2022年12月、東京都文京区にある株式会社講談社の本社ビル。都心の夜景を一望できる26階のレセプションルームで、「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞(CCJA)」の授賞式が開かれました。これは、社会貢献に寄与している女性を讃えようと、フィッシュファミリー財団が毎年実施しているイベント。コロナ禍で3年ぶりのオフライン開催となった今回、177名の中から選ばれた受賞者5名をご紹介します。
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フィッシュ東光厚子さん「社会をよくするため、努力を惜しまない女性たちに光を当てたい」
イベント冒頭、フィッシュ・ファミリー財団の理事であるフィッシュ・東光・厚子さんからのビデオメッセージが。
「『チャンピオン・オブ・チェンジ賞(Champion of Change for Asia American & Pacific Islanders)』は、2013年に、アメリカのオバマ大統領(当時)が社会貢献に寄与している環太平洋アジア地区の女性を讃えようと創設した賞です。私は光栄なことに、2013年に受賞者の一人に選んでいただきました。日本にも、さまざまな社会問題の解決を目指して活動している女性たちがいます。世界をよりよくしていくために努力を惜しまない姿勢に敬意を表し、光を当て、その存在を広めたい。そう考えて、2017年にCCJAを創設しました。この5年で賛同者や協賛企業が増えました。このことを心強く、うれしく思っています」
桂木 祥子さん「LGBTQの人が社会資源を利用しにくい不平等を解消したい」
私は2003年、LGBTQと女性のためのセンターQWRC(クオーク)を創設しました。私自身がバイセクシュアルであることが背景にあります。14歳で同性と交際し、その後も男性と付き合ったり、女性と暮らしたり、子どもを産んでシングルマザーになったりとさまざまな経験をしてきました。その中で感じたのが、「日本社会を変えたい、変える必要がある」ということです。
LGBTQには、社会の支援制度がうまく届かないケースが多々あります。例えば、レイプされても被害と受け止められず、見当違いのサポートを受けてしまうなど。LGBTQとそれ以外の人で、社会資源の活用状況に大きな差が出てしまっている状況はとてもいびつだと考え、QWRCを作りました。LGBTQや障害者といったマイノリティ同士が『顔の見えるつながり』を持てる環境を作ることで、1人ひとりがもっと自分を大切に生きていきやすくなると思ったんです。18年間、精神科のソーシャルワーカーとして活動してきましたが、2022年からはQWRCの活動としてLGBTQや障害者、家を失いかけている人たち、DVや性被害に遭った人々のための支援を専従で行っています。
財津三千代さん「DV被害者を救済したい。誰もが安心して暮らせる社会へ」
私は、友達をDVで亡くした経験から、3人の友人と一緒に民間シェルター「ハートスペースM」を立ち上げました。DVの被害者が助けを求め逃げ込む先だけでなく、新しい人生を歩んでいく場所を作りたいと決意したのが始まりです。ビルの1室を借りてダンボールを敷き詰め、逃げてきたDV被害者を迎え入れることから始めました。実は、私の母もDV被害者の1人。私は、過酷な環境に耐えながら仕事と育児をやり遂げた母のことを、心から誇りに思っています。
最近ようやく、DVに関する法改正が協議され始めました。それでもDV被害が減らないのは、DVに関する本質的な理解がいっこうに進んでいないからです。特に社会的支援や行政手続きの面は、いまだに不便なことだらけ。私たちは15年前から、宮崎市内の全中学校・高校で、DVについて正しく理解してもらうためのイベントをしてきました。今後も、DV被害者救済に向けた壁を取り除く活動をしていきます。安全に暮らすことは「奇跡」ではなくて「当然の権利」。そして1人ひとりの存在こそが奇跡なのだと伝えながら活動を続けていきたいと思います。
野間麻子さん「足を失った女性たちの不安や孤独に寄り添いたい」
女性義足ユーザーコミュニティ「ハイヒール・フラミンゴ」の代表をしています。ハイヒール・フラミンゴは、自身も義足だった元共同代表・髙木庸子が2018年6月に創設した団体。足を失った女性の喪失感や不安、孤独に寄り添い、アイデンティティや自分らしさを強く持って生きていけるよう、当事者同士がつながるコミュニティを作りたいという思いから始まりました。創設から4年半が経ち、ありがたいことに、参加者・協賛者は20倍以上に増えました。
ハイヒール・フラミンゴというネーミングは、「義足でもオシャレを諦めない!」という思いと、片足でもピンと立つフラミンゴを掛け合わせました。実際に参加者のみなさんは、ハイヒール・フラミンゴで仲間ができることを心から喜び、元気を取り戻していきます。その姿を見ていると、コミュニティの素晴らしさ、あたたかさをつくづく感じます。開始当初は少数精鋭のメンバーでしたが、より多くの仲間が集まったことで強さを増し、より遠くまで行けるようになってきました。これからも、細く長く活動し続けていきたいと思います。
