みなさん、投資ってやっていますか? なんとなく、投資と聞くと、「ハードルが高い」「興味はあるけど怖い……」と感じる人も多いのではないでしょうか。そこで、今回登場するのは、インスタグラムで公開している投資のノウハウがわかりやすいと評判の“投資インフルエンサー”・Jeremy Tsangさん(以下・ジェレミーさん)。アメリカの大手投資ファンドに勤めていた経験や、民泊事業、Uber Eatsの立ち上げ事業に参画した経験も経て培ったマネーリテラシーを毎日惜しげもなく公開しています。時には質問をぶった切り(笑)、時には愛犬にメロメロという謎多きジェレミーさんに、投資初心者のパラナビ編集部・澤口舞が「女性にとっての投資」について詳しくお話を聞いてきました!
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「投資」は女性の方が向いている
――パラナビ読者の中には、まだまだ投資へのハードルが高いと感じている人も多いです。私自身もそうなのですが、女性も怖がらずに投資にチャレンジしていった方がいいでしょうか?
長期的な目線でちゃんとプランを立てていくといった、資産形成を主とする投資は、女性の方が個人的には向いていると思います。男性って、闘争本能があるから身の丈に合わない投資をしたくなるんですよ、勝ちたいから。だけど、投資は当然勝ちも負けもあるので、感情に左右されると、結果的に損してしまう可能性もある。一方女性の方が、「投資は怖い」と思っている方が多いから、一か八かの賭けみたいなことをしない人の方が多い。
――確かに、「投資」って聞くとちょっと怖いイメージが……。
投資っていうと、自分の全財産のすべてとか大半を投資に回さないといけないと思っちゃう人も多いと思うんですけど、千円とか1万円とかでも全然いいんですよ。それに、先程言った「資産形成」という考え方は、女性のみなさんにこそ、おすすめしたいです。アグレッシブな投資というよりは資産形成でいうと、向いている女性は多いと思います。
――資産形成を目的にする、ということでしょうか。
そうです。投資と資産形成については定義が難しいのですが、
投資=アグレッシブに自分の資産を増やしていくもの
資産形成=保守的な考え方で資産を減らさない、かつ自分のマネーリテラシー、ファイナンシャルリテラシーを上げながら資産を作っていくもの
と僕は考えています。株やFX、不動産、国債……など勉強していくと、知らなかった世界が見えてくるんですよね。僕も経済学部出身ですが、今でももちろん日々勉強しています。知識=マネーリテラシーは一度勉強して終わりではなく、常にミルフィーユ型に積み重ねていかないと、結局のところ損をすることが多い。だからこそ、勉強しながら資産を作っていくことに目を向けてみるべきかなと思います。
“マネーリテラシー”をあげれば、投資はこわいものじゃない
――日本ではあまり「お金」に関する教育はされないな、と感じています。むしろお金の話がタブーとさえ感じるというか……。
そうですよね。僕は香港人と台湾人の両親のもとで育っているので、昔からお金の話を家族でめちゃくちゃしてきたんですよ。父の会社の売上の勘定とかを幼いころからしてました。中華圏の人は家族を含めて資産形成をするんですよ。自分の国がなくなるかもしれない、人民元もあてにしてはいけない。それなら子どもに移民として、ほかの国で永住権を取らせて、家族がどこに行っても大丈夫なようにする。いわば、リスク分散をするわけです。家族のポートフォリオとして子どもも一緒に資産形成をする。だからこそ、親の資産は自分も増やしていきたいと思うし、家族間での資産の境目がないんです。
――日本とは大きく違いますね……! 私は家族とはほとんど会話してこなかったです。両親からはとにかく「貯金しなさい! 」としか言われなかったですし。
そうそう、日本の家庭では、お金の話は全然しませんよね。それに借金は良くない、貯金をしなさい、という教えが長いこと根付いている気がしています。でも、今の日本の状況を見るに、10年前の100万円の価値が10年後の今も100万円のまま、ではないんです。僕らの親世代が子供のときに10円であんぱんを買えたのが、今はうまい棒しか買えない。経済は膨張するので、お金の数は増えます。いま、金融緩和が起きまくっていて、世界中の政府でお金を刷りまくっている。そうなると、現金の価値は容赦なく減っていきます。親世代が貯金しなさいと言うのは、今持っている100万円の価値がこの先もずっと同じだと思っているから。でも確実に100万円の価値は目減りしている。となると、貯金が重要か否か……? もうおわかりですよね?
