最近、仕事を頑張りすぎて、なんだか燃え尽きちゃったかも……。がんばり屋さんのパラナビ読者には、こう感じたことがある人も多いのではないでしょうか。今日は、ライフコーチとして活躍する棚橋浩之さん(ひろ兄さん)に、バーンアウトの防止方法、燃え尽きてしまった後にうまくトンネルから抜け出す方法についてたっぷり教えてもらいました!
Contents
「もしかしてバーンアウトかも?」危険サイン2つ
――バーンアウトしやすい人としにくい人がいるそうですね。しやすい人の特徴はありますか?
一般的に、使命感や責任感が強い人、仕事熱心な人ほどバーンアウトしやすいです。頑張らなきゃいけないとか、結果を出さなきゃいけないと強く感じる人が多いですね。あとは、自分の感情を表に出すのが苦手な人、悩みや辛い思いを我慢しちゃう人が多いです。
――バーンアウトの原因は、いろんなところにありそうですね。
まさにそうです! バーンアウトの原因は、必ずしも個人の性格や素質だけじゃなく、組織や環境などいろんなものが複合的に重なり合うことがほとんどです。例えば育児や親の介護など身体的な負担が大きいものや、あまり慣れていない作業なども要因。それらが積み重なることで、バーンアウトにつながります。
――「こうなったら、もしかしてバーンアウトかも?」っていう危険サインはありますか?
バーンアウトの1つ前の段階を「バーニングアウト」といいますが、その中に2つのステップがあります。これらがまさに、危険サインです。
- 情緒的な消耗:何かを頑張っても成果が出なかったときに、悩んだり落ち込んだりすること。
- 脱人格化:自分を守ろうとして、ネガティブなことをすべて他人のせいにしてしまうこと。
――2つ目の「脱人格化」って、具体的にどういうことでしょうか?
仕事の意欲が薄れていい加減な態度をとったり、朝起きられなくなったり、無気力になったり、プライベートの予定をすっぽかしたりというのが代表的ですね。この段階になると、だんだん生活に影響が出てきます。
セルフケアも可能!ひろ兄さんおすすめのバーンアウト防止法
――メンタルヘルスは目に見えないので難しいですが、自分1人でできるケアもありますか?
日々のセルフケアはとても大事です。散歩やウォーキング、ストレッチをしたり、短時間でいいので昼寝をしたり、お風呂にちゃんと浸かったり、朝は瞑想をしたり、夜にはアロマを炊いたり。おいしいご飯を食べるのもそうですね。仕事にプライベートに忙しいパラナビ読者でも、一度ルーティンに組み込めれば、あまり無理なく続けられるんじゃないでしょうか。
――何をするとストレスが減るのか、自分のことをわかっていないといけませんね。
自己理解を深くして、環境に左右されない「自分軸」を持つことは大事ですね。自分が何がどうなるとどんな感情になるのか、大事にしている価値観は何なのか、などを改めて理解すると、居心地のいい生き方や働き方が見えてきます。それから、自分の弱さを認めることです。弱さをネガティブに考えるのではなく、そのまま受け止めてあげましょう。
――個人でできることもいろいろあるんですね! それから、組織としてメンバーのバーンアウトを防止する方法はありますか?
組織として、個人として、それぞれの防止策があります。まずは、組織として個人をどうサポートしていくかは日本社会が抱えている課題だと思います。「あれ?危ないかも」と思ったときに思い切って休みやすい環境をつくるとか、組織全体でカルチャーの共有をするとか、一人ひとりに合った目標設定をするとかがまずは考えられますね。
あとは、例えば新入社員や転職者とうまくコミュニケーションをとって慣れやすい環境をつくったり、仕事の成果を評価してケアにつなげたりといった工夫はぜひするべきでしょう。そうすることで、いわゆる「心理的安全性」が高まって、バーンアウト防止になります。
――目標をちゃんと立てることの大事さは、見過ごされがちですね。
短期的な「doing」(何をするか)の目標しか持っていない人は少し危険です。達成した瞬間に、自分は結局なにしたいんだっけ? そもそも何のためにやってるんだっけ? って、迷子になりがちだからです。お金を稼ぐという目標を立てて年収1000万円に到達したけど、それで結局私は何をしたいんだっけ? っていう。
そうじゃなく「being」(どうありたいか)の目標があれば、自分がどう生きていけばいいのか見失うことも少なくなるでしょう。自分がどうありたいかを考えて、言語化するのがその第一歩です。
人間関係は「居心地のよさファースト」がカギ
――それには、家族や友達やパートナーとの関係性も大事な気がします!
