前回の「浪費も100%楽しむ!投資インフルエンサー・ジェレミーさんに聞く『人が幸せを感じる仕組み』」で、「教育投資」についてもお話してくれた投資家インフルエンサーのジェレミーさん。今回は「教育」にフォーカスしてお話を伺うことに。すると、「努力の必要量」「努力のコスパ」など、パワーワードが続々登場。Instagramのストーリーで過去イチバズったという、ジェレミーさんが子どものために推したい「教育論」とは?
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若いときに知っておきたい努力の必要量
――前回のお話の中で、大学卒業の時点で大きな差がついてしまうというお話が出ました。あれを読んでショックを受けた読者もいるかもしれないと思っているのですが、社会人になってから勉強して取り戻すのは難しいのでしょうか?
出身大学によって生涯賃金に差が出るのは事実ですが、勉強をすることは難しいことではないと思います。座学という意味ではもちろん学生時代のほうがしていましたが、僕は社会人になってから年間200冊の本を読んでいて、OJTとでもいうのかな、仕事しながら学んでる感覚です。
むしろ、学生時代の勉強は社会に出て役に立たないものがほとんどだけど、社会人になってから得た知識のほうが、実践的な学びとして価値があるんじゃないかな。
――なるほど、それを聞いて安心しました!
でも社会に出てみて、もともと勉強する習慣がなかった人たちが多いことに驚きました。200冊とは言わないから、年間20冊くらいは本を読んだらいいのにな、と思います。でも、たぶんそれすらも無理な人がいるんですよね。なぜなら、土台となる“勉強をする習慣”が身につかなかった人が多いから。
僕が東大卒の人を好きな理由もここにあります。彼らは統計的に見れば、受験勉強に2000時間を費やすことができた人たち。こういう力って社会人になってから身につけようと思ったら、想像を絶する苦しさだと思うんですよね。勉強のしんどさや楽しさ、自分にとって必要な量は若いときに知っておいたほうがいいです。
――努力の必要量って、どうやって見極めるものなのでしょう?
例えば、夏休みに50冊本を読んだ人と10冊本を読んだ人だったら、実になっているかどうかは置いておいて、インプットされた量は50冊読んだ人のほうが多いですよね。さらに、50冊読んだ人は、“50冊読むのに自分がどれくらいの時間と労力を要するのか”もわかるんです。
これが努力の必要量を知ることに繋がります。そうすれば、自ずと自分がどれくらいの努力=勉強をしたら、どれくらいの結果が出るかも見極めやすくなるでしょ?
子どもが「努力のコスパ」を見極めるには習い事が◎
――そういう考えた方をしたことがなかったので目から鱗です……。でもたしかに、何かを習得するのにどれくらいの時間と労力が必要かを知っているのといないのとでは大きな差がありますね。
僕の場合は要領が悪いから、無駄な努力をしたくないと思っていたんです。多少しんどいのは我慢できるけど、それに見合った結果が欲しかった。だから、目的達成のために必要な装備や知識がどれくらいかを知ろうとしたんです。
そのためには、山登りに例えるなら、自分が登りたい山、登れそうな山、登ったことがある山をリストアップして、どこがいちばん努力のコスパがいいかを算定すればいいだけなんです。
――努力のコスパ、またパワーワードが出てきましたね。大人になってからであれば、ある程度は頭で考えられるようになると思うのですが、子どものうちにそういうものを自然に身につけさせるとしたらどんな方法があるのでしょう? パラナビ読者はママ世代も多いので、そこも気になります!
子どもには色々な習い事をさせるのがいいと思います。これは多くのことをできるようにするためではありません。自分は何が得意で何が苦手か、努力で結果が出るものと出にくいものは何かを経験するためです。競争社会は、残酷に順位が出てしまうもの。だからこそ、自分がどれだけ努力して、どれだけの結果が出るのかわかっていたほうが健康的ですよね。
努力の査定がうまくいったパターンとうまくいかなかったパターンを、学生のうちに経験しておく。僕も1位になれる領域もあれば、1位にも平均にすらなれない領域もあります。でも、これを知っていることこそが大事だと思うんです。
客観的立ち位置を理解すれば人に優しくなれる
――たしかに、知る機会は早いうちにあったほうがよいですね。
しかも、これってほかにもいいことがあるんですよ。こうした経験から、社会の中での客観的な自分自身の立ち位置も把握できるようになるんです。そんなものみんな当たり前にわかった気になっているかもしれませんが、案外わかってない人も多い。
パラナビの読者の方で「仕事も順調だけど、周りがキラキラしていて悩んでます」という方、いらっしゃいませんか? あなたのその悩み、客観的な視点が欠けています。ここに数字を用いて考えてください。
例えば、社会人4年目で年収450万円、年上の彼氏は年収600万円……ってなったら、もうこれは日本のトップ15%に入るくらい恵まれているんです。あなたも十分キラキラしてる(笑)。これは極端な例ですが、そういう客観的な立ち位置を知らないと、結果的に幸せな環境にいたとしても自分と狭い範囲の周りとを比較してしまう。それって無駄な不幸だと思うんですよね。
――そういう悩みを抱えている人って多いと思いますが、たしかに漠然とした悩みですね。数字を踏まえて考える、それだけでも随分と楽になりそうです。
どうしても身近な人と比較して「うらやましい」というネガティブな感情を持ってしまう人も多いと思いますが、それは狭い統計の話であって、世界で見たときにどうだっけ? など、比較するならもっと広い視野で比較したほうがいい。
反対に、これは人にやさしくなるためにも応用できるんですよ。自分の社会での立ち位置がわかってないと、一緒に仕事している人に「この人より自分のほうが優秀なんじゃないか?」といった邪念を持ってしまったりする。
でも自分と相手を客観的な数字で置き換えてみることができると、この分野では圧倒的に自分は適わないと理解することができ、懐疑心を持たずに仕事ができると思うんです。フェアな数字は自分にも課す。数字で見るって厳しいようだけど、人に優しくなれるものでもあるんです。
――何か特別な教育をしなくてはいけないのかという気がしていましたが、いろんな習い事から客観的な立ち位置を学ばせてあげるということなら、みなさんできそう&知らない間にやっていたんじゃないかと思います!
そうですね。そこの意識づけを学生時代から積み重ねていくと、大人になったときに当たり前のように、客観視する力が身についていて仕事にも生きてくるのだと思います。
僕自身、自分がそういう環境で育ててもらえたことにすごく感謝しているし、子どもにはいろんな成功体験も失敗体験もさせてあげて、より客観視できる力を育んであげることが大切だと思っています。
ジェレミー(Jeremy Tsang)●カリフォルニア生まれで東京育ち、UCLA卒、香港大学院卒。アメリカの大手投資ファンドに就職後、独立し民泊事業やUber Eatsの立ち上げ事業に参画。現在はシェアハウスや一棟貸しホテル、レンタルスペースを経営をする傍ら、2021年に実験的にリタイア。自身のインスタグラムでは、ストーリー配信で投資や不動産についての知見を惜しげもなく公開し、現在フォロワーは5.5万人。