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専業主婦から起業、「夫のお店の手伝い」から開けたキャリア。50人のスタッフを抱える社長・柳生久理子さんの挑戦

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専業主婦を経て、ビジネスの現場で大活躍する女性が増えています。そのモデルケースが、大阪府の地元情報を発信するドットコムホールディングスの経営者として活躍している柳生久理子さんです。NPOの運営などもやりながら、3人の子どもを持つママでもある柳生さん。実は就職した経験はなく、仕事のやり方から組織づくり、マネジメントまですべて「自分流」でつくりあげてきたんだとか。そのストーリーを聞きました。

「夫のお店の手伝い」からすべてが始まった

――いろいろな分野でご活躍されている柳生さん。専業主婦から起業にいたったきっかけを教えてください。 

2001年に長男を出産してから、ずっと育児だけをする毎日で、暇を持て余しちゃったんです。夫が靴やかばんの修理をするお店を経営しているんですが、どうせ暇ならそのお店のHPをつくって、安く宣伝してみよう! と考えついたのがはじまりでした。

――HPをつくるのは、難しくなかったですか?

もともと趣味でHPをつくっていたので、そのスキルを生かしました。でも、なかなか地元の方々に広がっていかなくて。お店のクーポンを載せても効果が出ず、地元のお店や育児サークルの情報を載せればたくさん見てもらえるんじゃないかと思いついたんです。こうして「都島区.com」ができあがりました。

――そこから、どうやって「都島区.com」の中身をつくっていったんですか?

地道に、ベビーカーを押しながら地元のお店を11軒回って、「サイトにお店の広告を載せませんか?」って声をかけていきました。広告掲載料は3ヶ月1000円だったかな。お小遣いレベルですよね(笑)。私は企業に就職した経験がなくてビジネスがわからないので、値付けの常識も知らなかったんです。でもそうして頑張っているうちに、ママ友たちが「面白そうやね、手伝うよ!」って集まってきてくれて、少しずつ規模を広げていきました。

――そのうちに、だんだん利益が出るようになっていったんですね。

それが、赤字やったんです(笑)。2012年に開業届を出すついでに精算してみたら、70万円の赤字でしたね。なかなか儲からないなあ、みんなが喜んでくれるからまあいいか、とずっと思ってたけどやっぱりな、って(笑)。

専業主婦から起業、「夫のお店の手伝い」から開けたキャリア。50人のスタッフを抱える柳生久理子さんの挑戦

大阪府内の情報がぎゅっと集まっている「ドットコムおおさか」

「地元のいち消費者」がつくってるのが、強み

――ママたちが頑張ってつくりあげてきたサイトなんですね。

子連れでできる面白い仕事、というのがメリットです。地域情報を載せているサイトなので、実際にその地域に住んで生活しているいち消費者が、営業も広告制作もやるのがいちばん。お客さんの困りごとに対して、消費者目線で解決策を提案できるのが強みです。全然土地勘のない広告代理店の人に来られるより、お客さんも安心しますよね。

――お客さんからは、広告を載せたいという以外にどんなニーズがあるんですか?

よく言われるのは「チラシ配りに行きたいから、運動会や授業参観の日を教えてほしい」ですね。それからママたちの意見を聞きたいからモニターを集めてほしいとか、学資保険のタイアップ記事をつくってほしいとか、いろいろなお話をいただきます。

――広告の仕事の面白さは、どんなところにあるんでしょう?

興味のある業界や好きな分野について、深く知れることです。あとはほかの地域にも広がっていくこと。福島県の会津若松市や京都府の京丹後市から、地元の「.com」をつくりたいというご相談をもらって、現地に行ったりもしましたよ。

――ここまで大きく育った理由を教えてください!

大阪日日新聞社との出会いが大きかったです。続けるうちに、大阪府内のほかの区からも「.com」をつくりたいとお話をいただくようになって。他社と組んで広げていきたいなと思っていた矢先、取材先で一緒になることの多かった大阪日日新聞社と仕事するようになりました。大阪日日新聞社には、組織のことやビジネスのことをたくさん学ばせてもらって本当に感謝しています。

――大阪日日新聞社に教わったことで印象的だったのは、どんなことですか?

営業の楽しさですね。私はビジネス経験ゼロだったし、人にものを売るなんて正直苦手だったんです。でも大阪日日新聞社の方に「営業は人の困りごとを解決する仕事。儲けるためじゃなく、いい商品を世間に広めてみんなを幸せにするための仕事だ」と教えてもらって、一気に営業を好きになれたんです。

専業主婦から起業、「夫のお店の手伝い」から開けたキャリア。50人のスタッフを抱える柳生久理子さんの挑戦

柳生さんの本「夢を仕事にする方法」(週刊大阪日日新聞)出版記念の一枚。

経営も営業もマネジメントも「私流」

――50人ものスタッフさんをまとめるコツはありますか?

