Paranaviトップ ノウハウ 制度/法律 男性育休 【イベントレポ】産後パパ育休、ついにスタート!「後悔しない育休生活」を送るために知っておきたいこと

【イベントレポ】産後パパ育休、ついにスタート!「後悔しない育休生活」を送るために知っておきたいこと

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2022年10月、ついにスタートした「産後パパ育休」制度。男性育休が、これまでになく大きな注目を集めています。今回、「テクノロジーで子育てを変える」ミッションに基づき、育児にまつわるツールを提供しているファーストアセントの服部伴之さんと、2022年に1カ月半の育休を取得したトレンダーズの野中祥平、そしてパラナビ編集長の岡部のぞみによるオンラインセミナーを実施。男性育休の実態や、「後悔しない育休生活」を送るために必要なことを探りました。

ようやく浸透してきた男性育休、しかし意外な落とし穴も!

産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

男性育休の取得率は、2021年実績で13.97%。2025年までに取得率30%達成」という政府目標まではだいぶ距離がありますが、昔に比べるとずいぶん浸透してきたと感じます。2022年の法改正が後押しになるのではないかと期待しています。取得率だけでなく、取得日数も徐々に長くなっており、2018年度から21年度の3年間で「2週間〜1年未満」の割合が増えています。逆に、「2週間未満」の割合は、7割超から約5割へ、ぐっと減りました。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

10月に開始した「産後パパ育休」のポイントを改めて整理すると、「子どもが生まれて8週間以内に、4週間まで取得可能」「2回まで分けて取得可能」「少し働きながら取得できる」の3点です。また、同じく10月から育休制度もブラッシュアップされました。「出生後8週以内に2回まで分けて取得できるようになった」「1歳以降も比較的柔軟に取得できるようになった」の2が変更点です。男性育休が推進されることで、女性の働き方も柔軟に、さらには組織力の向上も見込まれますね。
男性育休の取得日数
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

分割取得によって、夫婦が交代で育休を取れるようになったのは大きなメリットです。双方がより柔軟な働き方を叶えられるようになり、妻のキャリアが断絶される悲劇を防ぐ効果があると思います。ただ、ここで1つ注意。父親が育休を取得すると、なんと父子関係にマイナスの影響が生じる可能性があると指摘されています。その理由は、父親が自分の能力に自信を喪失してしまったり、周りに仲間がいない孤独感や、職場に対する罪悪感を抱いてしまったりすること。孤独な環境で慣れない育児に奮闘した結果、否定的な感情が強くなってしまうケースがあるんですね。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

男性育休の取得はもちろん推進されるべきですが、無策では危険が伴うということですね。企業側は、単に「男性育休、取得してね!」と伝えるのではなく、従業員へケアが必要なのでしょう。

男性育休、成功のための「3つのポイント」

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

まだまだハードルがあるとはいえ、男性育休制度が新しくなった今、企業の大小を問わず取得する人も増えてきています。男性育休を成功させるために、どんなことをしておけばいいのでしょうか。
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

「心構えをする」「知識を得ておく」「使えるものは使う」3です。当社のような企業が育休導入セミナーを多数開催していますし、YouTubewebメディア、雑誌などでいろいろな知識を得られます。またスマホアプリやデバイスなど、使えるツールはどんどん使っていきましょう。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

パラナビでは、男性育休にまつわる記事を多数配信しています。野中さんの育休取得前後のレポートも2記事にわたり掲載しているので、ぜひご覧いただき、「男性育休のリアル」を感じとっていただけたらと思います。
産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

僕個人も、「心構えをする」「知識を得ておく」の重要性をすごく感じています。例えば、妻が出産する前に「産後ケア」という概念を知っていたこと。出産は、全治3カ月と同じくらいの怪我を負ったのと同じくらいの身体的負荷があるもの。本来なら1日中寝ていないといけない状態だと知っていたからこそ、家事や育児への意識を持てたと思います。
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

本当にそうで、妊娠初期から出産後まで、女性の体は大きく変化します。女性ホルモンが乱高下し、免疫システムが不安定に。普通に日常生活を送っているだけで、相当しんどい状況ですよね。初産婦は、産後2週間で約25%が鬱になっている可能性があるともいわれています。

