コロナ禍で、リモートワークが続いている方も多いでしょう。これをきっかけに職場を縮小し、今後もリモートで対応するようにシフトチェンジしたところも見かけます。最初は移動がなくて楽だねと思っていても、なんとなく疲れてきちゃった……と感じていませんか? そんな方に、今回は精神科医そして産業医の視点から少しでも気分が明るくなる方法をお話しします。
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リモートワークで疲れる原因とは?
オン・オフをつけるのが難しい
起きてから会社に行くまでの移動は、時間、場所の変化があることで頭の中がリセットされるのに大事な時間。お昼休憩も職場だと時間がしっかり決まっていたのに、リモートだとなんとなく時間が過ぎてしまい、うまく休みをとれない、という人も見かけます。
作業環境が整っていない
家はゆっくり休む空間。そう思って、仕事用のデスクがないという人もいるのではないでしょうか。ある一定以上の規模の会社には産業医がいて、心身の健康を保つための社内環境を整える職場巡視をしています。あまり意識したことはないかもしれませんが、デスクの高さや、照明の明るさなどもしっかり健康のためにケアされているんです。しかし、自宅ではソファだったり、床だったり、あまり環境が整っていないため姿勢が悪くなり、それが心身ともに影響することが考えられます。
人とのコミュニケーションを取る回数が減る
精神的な負担はこれがいちばんの理由ではないでしょうか。友達となかなか会えないだけではなく、仕事においてもかなり支障が出ます。上司に聞きたいことがあっても、目の前にいればすぐ連絡できるのに、リモートだとわざわざ電話するのもあれだし、メールか……となるとタイムラグも生じますし、文字だけでが意図がすべて伝わるとは言い切れません。また体調が優れないときでも、そう申告するのに気が引けて、リモートだったら何とかやれると無理をしてしまう人も多いようです。
生活リズムが狂う
自宅で仕事をしていると、ついそのまま夜更かししてしまったり、起きる時間もバラバラになってしまったりしているという方はいませんか? またいちばんおろそかになるのが食事。ずっと家だからご飯を食べるのも面倒だし、気がついたらつまみ食いばかりで3食規則正しく食事できていない、ついついパソコンと向き合ったまま、ながら食べをしてしまう………。あれ?私?と思った人も多いでしょう。
優先順位をつけられない
これ、リモートワークが始まって、精神科を受診した人の理由としてかなり耳にしました。もともとは、まずこれをやって、次はあれ、と指示をもらっていた人たちが「いついつまでにこれとこれとこれ、やっておいて」という指示が増えたのか、そうすると自分で優先順位がつけられない、時間配分がわからないということで作業効率が格段に落ちたという人がかなりいるんです。特に、発達障害の一つであるADHD(詳しくは以前の記事を!)の人は優先順位や整理整頓が苦手。家も片付けられないし、仕事の書類もぐちゃぐちゃ、どれから手をつけたらいいのか……という状況に陥りやすい。実際これをきっかけに受診し、ADHDだと判明した方もかなりいらっしゃいました。
まずは、生活環境を整えよう
基本中の基本ですが、生活リズムを整えるのはとっても大事。これは、リモート以外でもそうですが、寝溜めなんてできません。良い睡眠リズムの基本は、「朝起きる時間を一緒にする」ことです。疲れて長く寝たい場合は、早めに寝て、朝はしっかり同じ時間に起きること。そして、なかなか布団から出たくない季節ですが、起きたらしっかり窓を開けて日光を浴びる。できたら仕事前に窓を開ける時間を作ると良いでしょう。姿勢の悪い状態での作業も、体に悪いだけでなく、心にも負担がかかります。私はこの機会に、デスクチェアを姿勢を整える椅子に買い換えました。だらだら仕事をしてしまう人は、部屋着からしっかり着替える。そして、リモートでなんとなく仕事時間が増えている人は、始業時間、昼休み、終業時間にタイマーをつけておいて、しっかりメリハリをつけることも良いかもしれません。
ストレスを溜めない食材を取り入れる
食材は色々な効能があります。おうち時間が増えて、人に合わせるのではなく自分が食べたいものを食べられるのは、もしかしたら食事スタイルを見直すチャンスかも。東洋医学で、ストレスが溜まっている状態を“気滞”と言います。字のごとく、気が滞っている、体の中で渦を巻いているような状態。そんなときに良い食材があります。
- オレンジなどの柑橘系
柑橘系は気を巡らせてくれる代表的な食材。今はちょうどみかんが美味しい季節。アロマとして香りを楽しむのも良いですね。
- 蕎麦
主食では、蕎麦がオススメ。蕎麦はポリフェノールの一種が含まれているので、抗酸化作用や生活習慣病の予防として良い食材。ストレス防止と、アンチエイジングを同時にしてくれる強い味方です。
- ジャスミンティー、ミントティー
なかなか食事に気が回らないという方、まずは飲み物から改善してみませんか?これなら、いつものティーパックを変えるだけ。
ストレスがたまると、つい甘いものを食べてしまいがちですが、急激な血糖値の上昇は余計にストレスの原因になることも。フルーツに変えてみたり、低GI食品にしたりするなど少し意識してみてください。
ストレスで浅くなっている呼吸を整える
昨年、大ヒットした鬼滅の刃では、“呼吸”という言葉が使われていて、ついにこの時代が来たかと嬉しくなりました。“呼吸”って本当に大事なんです。過呼吸という言葉、聞いたことが合うかもしれませんが、ストレスは顕著に呼吸に現れます。私も、疲れが溜まっている時、ふと「あ、呼吸が浅くなってるな」と気がつくことがあります。呼吸は、“吸う“と“吐く“の2つの動作でなりたちます。もし、ストレスが溜まっているなと感じたときは吐くほうに集中してください。秒数も1:2と吐く時間を長めに。とにかく吐き切ることが大事です。腹式呼吸が基本。自分のお腹に手を当てて、お腹の膨らみを実感しましょう。その時、背筋をしっかり伸ばし、ゆっくり鼻から吸って鼻から吐くようにするとより効果的です。始業前の1分、昼休みの1分、疲れたなと感じた時は、ぜひやってみてください。
外に出たいけど、なかなか外に出られない今。身近な対策法で少しでもストレスがかからない毎日を過ごしましょう!
木村 好珠
Kimura Konomi
木村 好珠
Kimura Konomi
Profile
精神科医、漢方医、産業医、健康スポーツ医。学生時代からタレント活動を始める。現在精神科医として常勤する傍ら、都内企業の産業医、ブラインドサッカー日本代表のメンタルアドバイザーを行なっている。最近は、アカデミー年代のメンタル育成の普及について積極的に取り組んでおり、レアル・マドリード・ファンデーション・フットボールアカデミーやMIFAサッカースクールのメンタルアドバイザーとしても活動中。