Paranaviトップ お仕事 メンタル なぜ私たちはこんなにも生きづらいのか。精神科医Tomy先生に聞く、「自分を正しく愛する方法」

なぜ私たちはこんなにも生きづらいのか。精神科医Tomy先生に聞く、「自分を正しく愛する方法」

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自分に自信が持てない。他人の顔色をついうかがう。仕事も人間関係もうまくいかないし、どうしていつも私はこうなんだろう——。精神科の専門医であり、「X」のフォロワー約40万人とSNSでも人気の「精神科医Tomy」先生は著書『愛の処方箋』(光文社)の中で、私たちが抱えるこうした「生きづらさ」の裏側には、実は「愛」の問題があると説いています。あなたはほかの誰でもない「私自身」を、きちんと愛せているでしょうか。自分や他者をありのままに受け入れる大切さと、今より少しだけ生きやすくなるためのヒントについて、Tomy先生にインタビューしました。

「自己愛」とは何か。ナルシシズムとの根本的な違い

——『愛の処方箋』は、人々が抱える生きづらさに、「愛」の問題からアプローチしています。特に、冒頭で描かれたご自身のお話は、まるで小説を読むように引き込まれる内容でした。執筆のきっかけをお聞かせください。

そもそもは出版社の担当編集者の方から、「先生、愛の本を書きませんか?」とご提案を受けたのが最初です。愛とは大切なテーマではあるものの、なかなか恐れ多いなと思っていたのですが、本の内容をじっくり検討する中で、まずは自分の半生をまとめてみることにしました。30代で父が亡くなり、その後はパートナーとの死別、うつ病、そして次第に回復へ——こうして四苦八苦した経験にもきっと愛が関わっていたと考えたのです。過去をつぶさに観察し、そして「愛とは、ありのままを受け入れることだ」という自分なりの結論を導き出しました。

——本書で愛の問題を分析する中で、「自己愛」という重要なキーワードが登場します。健全な自己愛があるかどうかが、生きづらさと深く関係するとのことですが、改めて、自己愛とは何でしょうか。

僕が考える自己愛とは、「自分のありのままを受け入れること」です。この土台があってはじめて、相手のありのままを受け入れる=他者を愛することができます。

今は自分軸とか自己肯定感とかいろいろな言葉が溢れていて、解釈も人それぞれなので誤解が多い。でも、愛の定義があいまいなままだと、本の中で愛の話ができなくなってしまうから、僕なりにクリアに説明しておきたかったんです。

まず言っておきたいのは、自信過剰な態度を取ったり、いつも鏡を見て髪型を気にしたりするのは、「自己愛」とは全く違います。そういう、ある種のナルシストはむしろ「健全な自己愛を持っていない」人たちなのです。自己愛不全に陥っているという点で、自信がなくて困っている人の立場に近いともいえます。

——恋愛における「カエル化現象」も、自己愛不全の問題として説明できるというお話も興味深かったです。

「カエル化現象」は典型的な例ですね。最近は意味が拡大解釈されがちですが、元々は「自分が好きな相手から『好き』と言われると好きじゃなくなってしまう」ことを指します。本来は相思相愛で良いことなのになぜそうなるかというと、そもそもそれは「愛」ではなかったから自分が安全な場所から、こっちを見向きもしない人を追いかけるという、ある種「推し活」をしているのが心地良かったのに、相手が応えてくれたことでリアルな恋愛問題に変わってしまった。「カエル化現象」とは、「実は好きじゃないと気づいた瞬間」なのです。

他人との比較を捨て、「私はこれでいい」と認める

——ほかに、20~30代の女性たちが健全な自己愛を見失ってしまうケースとしては、どのようなものが挙げられますか。

よくあるのは、「あの人はこうなのに」「自分の理想のコースはこうだったのに」など、何かと比較してそことのギャップで落ち込むパターンですね。実際にお話を聞いてみると、ご本人の人生も別にうまくいっているのですが。その反面、「周りなんて気にしない、私はこう生きる!」と自分を貫ける人を羨んだりもする。

——ちょうど転職、結婚、出産などライフステージが分岐していく世代なので、友人や同僚を見て「もしあっちの道なら」と比較しがちなのかもしれませんね。

現代は選択肢も情報もたくさんあるからこそ、自分の仕事や子育て、家事について「これでいいのか」と不安になってしまう、という声は多いですね。

時代的な要因を補足するとすれば、一番は間違いなくSNSの存在です。友人・知人のキラキラした投稿や楽しそうな家族写真を見て、不安や嫉妬の種を勝手につくり出してしまっているのです。

——人間関係に関する悩みについてはどうでしょうか。

プライベートがうまくいっていないと仕事でも自信が持てなかったり、職場でイライラすることがあってそれを家庭に持ち込んでしまったり、といった悪循環に悩む女性はよくいらっしゃいます。

実はこれもスタートは自己愛なんです。自分のありのままを認められているかどうか。自分自身で解決するしかない問題なのですが、そこが中途半端だと当然、他者との関係もうまくいきませんよね。

悩んでいる人に僕はまず、「あなたはあなたしかいないのだから、肯定できないにしても否定はしなくていいんじゃないですか」と言ってあげたい。あなたの人生を誰かと比較する必要もありません。「私はこうなんだから、これでいい」。そう思えることが、健全な自己愛と他者への愛を育みます。

自分の気持ちを取り戻すためのワークから

——自己愛不全の度合いが根深くて、どこから手を付けていけばいいかわからない女性には、どんなアドバイスがありますか。

特に問題になるのは、自分の気持ちが自分でもよくわからなくなっているケースです。これは幼少期の経験が原因になっていることもありますし、長い人生の中で形作られてきた性格が突然変わることはありません。だからこそ、小さな目標を立てて段階を踏んでいくことが大切です。

アドバイスの1つは、セルフモニタリングして自分の日々の気持ちを観察すること。これをすると気分が上がるな、この環境は苦手だな、といったことを書き出してリスト化するのもよいでしょう。自分のことがわかるのは自分だけ。だからファーストステップでは、他者を一切慮ることなく、自分の気持ちだけに向き合ってみてください。

次に、「どっちでもいいです」「あなたに合わせます」じゃなくて、たまには自分の気持ちを表に出してみる。最後はその意見を誰かに勧めたり、誘ってみる。これは些細な、例えば同僚とのランチで何を食べるか、といったレベルから始めるのでも十分です。

また、自分が最も大事にしたい相手との関係性においては、「自分の気持ちを理解する」の次のステップ、自分の意見を言えるようになることがとても重要です。そこから話し合いをし、健全な関係へと進んでいくでしょう。自分を認めるという根本のワークができていれば、他人との関係も解決していくはず、というのが僕のスタンスです。

——最後に、「愛」の問題を抱えながらも日々頑張っている女性たちへのメッセージをお願いします。

『愛の処方箋』(光文社)

『愛の処方箋』(光文社) 出典:光文社公式サイト

今回の本では、パートナーとの対話や子育て、友人関係など、愛にまつわるさまざまなお悩みに対する「処方箋」をご紹介しています。自分をありのままに受け止めるというのは、楽なことではありません。それでもあなたが、「愛」について何とかしたいと願うなら。大丈夫です。少しずつ、そして確実に良くなっていきますから。この本も、そのきっかけになれば嬉しいです。

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岡部 のぞみ
Writer 岡部 のぞみ

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