「男性育休を取ると、昇進に響く」懸念

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

今回、視聴者の方からこんなご相談が寄せられています。こちらの方は、旦那さんに育休をとってもらうべきかというお悩みです。育休を数カ月取ることで評価基準が短くなり、昇進に響く懸念があるとのこと。

お悩み
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

産後パパ育休の開始により、男性がある程度仕事を続けながら育休を取れるようになりましたので、こうした懸念も少し減るのではないでしょうか。労使の同意が前提となりますが、魅力的な会社にしていくためには不可欠なこと。ぜひ会社側にも、このメリットを理解してもらうといいと思います。
産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

僕個人の体験が参考になれば……。当社、トレンダーズは78割が女性で、さらに2030代のメンバーが多いという環境。リモートワークをはじめ多様な働き方ができる職場です。その中で僕は今、執行役員として約40人のチームを束ねる立場。育休を取る半年前から、チームメンバーや上司に相談して、準備を進めていきました。ポイントとしては3つあります。
・これを機に、仕事の仕組み化を進めた
育休中は週1で重要なMTGにのみ出席するなど、育児に支障のないやり方を探った
・結論、事前準備を行い協力体制を築ければ、12カ月の不在は問題なく乗り越えられる
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

夫婦で一緒に男性育休の取得事例を見て、「こういう風に工夫しよう」と相談できるといいですよね。

「取るだけ育休」が蔓延している実態

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

育休取得率は9年連続で上昇中。でも、育休中の夫の家事・育児時間が1日のうち「3時間以下」だったと答えた人は、2019年時点で47.4%、2022年で44.5%と微減にとどまりました。なんとも残念な結果ですね。

産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

まさにこれが「取るだけ育休」といわれるゆえんです。ただ、この調査に回答しているのは母親。父親はもっとやっている“つもり”なのかもしれません。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

夫はしっかり頑張っているつもりでも、妻には届いていない……そんな実情があるのかもしれませんね。

 

産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

また、「育児休暇」という言葉のとおり「休暇」をイメージしていると、まるでゆっくり休めるかのように勘違いしてしまう可能性があります。先日、東京都でも育児休業の愛称として「育業」という名称が採用されたと発表していました。それくらいのことをしないと、意識は変わらないかもしれません。
産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

かくいう僕も「育休で一定期間仕事から離れるから、何かまとまったインプットをしたいな」とか「新しいアイデアが生まれて、仕事に生かせるかな」と思っていました。でも、実際に子どもが生まれてからは、ひたすら育児や家事に手を動かす日々。とてもじゃないけどそんな余裕はなく、本を読む暇すらありませんでした。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

育児中はずっと、何かしらで両手がふさがっているので(笑)。せいぜいドラマを細切れで見たり、動画を見たり、受動的なことをするのが精一杯ですね。私もTverやNetflixをを見るか、Kindleで本を読むくらいしかできませんでした。

数字やデータなど、客観的な事実をもとに理解しよう

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

野中さんが、育休中に気をつけていたことはありますか?
産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

僕がとくに気をつけていたのは、「妻に、どれだけ連続の睡眠をプレゼントできるか」。夜中の3時、朝方6時のミルクは僕が担当して、睡眠時間をとって体力回復してもらおうと考えました。夫婦で交代シフト制を組んで、僕も6時間は寝られるようにしていました。
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

当社が提供している育児記録アプリ「パパっと育児」では、夜泣きの頻度をもとに「夜泣きアラート」を出しています。わが子が寝かしつけや夜泣きがひどいと知ると、約6割の母親が父親に知らせているとわかりました。そのうち5割、つまり全体の3割の父親は、寝かしつけを代わるようになったり、夜泣きのときにミルクをつくってくれたりと、具体的な行動変容がみられます。

パパっと育児

子どもの育児記録や泣き声解析ができるアプリ。 出典:パパっと育児

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

数字やファクトは説得力がありますね。いずれにしても、父親の行動が変わるのは、母親にとっても夫婦関係の維持にとっても、大きなメリットがあると思います。

産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

ちなみに僕は第1子が夜泣きをしても、妻に任せっきりにしていました。今考えると本当にバカだなと思います。第2子のときは夜泣きの対応は僕がするぞ! と意気込んでいました。しかし、幸運にも(?)よく寝てくれたので、挽回のチャンスは訪れず……。

産後の妻は、夫への気持ちが冷え込みがち

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

産後、夫への気持ちが冷え込む妻は多いようです。理由もさまざまで、「産後の辛さに寄り添ってくれない」「育児も家事も全部、妻任せ」「夫だけ生活が変わらない」「家事や育児へ『指示待ちスタンス』にうんざりした」「1人の女性として接してくれない」といった切実なものばかり。お2人は、夫婦間で不満が募ることはありませんでしたか?