三上麗さん「性について、明るく・楽しく・ポップに学べるように」
私は「READY BOX」という団体を立ち上げ、性教育を身近にするための啓発活動を行っています。例えばカジュアルな性教育の機会を作ろうと、「はじめての生理準備BOX」を寄付、販売するためのプロジェクトを立ち上げ、これまでに300箱以上を届けてきました。2020年に任意団体としてスタートしたREADY BOXですが、2021年には一般社団法人READYBOXとしてリスタートしました。
私が目指しているのは、性被害のない社会。そのためには、性教育を“リスク回避のためのもの”というだけでなく“1人ひとりが自分らしく生きるための学び”として、よりポジティブなものであることを社会に伝えていく必要があると思っています。そのため、活動においては「どうしたら子供たちがわくわくしながら学べるか?」「教える大人たちの負担を軽減し、いい意味で簡単に教育できるか?」を念頭においています。教材も、明るさや楽しさを重視。ポップな世界観で生理の話を伝えるように教材の見た目を工夫したり、性をテーマにしたカラフルな新聞を作ったりと工夫しています。
大賞受賞!光本歩さん「家庭環境に悩む子どもたちの光になりたい」
大賞をいただき、ありがとうございます! 私は、 家庭環境によって夢や希望を持てなくなっている子どもたちの拠り所になりたいと思い、2016年3月に「ウィーズ」を設立しました。これまで4,000名を超える子どもからの相談を受けており、また親への研修も行ってきました。
私が14歳の時、両親が離婚しました。思春期だった私は自暴自棄になり、荒れた生活をしていました。あの頃の私のような、家に居場所のない子、親が不仲で嫌な思いをしたり、家族から暴力を受けたりしている子たちがたくさんいます。そうした子の光になりたい思いで活動しています。
スタッフと2人で始めた活動ですが、私と同じく家庭環境に悩んだ経験を持つメンバーが仲間になってくれて、今では70名近くのスタッフがいます。私が目指すのは、ウィーズのような団体が必要ない社会。子どもたちには、今どれだけ家庭環境に悩み絶望していても、必ず未来を切り開くことができるんだと伝えながら、活動していきます。
より生きやすい社会を目指して、私たちが日々できること
大賞の発表に続き第2部では、パネルディスカッションが行われました。受賞者の5名に、2つの質問に答えていただきました。
2023年、それぞれが目指すもの
ーー2023年に挑戦したいことはありますか?
野間麻子さん
財津三千代さん
DV被害者のシェルターを、利用者たちが自ら管理し、自立するための施設としてもっと充実させていきたいです。私が活動している宮崎県は、自殺死亡率が高いことが課題になっています。「死にたい」と思ったときに、相談できる先があまりないのが事実。少しでも課題解決の役に立てたらと思っています。すべての女性が心地いい安全な居場所を手に入れられる環境作りのために、勇気を出して頑張っていきます!
桂木祥子さん
光本歩さん
自分の経験は、必ず誰かの役に立つ!ゆるい協力者になろう
ーーアクションを起こすことだけでなく、周りに「行動を喚起する」ことも重要です。私たちが日々、具体的にできるアクションはどんなことでしょうか?
光本歩さん
野間麻子さん
三上麗さん
桂木祥子さん
財津三千代さん
「自ら決断する人」を応援し続けてきたFRaU
FRaU webの編集長、新町真弓です。2022年6月、FRaU事業部長も拝命するに当たり1991年のFRaU創刊号をひもといてみたところ「結婚する?しない?」という大見出しが目に飛び込んできました。当たり前ですが、結婚するかしないか、誰とするか、これらの選択権はすべて「私たち自身」にあります。自分の人生を自ら決断する人を後押しし、支えてきた媒体がFRaUです。
先日、子どもたちに「2030年に創造したい未来」をテーマとしたSDGsのプレゼンをしてもらう「FRaU SDGs edu こどもプレゼン・コンテスト2022」を実施しました。その時感じたのは、子どもたちが自分自身の経験をもとに「このままだとまずいな、なんとかしなきゃ」と問題意識を持ち、具体的な施策を考えているという心強さです。今日の授賞式でも、同じ思いが胸に迫りました。
受賞された5名の方々のことを世間に伝え、「あなたの頑張りを、見ている人がいるよ」と伝えることにも大きな意義があります。「あなたってすごいね!」「私と一緒にやろうよ」という声は、活動を続けるに当たってすごく大きな支えになります。今日の表彰式もその1つ。こうして関わることができた幸運に感謝しています。
誰かを褒めるって、とても豊かなこと
ライター・さくらもえ
三上麗さん