「週1で必要な時間帯だけ集まって、終わったらすぐ解散」です(笑)。子どもを遊ばせながら井戸端会議を延々やる、みたいな文化はありません。50人のスタッフはみんなバックグラウンドが多様で、不必要にベタベタしないドライさが肝かなと。

――女性が50人いると、ライフイベントによってメンバーの入れ替わりが多そうです。

毎年誰かしらが産休に入ってます(笑)。みんな出産ギリギリまで働いて、産後は早めに復帰してきますね。2,3カ月で復帰する人もいますよ。産休・育休の間の収入を確保するため、産休前に数カ月分の仕事を前倒しでやってもらい、あとは周りがサポートするよう工夫しています。こういう組織づくりも営業活動もマネジメントも、全部手探りで見つけた「自分流」です。

――ご自身も3人のママです。育児とキャリアの両立はハードですよね。

私には今20歳、13歳、6歳の子どもがいますが、23人目の出産のときは、ほぼ休むことなく働いてました(笑)。産院は個室をとって、PCを持ち込んで作業しました。私の仕事は、お客さんとの信頼関係、人間関係さえあればやれちゃうので。

――産院でお仕事ですか……!

赤ちゃんのうちはいいけど、歩き始めたらもう大変(笑)。落ち着いて打ち合わせもできなくなりましたね。最初は、子どもをよそに預けるのはかわいそうかな……と思っていたので、子どもが寝た後、夜に仕事をしてました。睡眠時間は123時間だったかな。でもそのうち、子どもと長い時間一緒にいることよりも、お母さんが毎日生き生きしてることのほうが大事やんって気づいて。私が疲れてストレスがたまったりイライラしたりしちゃうと、家族にも私自身にもよくないので、思い切って子どもは保育園に預けるようになりました。

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ママスタッフたちとクリスマスイベントの準備。子連れで働けるので、みんな安心!

不安がいっぱい…そんなママたちの力になりたい

――「子連れで働く環境をつくる」というビジョンは、その経験からきているんですか?

はい。周りのママ友の中には、周りに頼れる人が少なくてしんどそうな人も多いです。とくに子どもが1人目だと、不安がいっぱいあるし、ネットでいろいろ調べれば調べるほどますます怖くなる。フルタイムで働くワーママはママ友をつくること自体難しいし、公園デビューも怖いし(笑)。そういう人の力になりたいと思います。

――2008年、NPO法人を立ち上げられたのもそのつながりでしょうか。

そうです。母親の孤立を防ぐ「ママ友つくり会」をやっているNPOです。住所や年齢によってママたちをグループ分けして、仲良くなりやすいように工夫してイベントをやっています。メール登録者は、今では1000人を超えました。

――お忙しい中、キャリアとプライベートを両立させる秘訣を教えてください!

「やらないことを決める」です! 私は、平日は家事しないって決めていて、料理と洗濯は家族が、掃除はロボットがやってくれます。長男はもう成人しているので、バイト代を払えばしっかり手伝ってくれます(笑)。そうやって一生懸命働くうちに、家族も友達もみんな応援してくれるようになりますよ。

うちのスタッフには、最初は夫に働くことを反対されていた人もいます。稼げないわりに大変じゃん、って(笑)。でもだんだん、毎日にメリハリが生まれて楽しいし収入も上がるんだってわかってもらえます。夫婦で同じくらい稼ぐようになって、「家事育児は女性の仕事」みたいな性別役割分担から逃れられた、なんて声も聞きますね。

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「これやる!」って決めたら、意外とできる

――新聞社の仕事は、広告以外にどんなことをしているんですか?

「夢を仕事にする方法」という本をつくっています! 「子どもたちに夢を届ける」という趣旨で、24人の社長さんの半生をまとめている本です。おかげさまで好評で、先日第2弾ができあがったところです。

――将来の夢を教えてください。

まずは「.com」を全国に広げていきたいですね。出張で日本全国をまわれるくらいに(笑)。新聞は今、大阪市内で配っているんですが、西日本全体へ、そして全国に広げていきたいです。2030代の女性には「自分の人生は自分で決められる!」と知ってほしいです。あれやりたいな、こうなりたいな、じゃなくて「やる」「なる」と決めて行動しちゃう(笑)。そうすれば、意外と手が届くようになりますよ。

>柳生さんの本「夢を仕事にする方法」

柳生久理子(やぎゅうくりこ)●株式会社ドットコムホールディングス代表取締役。「子連れで働く社会を創る」を経営理念とし、19年にわたり地域ポータルサイトを運営。現在50人以上のママさんスタッフと大阪で広告やイベントなどの事業実施。株式会社週刊大阪日日新聞で記者件教育部長としても活動中。運営中の「ドットコムおおさか」はこちら。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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