2022年4月から段階的に施行が始まった改正版男性育休法。前回は、その制度についてご紹介しましたが、「実際にどんな人が制度を活用しているの?」ということで、今回はトレンダーズ株式会社で執行役員を務める野中祥平さんにお話を聞きました。男性育休の課題感はもちろん、業務をマニュアル化する機会になるなど、実際に取得する過程でわかった野中さんの実体験とは?
Contents
男性育休の準備期間は仕組みづくりに最適
――野中さん自身、役員という立場での男性育休取得をどう考えていますか?
2つ意味があるなと思っています。1つは、社内のみんなの前例になれることですね。今後は男性の育休取得も当たり前になると思うので、うまく活用して僕が事例になれればいいなと思っています。既存の男性社員にというよりは、女性社員が「うちの役員も育休取ってたから、あなたも取ってね」とパートナーに言いやすくなるように、背中が見せられたらいいですね。
――社内で事例があると心強いですね。あと、もう1つは何でしょうか?
僕が育休を取得することによって、「職場の避難訓練」ができたと思っています。
――避難訓練? でしょうか?
はい。今年の1月に育休取得のことをチームメンバーに共有したのですが、産休に入るまで、約6カ月間の準備期間を使って、避難訓練のような感じで準備や業務整理をしました。例えば、事前に仕組み化できていなかったところを仕組み化するとか、野中依存になっていることをマニュアル化しようとか、仮に僕が事故でいなくなっても回るような体制にしておこうということです。
――まさに避難訓練ですね(笑)。事前の準備期間があれば、それぞれが本番に向けた動きをしようという意識が出てきますね。
そうですね。1カ月半なので、そんなに支障はないかなと思いつつも、現場判断などは、どんどんマネージャーに権限を移行したり、意思決定の方法や考え方もレクチャーして、もしもに備えた動きを6カ月準備してできるというのは、育休を取らなければやらなかったことだと思うので、いいきっかけになりました。
――育休取得の過程にもいいことがあるのは驚きです。実際、期間としてはどのくらい取得予定ですか?
今のところ、出産のタイミングで1カ月半、妻が仕事復帰するタイミングで2回目を取得する予定です。
――その間、「一切仕事はしない」など、ご自身で育休スタイルは決めていますか?
基本的にはお休みする予定です。ただ、ちょっと0にするのもなと思っていて、1週間に1度、Zoomができるタイムにして、相談ができるようにと考えています。
――その形なら、お互いの負担も少なそうです。
育休期間中、まったく仕事をしないのがいいという価値観も、育休を取らずに頑張るという価値観も僕の中にはなくて、フラットに考えて困っている人がいるから0にしないで少しだけ残しておくという感じです。ほかの人がどんなバランスで育休期間中に会社とやり取りしているかは、本当はもう少し事例が知りたいなという気はしています。
女性と違い、日常的に育休に触れる頻度が少なすぎる
――たしかに、男性育休の事例を詳しく聞ける機会ってあまりないですね。
まだ社内でもパパの参考事例が少ないですよね。実際に僕が聞いた方も、パートナーが専業主婦型だったので、共働き型の事例は情報として入手できていないですね。
――事例が身近には少ないのが現状ですよね。日本の男性の育休取得率が低い理由にもつながりそうです。
僕もこの立場になるまで、みんながどういう理由で育休を取得しているのか知らなかったし、育休を取って何が良かったのかという声も、動画などを観て生の声を聞くくらいの感じだったので、まだまだ浸透していないんだろうなと思いました。
僕自身は、あまりミーハーなタイプではなく、常に育休パパの日常をSNSから取得したりしているわけではないので、普通に生きていたら、男性の育休取得についての情報が入ってこないんです。そういう意味では、なんだかもったいないなと思います。
――確かに、女性と違って自分から情報収集しにいかないと難しそうですね。野中さんが調べていて参考になったものはありますか?
Kindleで男性育休を取得した人の体験記を読んだのと、最近育休をとったパパアナウンサー3人のインタビュー動画も参考になりました。パパアナウンサーが育休を取って良かったことを話す内容なのですが、ビジネス媒体に育休関連の法改正に伴って男性育休の特設コーナーが設けられていて、男性が見ている媒体にそういった情報が入ってくるのはいいなと思いますし、今後もやってほしいですね。
――女性の媒体では日常的に目にしますが、男性はその機会が極端に少なそうですね。
僕が日々の情報収集をするのは、NewsPicksやYouTubeなど、ビジネス界隈のインフルエンサーか経済媒体からなので、まだそういうところ経由でも男性育休についての情報はあまり見かけないし、芸能人ではない一般層の人がどういう育休を取っているのかは、さらに入って来ないですね。
夫婦の間に“変化する何か”があるのが楽しい
――情報収集する中で、実践しようと思ったことなどありますか?
産後うつ・クライシス防止ですね。産後は体力的にも辛いだろうし、まず妻が回復するまでは、炊事、洗濯、掃除などの家事で貢献しつつ、子どものお世話もしたいですね。産後に非協力的で、夫婦の仲が悪くなるのが怖いので……(笑)。できる限りのことはやりたいと思っています。
――そこの知識があるだけで、産後のパートナーの変化にも気づけるし、対応ができますよね。
僕も最近勉強して、そういう理由で取る人がいるんだな……とインプットしたからこそ言える感じで。最初はなんとなくくらいにしか思ってなかったので、インタビューの機会をいただけて、よりちゃんと考えることができましたね。
――いい機会になってよかったです(笑)。
よかったです。のほほんと突入するところでした(笑)。
――育休期間中の生活でやっておきたいことはありますか?
写真はたくさん撮っておきたいですね。あと、子育て中に得た気づきはビジネスに生かしたいなと思っています。赤ちゃんって自分の言葉が伝わらない存在だと思うので、僕自身いろいろ学んでどんどん成長するはずなので、何か気づきがあるといいなと。男性には誤解されていることも多いのですが、「育児休暇」ではなくあくまで「育児休業」なので、育児だけでもやることはたくさんあると覚悟しています。
――子育てへの意気込みを教えてください!
2人で、終わらない新規事業だねと話しています(笑)。夫婦で変化が好きなタイプなので、子どもの成長で変化の過程を一緒に楽しみたいなと思っています。
――新規事業(笑) ! さすが仕事大好きなお2人です。夫婦になると変化させていくのもなかなか難しいですもんね。
そうですね。一昨年、新しいマンションに住み始めたのですが、家探しや家具探しというイベントが終わって、一通り意思決定しきってしまったら、次に目指すものが無くて寂しいね……。となってしまって。気づいたら、翌日に猫が家に来て、そこから猫を育てる生活が始まりました(笑)。
――ロスからの猫ですね(笑)。 これからは、2人の共通の関心事がお子さんになりそうですね。
夫婦の間に変化していく何かがあるっていいなと思っています。猫がいる生活は、日常に刺激をくれるのですごくよかったですね。子どもも、どちらかが頑張って育てなきゃ! というより、一緒に成長を楽しみながら子育てできたらいいねと話しています。
野中祥平(のなかしょうへい)●野中祥平(のなかしょうへい) トレンダーズ株式会社 MimiTV Div.執行役員。美容マーケティング&美容メディアの領域で、500万フォロワーを獲得する「Mimi4_TV」事業統括を務める。慶応SFC時代に勉強本出版、6万部発行。化粧品検定1級、プロコーチの資格を保有。『今は常識ではないけど近い未来に常識になること』を創りたい人を応援することを信念としている。