「世界最速で日経新聞を解説する男」、セカニチこと南祐貴さんに、気になるお金の疑問をぶつけるシリーズ、第4弾。今回のテーマは「ふるさと納税」です。やっているけど仕組みはよく知らない……という人から、毎年11月ごろからじっくり返礼品のチョイスを始める人、これまで腰が引けていたけど今年こそデビューしたい! と意気込んでいる人まで。ふるさと納税の何がどうお得なのか、気を付けるポイントはどこなのか、セカニチ節全開で解説します!
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年収103万円以上の人なら誰でも、お得な枠をもらえる神制度
南
そうなんです。「働くこと」をテーマに、会社選び、就職、副業、転職、起業についてお伝えしています。わかりやすく書きますので、ぜひ楽しみにしていてください!
さくら
世界最速で読みます! 今日は「ふるさと納税」について教えてください。私も数年前からやっていますが、実はあんまりちゃんと仕組みを理解していなくて……。税金が安くなるんですか?
南
ざっくり言うと「実質2000円の負担で、○万円分の返礼品をもらえる」という仕組みです。「○万円分」と「2000円」との差額の分だけ、ふるさと納税をした次の年に払う税金が安くなるというもの。返礼品は、「楽天ふるさと納税」「さとふる」「ふるさとチョイス」などの仲介サイト(ポータルサイト)から好きに選べますから、あれこれ見るのも楽しいですね。
さくら
正直、年収の高い人ほど得するシステムですよね?
南
そうです。でも年収200万円の人もお得になる制度ですよ。「○万円分」の数字は、年収や家族構成などによって異なります。おおまかには、年収1,000万円の人は約18万円、年収500万円の人は約6万円、年収300万の人は2〜3万円ほど。自分の枠がいくらなのかは、ふるさと納税の返礼品仲介サイトでかんたんに調べられますよ。1年に103万円以上の収入がある会社員なら、誰でも得するので、使わなきゃ損です!
さくら
セカニチさんは以前の記事で、つみたてNISAについて「ノールックでやるべき」と激推ししていましたよね。ふるさと納税も同じですか?
南
どちらもフル活用するべきです! 例えば年収が103万円以下で家族の扶養に入っている人や、学生さんにはあまりうまみがありません。そういう方は、ふるさと納税を「ご家族」に勧めてください。もちろん年収200万円以上の人は必ずやるべきお得な制度です。まずは自分の給与明細を見ること、そして税金に興味を持つこと。これがお金持ちになる第一歩です!
セカニチ流・後悔しない返礼品の選び方
さくら
毎年、どこの自治体も素敵な返礼品ばかりで、枠が100万円分あっても足りません! セカニチさんはどうやって選んでいますか?
南
僕は毎年、宮崎県「都城(みやこのじょう)市」にふるさと納税しています。宮崎牛がとにかくおいしいんですが、きっかけはおいしさではなく(笑)。3選中の池田宜永(たかひさ)市長の人柄と、「想いを持って自治体を改善し価値を上げていく」という政治理念に惹かれ、都城市を推したい! と思ったことでした。僕自身は都城市には何のゆかりもなく、旅行で行ったことすらないんですが(笑)、近いうちに訪れたいですね。
さくら
そういう、ストーリー性のある選び方って素敵ですね!
南
正しい努力をしている自治体の税収が増えるのは、いい民主主義。健全な努力をしている自治体に経済的メリットが還元されていくので、単に納税者が得する以上の意義があると思います! 推しを選んでお金を預けるという点で、ふるさと納税は株式投資に少し似ていますね。
さくら
豪華な返礼品で有名になる自治体も多いですよね。北海道のいくらやホタテ、福島県や山梨県の桃、シャインマスカットなどなど……。
南
フルーツはご褒美感、特別感があるので僕も好きです。傾向として、九州と北海道の自治体は強いです。フルーツなら夏~秋がピークで、12月だと遅いです。お早めに(笑)。特産品のバリエーションが多いうえ、肉・魚介・米など、グルメ系は目を引きますね。それから、返礼品のPRが上手だと思います。ふるさと納税の還元率(返礼品の商品価格÷ふるさと納税の価格)は3割以下と法律で決まっており、自治体はこのルールの中でどう魅力をアピールするかが大事になります。
偏った税収を、大都市から地方へ還元できるメリットも
さくら
返礼品を選ぶのに散々お世話になっているポータルサイトですが、「ポイント付与でお得感を煽りまくり!」な気がします。セカニチさんは、正直なところどう思いますか?
