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2児のママで転勤族。ワーケーションで築き上げた「場所に縛られない」働き方

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長崎在住でライターをしながら、一般社団法人日本ワーケーション協会の理事や全員が複業の会社「合同会社 Hokkaido Design Code」の執行社員など複数の組織で幅広く活躍する古地優菜さん。5歳4歳の2児のママでもあり、転勤の多いパートナーに合わせて日本各地を転々としながら働いています。だからこそ、築き上げることができたという「時間や場所にとらわれない働き方」について聞きました。

うつになって退職、帯同していった釧路での出会い

 ――長崎在住でありながら、北海道の会社に所属しているなど地域を越えて幅広く活躍していますが、こういった働き方はいつ頃から始めたのでしょうか。

フリーランスとしての出発点は、大学を出てから4年間ほど勤めたメーカーをうつになって辞めたところからでした。営業からマーケティングまでいろいろな体験を積んで、楽しく働いていたつもりだったんですが、頑張りすぎていたみたいです。東京に転勤した折に、もうこのまま続けるのは無理だと判断して退社してしまい、その後のキャリアは多岐にわたっています。

古地優菜さんキャリア表

古地さんが取材で見せてくれたキャリア年表

――こんな風にわかりやすく整理されたプレゼンテーションボードを用意されているところも古地さんがパラレルにお仕事できる秘訣ですね。 

これを見ていただけると「転勤でどこに行ってもキャリアを築けるように」といろいろやってきたのがわかりやすいかなと思って。まず、うつになって会社を辞めたものの、やはり働いていたいなと思ったところからフリーとしてのキャリアをスタートしました。 

当時、ちょうど日本でもクラウドソーシングが生まれてきた頃で、自分もチャレンジしてみようと思ったのがライターになったきっかけです。忘れもしない最初のお仕事は、チェス販売会社のブログを1本50円で書くというものでした。

続けているうちに、個別に依頼される仕事も増えてきて軌道に乗ってきたところに、夫の転勤に帯同して釧路に行くことになりました。釧路に引っ越した後、たまたま地域の街づくりセミナーに行ったところ、その後のステップにつながるキャリアコンサルタントの女性と出会ったんです。

彼女は「まちづくりキャリアカウンセラー」と名乗る人で、釧路をはじめとした、仕事を見つけるのに苦労するような地方で、どうやって女性が自分らしく働けるかを考えている人でした。その出会いが、地方における女性のキャリアや自由な働き方を考えるきっかけになりました。ちょうど出産する1ヶ月前のことでした。

 ――その人との出会いが、ワーケーションや地域で働くことに関わるお仕事のきっかけになったのですね。

出産のために奈良に里帰りをした後、釧路に戻り、地域のために活動し始めました。そこで、自分がやっているクラウドソーシングでの働き方が、働く場のない女性にとってはいいモデルケースになっているのではないかと気づいたんです。まずはできることから発信してみようと女性3人で立ち上げた会社が「Hokkaido Design Code」です。 

――Hokkaido Design Codeではどのようなことに取り組んでいるのですか?

「くしろはてな」というサイトでの情報発信をしていました。釧路は、製紙業、炭鉱、漁業の3つの業で成り立っていた街でしたが、いずれも衰退しています。そのせいか、街の人は「釧路には何もない」といいます。ですが、そんなことはないし、もっと釧路の魅力を見つけて発信していこうということで作りました。例えば、真夏でも気温は23度ぐらいで過ごしやすいこと、植林は白樺が多くスギ花粉がほとんど飛ばないこと……など意外と知られていない魅力がたくさんあります。実は関西からの短期移住者や60代以上のリピーターも多いんです。

 Hokkaido Design Codeは3人とも複業です。1人はIT関連事業をしていて地域クラウド交流会をやったり地域の子どもにITを教えていたり、もう一人はパン屋さんですが人脈が広く、地域のイベントを開催したりしています。2022年9月からは「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」という施設の2階にある「港まちベース 946BANYA」という交流拠点の運営を行って、すでに2000人ぐらい来場しています。

「どこでも仕事ができる」と「地域に繋がる仕事」は両立できる

――釧路からパートナーの転勤で長崎に移られてから、今のお仕事である日本ワーケーション協会や長崎・新しい暮らし方会議の立ち上げをしたんでしょうか?