産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

うちは子どもが生まれる前からずっと、週に1度、1時間半ほど2人で散歩する習慣があります。出産や育児についても、僕より妻のほうがはるかにたくさん情報収集しているので、それをキャッチアップする時間に充てて、妻の気持ちや要望を汲み取るようにしています。散歩の習慣は今でも続けていますし、やっていて本当によかったです。でも、調子に乗らないようにしようと思います(笑)。
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

僕は第1子が生まれた当時、産後うつという言葉も知りませんでした。産後、妻の様子や言動が少し変わったときも「あれ? なんで?」と不思議に思っていたくらい。妊娠・出産・育児について勉強して初めて、あの頃の妻の気持ちを想像できるようになりました。無知って怖いと、今になってつくづく思いますし、まるで役に立たないダメな夫だったなと反省しかありません。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

将来にかけて夫への愛情が回復していくか、一生低迷したままになるか。その分岐点が「出産直後」ですね。一定期間仕事を休んでも、いい関係性を築いていくべきでは? と思います。

情報収集しつつ、目の前にいるパートナーに寄り添うことが最優先

産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

男性にはどうしてもイメージしにくい育児。どうやって情報収集しましたか?
産後パパ育休・男性育休セミナー

服部

僕はもともと研究者でしたので、エビデンスが示されている文献や書籍を使って勉強しました。でもそこから得られるのは一般論。あくまでも、目の前にいるパートナーに寄り添うことが大事だと思います。
産後パパ育休・男性育休セミナー

野中

僕は、育児本とYouTubeをフル活用しました。事例を見るのもすごく参考になります。ミルクのあげ方とかげっぷのさせかた、お風呂の入れ方など動きで学びたいものはYouTubeで見て学びました。男性はどうしても具体的なイメージを持ちにくいので、ドラマや動画などとっつきやすいコンテンツを切り口にするといいでしょう。
産後パパ育休・男性育休セミナー

岡部

出産は一筋縄ではいきませんから、まずは、いろんな事態が想定されることを共有するところから始めてみましょう。個人的には「コウノドリ」や「透明なゆりかご」などの妊娠・出産にまつわるドラマを夫婦で一緒に見るのも、すごくいい勉強になると思います。お2人とも、どうもありがとうございました!

服部 伴之(はっとり ともゆき)●株式会社ファーストアセント代表取締役CEO。大学院修了後、株式会社東芝で研究者として従事。その後IT業界へ転身。ベンチャー企業CTO、技術責任者などを経て2012年に「テクノロジーで子育てを変える」をミッションに掲げる、ベビーテックベンチャー株式会社ファーストアセントを創業。法人向け福利厚生サービス「ベビケアプラスForBusiness」をスタートし、産休・育休中の社員をはじめ、従業員全員に対する企業側の働きやすい環境づくりへの取り組みをサポートする。


野中 祥平(のなか しょうへい)●トレンダーズ株式会社 MimiTV Div.執行役員。美容マーケティング&美容メディアの領域で、500万フォロワーを獲得する「Mimi4_TV」事業統括を務める。慶応SFC時代に勉強本出版、6万部発行。化粧品検定1級、プロコーチの資格を保有。『今は常識ではないけど近い未来に常識になること』を創りたい人を応援することを信念としている。2022年春に1カ月半の育休を取得。トレンダーズ株式会社HP

 

岡部 のぞみ(おかべ のぞみ)●パラナビ編集長。女性週刊誌・月刊誌の編集、創刊を経験後、紙媒体だけでなくWEBディレクター、読者コミュニティの企画運営などを担当。2016年にはライフスタイル動画マガジンを立ち上げ、編集長を務める。現在は出版社で広告の仕事に携わりながら、個人としても、WEBメディアでアドバイザーや企画編集としてパラレルキャリアを実践。「女性×働き方」の多様性のあり方を発信したいとの気持ちから、「パラナビ」を企画・運営。2021年に出産し、1児の母。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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