南
この話に限りませんが、煽りビジネスには必ず裏があります! セールをする理由といえば、在庫処分したいか、市場が必要以上に加熱しているからと相場が決まっています。そこを理解したうえで、本当にお得なのか?よく考えながら行動しましょう。さくらさんの質問に答えると、「ポイント付与キャンペーンは、あってもなくても気にしない!」です。
さくら
私はポイントに惑わされがちですが、心を強く持ちます! それからもう1つ気になっていることが。ふと、今住んでいる自治体への納税が減りすぎるとよくないのでは? と思うことがあります。もちろん私一人の納税額は微々たるものですが、たくさんの人がふるさと納税をしているわけで……本当に大丈夫なのかなと、たまに不安になります。
南
例えば東京都江東区に住んでいる人がふるさと納税をすると、江東区が本来受け取るべきだった税収が減ってしまうのでは? という意見ですよね。よくこの質問を受けるんですが、僕は、東京や大都市から地方の自治体に税収が流れる分にはOKだと考えています。ふるさと納税による東京都の減収は540億円ほどといわれますが、そもそも都の税収は約5兆円ありますから、影響はごく小さい。それよりも今、日本の人口は全体的に、大都市に集まっています。中でも東京一極集中が激しくて、自治体間の経済格差が激しくなっているんですよ。その結果、例えば起業したときの創業助成金や補助金も、東京都は手厚く地方は薄くなる。この偏りを正す、いわば格差是正という意味で、ふるさと納税で税収が地方に流れるのは歓迎されるべき現象だと思います。
さくら
なるほど。ふるさと納税は、納税者と自治体の双方にとってメリットがある「神制度」に聞こえますが、注意するべきことはありますか?
南
「つい欲張っちゃう現象」に気を付けてほしいですね。自分の枠をオーバーして多額のふるさと納税してしまうと、「自己負担2000円」というせっかくのメリットが消えてしまいます。計算して想定した枠の上限よりを少し下回るように、20%ほど余裕を持って終わらせるのがおすすめです。
自分の「冷凍庫と胃袋のキャパ」を把握しよう
さくら
「欲張り注意」は、物理的にも言えますよね。私はいつも冷凍ものの返礼品をいただきすぎて、冷凍庫のスペースを空けるのに苦労しています……。
南
冷凍庫パンパン問題は、欲張りさんのあるあるですね(笑)。12月31日に駆け込みでふるさと納税した分の返礼品が、1〜2月に続々届くうれしい悲鳴。とくに牛肉や魚介系は冷凍ものが多いはず。自分や家族で全部食べ切れるならOKですが、処理しきれないとせっかくの返礼品が食品ロスになるという最悪の事態になります。まずは、自分の冷凍庫と胃袋のキャパを把握してくださいね(笑)。もちろん、食品以外のものでも保管場所が必要になるのは同じですから、気をつけましょう。単純にスペースでいうと、食品よりも生活用品のほうが場所をとるような気がしています。
さくら
前回の「スマホ整理」記事でも、自分のキャパを知ることの大事さを教えてもらいました! 情報を上手に取捨選択し、お金を無駄にしないで済むための前提になるんですよね。
南
そうですね。自分の食べられる分、処理できる情報量、持てる雑貨の量などを正しく知っていないと、逆に損することすらあるんです。僕は、「キャパを見極めて、余分なものを捨てること」もっと言えば「捨てる勇気を持つこと」こそが、いちばん大事な投資だと思います。
さくら
ふるさと納税をきっかけに、自分にとって本当に必要なものを見極める力をつけようと思います! 今日はありがとうございました。
南祐貴(みなみ ゆうき)●Koru-workers株式会社 代表取締役。1989年 東京都調布市生まれ。2012年に大手広告代理店に入社、約6年勤めて、自由になるため退職・起業。クラウドファンディングなどで資金を集めて高輪ゲートウェイ駅近くに港区高輪で初のゲストハウス『Koru Takanawa Gateway』をオープン。同時に、経済や投資をわかりやすく解説する「#世界最速で日経新聞を解説する男(セカニチ)」を開始。生放送コミュニティ・オンライン学習サービスの「Schoo」では、国内最大級6200本の授業から「ベスト授業&ベスト先生」の2冠に輝く。本書が初の著書。各SNSで毎日情報発信。インスタグラムのフォロワーは2万人以上。
さくら