 夫は出張が多い仕事で、次女出産以降、長崎に来るまではワンオペ状態だったんです。仕事と育児の両立は大変な中でも、自分が自分でいられる時間の大切さを感じていたのでライター業は継続していました。そうこうしているうちに2020年4月に転勤で長崎に来て、ホテルや旅のサブスク「HafH(ハフ)」の創設者であり、「長崎・新たな暮らし方会議」共同代表の大瀬良亮さんとオンライン飲み会で出会ったんです。 

日本ワーケーション協会の代表である入江真太郎さんとは釧路でお会いしたことがあったというご縁です。「どこにいても仕事できる」というコンセプトに共鳴して入江さんらと一緒に2020年7月に日本ワーケーション協会を設立しました。事業の親和性が高いということで、大瀬良さんにも顧問になってもらったんです。

古地優菜さん

東京・大手町のシェアスペース「3×3 Lab Future」にて開催した「長崎友輪家」のオフ会

 同じく「どこにいても仕事できる」というコンセプトでLINE WORKSのアンバサダーにもなりました。一方で、長崎に住んで、雲仙や大村などの自治体に繋がりもできて「自治体活性化のための情報共有や横の繋がりがほしい」と思いはじめて、大瀬良さんと「長崎・新たな暮らし方会議」を2022年2月に設立。3月には長崎県と連携協定を結び、長崎県内の「人と暮らし」の魅力を発信していく場を作ることになり、11月に長崎県初のオンラインコミュニティ「長崎友輪家(ながさきゆーりんちー)」を立ち上げました。 

――「どこでもできる仕事」というのと「地域と繋がる仕事」というのは、一見矛盾するような気もしますね。

インターネットでできる仕事はどこでもできるという利点はあるものの、人と会わないことに物足りなさも感じていたんです。自分の住んでいる地域のことをまったく知らず、それに対して不満もないまま1年半釧路で過ごしているうちに、せっかく住んでいるのにもったいない気もしてきて……。それで地域の街づくりセミナーに行っていろんな人に会ううちに、Hokkaido Desingn Codeのような地域に根ざした会社があったほうがよいかなと思えてきたんです。

今は仕事の稼働割合でいうと、ライターと長崎友輪家と日本ワーケーション協会がほぼ3分の1ずつ、あと少しの割合でLINE WORKS アンバサダーやもくもく会、Hokkaido Desingn Codeをやっていますが、それぞれがライターをやる上での企画のネタになったり、仕事のきっかけになったりと関連して相乗効果を生んでいます。

2児の母として、子どもにふるさとを作ってあげたい

 ――育児との両立はどうされていますか?

もともと、9時5時で働くのは合わないなということで始めたフリーランスライターですが、これは自分にとってどこでも働ける新しい生き方へのチャレンジでした。1人目のときは出産の2ヶ月前から仕事を絞って、産後3ヶ月から再スタートしましたが、産休というよりクライアントと相談しながら仕事をコントロールしていた感じです。2人目は、日本の保育の仕組みの問題で、産後2ヶ月で仕事に復帰しないと上の子が保育園を追い出されるという状況で、1ヶ月検診が終わってすぐ仕事に戻るというハードぶり。長崎に来てから、夫はコロナの影響で出張がなくなったのですが、逆に今は自分のほうが出張が多いので、協力してもらっています。 

古地優菜さん

福井県のワーケーションレポートでは、授業の一環としてワーケーションを学んでいる地元の高校生も参加。

子どもができて思うのは、全国転々としている中でも、できるだけ帰る場所を作ってあげたいということですね。釧路でも、子どもを地域との交流に連れていったりと、より地域との結びつきを考えるようになったというのはあります。 

――地域との結びつきでふるさとを作るっていいですね。そこから今後の事業にもつながっていくんでしょうか?

2つあって、1つは「地域と子どもたちを結ぶ」ということです。日本ワーケーション協会では、徳島県でデュアルエデュケーションのためのプラットフォーム「ミライの学校」を設立した(株)あわえさんとパートナーシップを結び、ワーケーション先で子ども達が学校に通えるような仕組みづくりに取り組んでいます。

もう1つは地域と地域を結ぶ」ということで、まずは長崎と釧路を結びつけるということをしたいですね。違う地域同士でも、より多くの人にそこを訪れるモチベーションを協力して作り上げることもできると思うんです。地域のライターネットワークを作って、地域の仕事を地域のライターとやって、情報交換で知識量をあげていけるようにしたいですね。

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小野アムスデン道子
Writer 小野アムスデン道子

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