思うのですが、サキココさんは現在もご自身が講師を務めています。そこにはどのような考えがあるのでしょうか?

正直、外部の講師に任せたほうが事業の拡大はしやすいと思います。ただ、私にとってこの事業の原点は「私自身がママと関わりたい」という想いなんです。そして、発信を見てくれているフォロワーさんとは、“この私”を見てくれているからこそ成立している関係だと思っています。だから、人によって変わってしまう雰囲気作りや居心地をコントロールできる存在でいたいんです。

しかし、全てを一人でやるわけにはいかないので、スタッフや講師を迎えるときはスキルだけでなく、信頼関係を築ける人や想いを共有できる人がいいと思っています。ただ、私と同量の情熱や愛情を持ってもらうのは難しいですし、その方が自分により近い想いを持ってくれるかどうかは、私とその方の関係性によると思うんです。ですから「サキココが大切に思ってる人だから大切だ」と思ってくれるくらいの関係性は、必要だなと思いますね。

——これからのビジョンや挑戦したいことをお聞かせください。

私が独立したのはそもそも「多くのママたちの力になれるような身近な助産師になりたい」という想いからでした。オンライン講座の次のステップとしては、多くのママたちの“居場所”となれるものを作りたいと思っており、現在『ママミー』というママ向けのオンラインコミュニティを作っています。

引用:『ママミー』公式サイト(https://mamamii.co.jp/)

『ママミー』が目指すのは、世の中のママたちの架け橋となれるようなプラットフォームです。より多くのママたちをつなぐためには、SNSの発信力だけでは知名度も不十分ですから、最近は企業とのコラボレーションなども積極的に行っています。

一方で『ベビマル』は主軸となる事業なので、『ベビマル』と『ママミー』の間でいい循環が生まれる事業にしていきたいです。そしてその中で、産後のママたちが孤立しない社会を一歩ずつ創っていければと思っています。

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

Keyword

Miyu
Writer Miyu

VIEW MORE

Page Top