まずは、同じジャンルの本を20冊読むべし!
――マネーリテラシーをあげるためにやったほうが良いこととはなんでしょうか?
僕から言えることは2つ。ひとつはとりあえず本を20冊読みましょう! ということ。さっきも言ったように、マネーリテラシーがない状態だと、結局長期的には損をすることが多い。きちんと理解しないまま、一生懸命貯めた1000万をいきなり投資に全額突っ込んで損しちゃうとかって、本当によくある話なんです。だからこそ、できるだけたくさんの視点を持つために、20冊は読むのがおすすめ。日本は出版大国なので、1冊や2冊だとバイアスがかかり、偏った知識になってしまう可能性もあるんです。それに、その業界の本を20冊も読む人なんて、まずそんなにいないじゃないですか。決して、できないことじゃないけど、やらない人の方が多い。つまり、知識上ではその業界の中で飛びぬけられるわけですよね。そうすれば、例え初心者向けに、都合のいいことばかり言っているセミナーに行ったとしても騙されにくくなる。さっきの1000万円も、賢い使い道を選ぶことができる。ちなみに僕は今年は500冊読む予定です。
これは投資? それとも消費? 身の回りの物の見方を変える
――500冊……! 頭が上がりません。あともう一点についてもぜひ教えてください!
はい、もうひとつは、「自分の身の回りにあるものの見方を変える」ということ。例えば、今飲んでいるこのお水の原価はいくらだろう? 誰がどう儲かって誰が喜ぶのか? を考えてみる。それが、マネーリテラシーをあげる第一歩だと思います。好きなものや身近なものでいいので、どういう経済活動が行われているかを考え始めると、少しずつそういった考え方が積み重なっていく。いわば、商品の価値について考えるクセができるようになります。
――なるほど、すぐにでもできそうですね!
そうなんです。誰にでもすぐに始められる。あと、僕はあらゆるもののお金の使い方を投資なり資産形成に回そうと考えていて。これは投資になるのか、それとも消費か、そんな目線で物事を見ています。エルメスのバーキンがいい例で、あれは投資か、少なくとも消費ではないと思っています。たとえ150万円で買ったとしても、再販価値が数年後もさほど変わらないんですよね。セカンドハンドバリューが高いんです。今僕らが持っているiPhoneやiPadなどのアップル製品もそう。そうやって、モノを買うときに、再販価値を意識することも有効です。
――それでいうと、フリマアプリも有効でしょうか?
いい練習になると思います。実際ありますよね、売りに出してみたら全然思った額で売れなかったとか、その反対もしかり。新品で買ってセカンドハンドで売っても、値段の下げ幅があまりなく、将来返ってくるようなモノの選び方ができるってことが大事かなって思います。僕の具体例でいうと、ニューバランスのフラッグシップモデルを2万円で買って、毎年1万円で売って新品を買う。1年に300回くらい履けるから、日割りにすると約30円くらいになる。セルフサブスク的な考え方です。もちろん消費が悪いということじゃなくて、「これは消費でもいい」とか「これは投資として買おう」というふうに判断できるようになる、ってことが重要なんです。
投資をやるなら、“今”がおすすめ!
――判断できるようになれば、確かに不安は少なくなるかも。ジェレミーさんとしては、投資を始めるべきタイミングはいつですか?
