2024年11月、女性の力で誰もが安心して平等に暮らせる豊かな社会をめざし、勇気をもって行動を起こしている「草の根の女性リーダー」に贈られるアワード「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞(CCJA)」の授賞式が開かれました。これは、社会貢献に寄与している女性を讃えようと、フィッシュファミリー財団が毎年実施しているイベントです。今年は、同賞が設立された2017年から協賛しているダウ・ケミカル日本株式会社のオフィスで開催されました。
Contents
2024年度の「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞(CCJA)」、応募総数は過去最多の212名。今回も北海道から沖縄まで全国各地から応募が寄せられました。この賞はすべて他薦というところも特徴です。まずは選ばれた5名の入賞者の発表。続いて、その中から大賞受賞者が発表されました。入賞者5名がそれぞれどのような分野で自らの道を切り拓いてきたのかを簡単に紹介します。
病気のある人が国境を越えてもその人らしく生きていける社会へ
1人目は、大阪で活動する特定非営利活動法人CHARM(Center for Health and Rights of Migrants)を運営する青木理恵子さん。CHARMでは、言語も文化も違う外国籍の住民が健康に暮らせるように、日本の医療や保険にアクセスしやすくするためにピア(仲間)サポートなどの支援を行っています。2002年に設立された背景には、外国籍のHIV患者が医療機関に運ばれたときに、在留資格もなく、高額な医療費を払える能力もなく、帰国を余儀なくされてしまったという出来事がありました。授賞式で、青木さんは目指す社会について以下のようにコメントしました。
「CHARMでは、病気のある人が国境を越えてもその人らしく生きていけるために、多言語の医療情報、医療通訳の充実を目指して働きかけています。家族を支えるために、遠くから海を渡って日本に働きに来た人たちの中には、日本の性風俗産業に従事せざるを得なかった人もいます。そういった人達が、病院にかかって初めてHIVのことを知り、誰にも言えない、自分の家族にも言えないという状況に陥ってしまう方も少なくありません。
そういった誰ともつながることのできない人達も、CHARMが組織した女性の集まりに来てもらうと、こんなに永く生きている人たちがいるんだということを知って勇気づけられると言ってくれます。中には、介護の資格をとったり、新たな会社に就職したりして仕事をする人もいます。社会の中にはいろいろな壁があって分断があります。その分断を超えていくためには、人と人とが出会い、力を得ることが必要だと私達は考えています」
子どもと家族を支援して虐待をなくす
2人目は、栃木で活動するNPO法人子どもの育ちを支える会さくらネット小山の高橋弘美さん。「子どもの居場所」を拠点に、虐待・貧困・不登校・障害・外国籍など様々な困難を抱えた子どもと家族に実質的な支援を提供する活動を続けています。「2番目のお家」という位置づけで、宿題や食事、入浴や洗濯等のほか、挨拶、言葉遣いなども教える「おひさま」事業のほか、子どもや保護者を対象とした相談活動や調理活動、無料の学習支援を定期的に開催しています。
在日ブラジル人の相互扶助の場をつくる
3人目の入賞者は、太陽のような明るい笑顔が印象的な中田ケンコさん。滋賀県にあるブラジル学校サンタナ学園の校長をしています。中田さんは1992年に来日した際、在日ブラジル人たちの子どもたちが教育を受けれる環境が整っていなかったため、学校に行かず家にいるという状態に衝撃を受け、再来日して1998年にサンタナ学園を開校しました。最初は3名の子どもたちを預かるところからスタートした施設でしたが、子どもたちが成長するに従って、小学校、中学校と増設していき、今では0歳から18歳まで約50名ほどが通う「教育・保育の場」となっています。中田さんの夢は、サンタナ学園を文部科学省の認定する「各種学校」にすることで、今後も在日ブラジル人の子どもたちが夢を諦めないでいられるためのサポートをしていきたいとのことでした。
課題を抱えた子どもや親をサポート
4人目の入賞者は、沖縄で放課後児童クラブや若年妊産婦支援を行う一般社団法人カナカナを運営する仲本かなえさん。仲本さんが、子どもやお母さんの居場所づくりに取り組み始めたのは、自身の出産がきっかけ。地元である南風原町で、子連れでも気兼ねなく外食することができるキッズレストランの開業が始まりでした。そこから、現在は「食」を通じて子ども達を育む児童クラブや、生活困難な家庭の子どもたちのために夜10時まで居場所を提供する「子ども元気room」といった取り組みに広げています。
性の多様性を尊重する社会づくりを目指す
最後の入賞者は、プラウド香川の藤田博美さんです。藤田さんは、1995年に香川県で女性同性愛者の団体を発足。最初は仲間たちとの交流の場だったのが、次第に他の性的少数者も参加するようになり、性の多様性を尊重する社会づくりを目指して活動する団体として発展。今では交流会にとどまらず、講演会や研修、相談窓口、2005年からは毎年香川レインボー映画祭を主催するなど、さまざまな角度から社会への啓発・発信を行い、その活動は多岐に渡っています。
大賞はCHARMの青木理恵子さんに
5名の入賞者から大賞に選ばれたのは、CHARMの青木理恵子さん。受賞に際して、今回の受賞の意義を語ってくれました。
「フィッシュファミリー財団の賞のことは今回初めて知りましたが、このような賞を設けていることに感銘しました。私たちは、一人ひとりの無視できない問題に向き合うところから活動を始めています。それは決して、企業の営利とはつながるとは限らないため、こうしてスポットライトを当てられることは多くはありません。ただ、小さな存在に寄り添いながら歩んできたことを見てくださっていた方達がいることを心強く思います。
“草の根”というのは一つひとつは細くて頼りないかもしれないが、互いに重なり合うことで上の茎をしっかり支えています。私たちも、そういう存在であり続けたいし、他の草たちと重なって、さらに強くなっていきたいと思います」
強い思いを持って社会変革に取り組んできた女性たちの“草の根”が、近いうちに大きな花を咲かせる未来につながっていくことが期待できそうです。