居心地がいいコミュニティに身を置くこと、自分が自然にポジティブな状態でいられるような人間関係を築くことはメンタルヘルスのうえでとても大事です。それから、趣味などを通じて、仕事とは違ったコミュニティを持つのも有効ですね。
――たくさんのコミュニティがあればいいというわけではありませんね。
そうですね。人づきあいのいい人にありがちですが、所属するコミュニティが多くなりすぎると、ただただ疲れます。僕たちの時間は有限なので、「居心地のよさファースト」で考えながら、無理せず人間関係を築いていきましょう。必ずしも、すべての人間関係に意味合いを持たせない「ゆるさ」も必要です。
――居心地のいい人間関係って、時期や自分の状態によっても違いそうです。
むしろ、違うことが自然です! すごく刺激的で、自分が成長できると思う環境にいたい日もあれば、何も具体的に得られるものがなくたって、無駄なことを楽しくだらだら話せる人間関係が心地いい日もありますよね。
――「ずっと仲良しでいようね」の呪縛を解こう! ということですね。
どんな相手だって、仲良くすることが義務になるとだんだん負担になっていきます。環境の変化によって関係性が変わるのは当然のこと。そもそもこれだけ変化が大きくて、どうなるかわからない世の中ですから、人間関係を固定的に考えるのはあまり合わないんじゃないでしょうか。しなやかに生きましょう!
バーンアウトしちゃったら「早く、たっぷり、休む」一択
――いろいろと工夫していても、バーンアウトになるときはなりそうです(笑)。いざなってしまったら、どうすればいいんでしょうか。
「たっぷり休む」一択です! できれば一定期間の長期休暇をとりましょう。同僚や後輩がバーンアウトになってしまったら、休暇をとったりカウンセリングを受けたりするように勧めてください。とにかく早く、バーンアウトの原因になった仕事から離れることが最優先です。
そもそもバーンアウトするくらい仕事を頑張る人は、環境的にまたは性格的に「休みたい!」って言い出せないことが多いです。だから、周りがいかに早く気づいてケアしてあげられるかが大事。なんとかしてあげようとして、中途半端にコンサルティング的なことをしちゃうのはよくありません。企業によっては、カウンセラーがいてメンタルケアをしてくれることもあるはずです。
――周りのケアが大事ですよね。
バーンアウト=マイナス、と考えがちですが、ケアを受けて乗り越えて、後になって振り返ってみると、いい経験になっていることも多いです。そのときはしんどくても、「この働き方は、私に合ってなかったな」「こういう生き方のほうがいいな」って、改めて気付けますよね。
そもそも、バーンアウトするくらいがむらしゃらに何かを頑張れるというのはすごいこと。必ず自分の糧(かて)になっているので、ポジティブに受け止めてほしいです。そして社会全体としては、そもそもバーンアウトという概念を知らない人もまだまだ多いようです。もっと広く知られるように、僕のようなコーチがしっかり広めていきたいです。
棚橋浩之(たなはしひろゆき)●関西学院大学( 体育会サッカー部)を卒業後、東証一部上場大手人材紹介会社にて4年半勤務。 約2000人のキャリアサポートと製造業を中心としたベンチャー〜大手企業の採用コンサルに従事。 ロンドン駐在にアサインされるも「やりたいこと」実現のため退職。 退職後、インタビュアーという肩書きで世界一周をしながら、各国で活躍する経営者、 子育てされているママさん、などの『人生』インタビュー、学生向けイベントを開催。 コロナの影響で日本へ一時帰国し、プロコーチとして活動。 (総有償セッション時間約450時間) パーソナルコーチングだけではなく、ふうふやカップル、チームに対して行うシステムコーチング(2人以上の関係性)、司会なども行う。