投資は早ければ早いほどいい。いくらからでも始められるんで、まずは小さい金額から始めてみるのがいいと思います。なぜなら資産は雪だるま式に増えていくから、早く始めて、生きた年数が長い人のほうが、絶対に得なんですよね。資産形成には複利っていう概念があって、100万円投資したとすると、仮に年利10%の運用が出来たとして、毎年10万円プラスじゃなく次の年は110万円の10%で11万円プラス、次の年は121万円の10%で12.1万円プラスという加速度がある増え方をするんです。それに、若い時の方が損できる金額は小さいですよね。仮に若い時に失敗してもダメージの総額は少ないし、取れるリスクっていうのは将来のライフステージによって変わってくるから、興味を持った今この瞬間に始めるのがいいと思います。
――私もまさに今始めようと思って参加した、不動産投資セミナーで「都内・ワンルーム・中古」マンションがいいと、先日聞いたのですが、ジェレミーさん、どう思いますか?
ワンルームマンションは絶対おすすめしない(笑)! 大家さんが売り急いでる資産価値の高いものを割安で買えるならいいけど、セミナーで売っているものは基本的には全然得しない。ワンルームマンションは金額が小さくて2000万円とかなので、わりと誰でも買える。ちょうどいいかなって思っちゃいますよね。でも、取れる利回りに対してかかる金利コスト、敷金礼金、修繕費……と重ねると本当に得しない。業者さんが2000万円で仕入れて2400万円で売ってすぐ粗利300万円儲けてるのに対して、買った人は30年間で300万円儲かるかどうかのレベルなんですね。さらに、そのために銀行からフルローンで2000万円融資を受けるとすると、それと引き換えに自分の信用力を失うことになります。
――な、ん、と……!
(笑)。だからこそ、信用できる相手を見つけるため、騙されないための知識を身につけるということが重要ですね。あと、女性は特に結婚前に家を買った方がいいと思います。買ったことで、知識を積むことができるし、結婚した後に住み替えをすることで、1回目以上にいいチョイスができる。僕の経験値から、1回目に買ったもので100%正解は出せないなと感じています。なので、独身のときにまずは“100%納得できているもの”を始めておく。パートナーができた時には、もっといい選択肢を一緒にできるから。それをわかった上でマンションを買っている女性は、リテラシーが高くてとても魅力的ですよね。
――「結婚前にマンションを買うとヤバい」というジンクスを一刀両断していただいたところで(笑)、“今”ということに紐づき、この新型コロナウイルスの影響から株などの投資についてはどう思いますか?
今は始めるタイミングとしてはめちゃくちゃいいです。世界の経済はロングタームで拡大していきます。今までも、リーマンショック、震災などありましたが、新型コロナはSARSの状況とほぼ一緒。なので株も大バーゲンセール中です。株価は日々かなりの変動がおきているので、バーチャル取引でもいいから、やってみれば、とても勉強になる。変動の波が大きいから損をする確率も高いですけど勉強になりますよ。
――そうなんですね。すっかり投資環境は冷え込んでしまっているのかと思っていましたが、そんな時こそ、実は チャンスなんですね!
誰にとっても今がいちばん若いのは同じ。なら、状況を静観し続けるよりも、今始めたほうがいい。そのためにも、まずは、本を20冊読んでリテラシーをあげる努力を! 世の中にいる投資のプロと名乗る人は、ほとんどがなんらかの、特定の金融商品を売るためだけのプロです。となると、その商品しか売ってこないから、偏った見解になる。自分に幅広い知識があれば、そういった人たちの言葉を真に受けずに済みます。時間はみなさんに平等に有限。だからこそ、日々の生活からリテラシーアップを大切にしてほしい。もし、迷うことがあれば、いつでも僕に相談してきてください!
Jeremy Tsang ● UCLA、香港大学院を卒業後、アメリカの大手投資ファンドに就職。その後独立し、民泊事業やUber Eatsの立ち上げ事業に参画。現在はシェアハウスを経営する傍ら、2棟のホテル経営を計画中。自身のインスタグラムでは、ストーリー配信で投資や不動産についての知見を惜しげもなく公開し、そのフォロワーは現在8,000人越え(2020年3月31日時点)。