昼間はキーボードを打ち、夜はミットを打つ――イタリア出身のボーニ・フェデリカさんはIT企業の人事とプロボクサーという2つの顔があります。学生時代から日本文化に興味があり、2度の留学を経て、2017年に就業ビザで日本へ来日。現在は、SaaS型アルゴリズム提供事業を展開するかっこ株式会社で人事として働いています。体を動かすのが好きでボクシングジムに通っていた彼女は「やるならとことん」という性格も相まって、プロボクサーを目指すように。本業で忙しいなか、毎日欠かさずジムへ通い、今年1月に見事プロ試験に合格! デビュー戦を心待ちにしているフェデリカさんに、本業を持ちながら夢を叶える秘訣を聞きました。
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人と深く関わる仕事をしたいと思い、未経験で人事に
――進学したイタリアの大学では日本文化について勉強されていたんですよね。
そうですね。イタリアにいたときから日本の文化が好きで、大学生時代は新潟大学に、大学院生時代は中京大学に留学していました。将来は日本で就職したいと思っていたので、大学院生時代に就労ビザを取得して、日本のベンチャー企業とバイクとパーツのメーカーで働くことに。しかし、2社目では営業やマーケティングをする部署と聞いていたものの、実際の業務は翻訳ばかりで……。もっと日本の文化や人と関わることがしたいと思い、9ヶ月働いたのちに退職。人と深く関われる人事職で転職活動を始めました。
――転職先が今の職場であるかっこ株式会社ですね。どのような経緯で入社することにしたのでしょうか。
就労ビザは仕事を辞めて3ヶ月で切れてしまうため、急いで転職先を探しました。いろいろな企業へ面接を受けに行きましたが、かっこ株式会社は外国人で人事未経験ながら、快く受け入れてくれたんです。働き方も柔軟で、残業が少ないところも魅力的でした。
足のケガで松葉杖に! でも「ボクシングでなら戦える」
――その後、プロボクサーを目指すようになったきっかけを教えてください。
私は昔から体を動かすのが大好きで。仕事以外の時間に思い切りスポーツをしたいと思い、キックボクシングを始めました。しかし、練習で足をケガしてしまって、松葉杖で出社することも……。年に3回も足をケガした結果、ドクターストップがかかってしまいました。そこで、蹴らなくていいボクシングに転身することに。そして、「やるならとことんやりたい」と思う性格なので、プロボクサーを目指すことにしました。
――会社員をしながらプロボクサーになるのは、かなり大変そうなイメージです。
そうですね。女性でプロボクサーを目指してもなかなか続かない人が多いので、ボクシングジムの方にも、「本当にプロを目指すのか」と何度も確認されました(笑)。
実は幼少期に両親が離婚したて父親との縁を切られたこともあり、子どもの時から自信がないんです。そこで、「強くなりたい! 一人でも戦えるようになりたい」という気持ちが生まれました。本当はキックボクシングでもプロを目指していたのですが、諦めてしまったので、今度こそは絶対にプロになりたいと思いました。
――かっこいいです。プロボクサーになるため、どのようなスケジュールで動いていたのでしょうか。
朝4時半に起き、6時〜7時の間にかっこへ出社。16時に退社し、一度自宅に戻ったあと、18時〜20時までボクシングジムで練習していました。この生活を毎日していました。でも現在はテレワークが中心なので移動時間が減り、少し楽になりました!
――毎日……! 私なら途中で諦めてしまいそうです。モチベーションはどのように維持しているのでしょうか?
私もサボりたくなるときはあります(笑)。特に、仕事で疲れている日に荷物を取りに自宅へ帰ったときは、「もうここから動きたくない!」と思うことも。でも、その日休んだら翌日はもっと行きたくなくなっちゃうと思うんです。それに、コーチも待ってくれているから行かざるを得ない。だから私は仕事と同じだと捉え、ジム通いはタスクを消化する気持ちで行くようにしています。
それに食事の制限もあって、遊ぶ時間も少ない生活をしています。色々犠牲にしているからこそ、強いボクサーになりたいという思いが強くあります。
残り8年、それまで本業もボクシングも全力でがんばりたい
――今年1月、見事プロテストに合格したんですよね。
はい。職場のみなさんもすごく喜んでくれて私も嬉しかったです。上司にも「デビュー戦が決まったら見に行くね!」と言っていただきました。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり、まだデビュー戦が決まっていなくて……。さらに私は女子ボクシングの中でも最重量級で戦える相手が少ないので、再日程を組むのも難しくて。今は練習しながら、デビュー戦を心待ちにしている状態です。
――デビュー戦が決まるのが楽しみですね。最後に、フェデリカさんの今後の目標を教えてください。
私自身、ひとつのことに集中しすぎると、燃え尽きてしまうことがありました。ですが、人事とボクシングの2つに情熱を注げる今は、精神的にも肉体的にもバランスよくがんばれています。女性がボクシングを現役で続けられるのは36歳までと言われているので、残りの8年は後悔のないよう両立していきたいです。
ボーニ・フェデリカ●1991年生まれ。イタリア出身。現在はかっこ株式会社にて採用や人事、社内イベントの企画など幅広く関わっている。社内コミュニケーションを大切にしておりみんなが楽しめることを考えるのが得意。