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平日の私が解放される! 週末古民家暮らしで見えた「都会にはない大切なもの」

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子育てしながら忙しく仕事をしていると、毎日ドタバタ。「あぁ、都会の慌ただしい生活はいっそ手放して、田舎でゆっくり暮らしてみたい」そんなことを思う方も多いのではないでしょうか。けれど、仕事も忙しいし、しばらくは無理かな、と田舎暮らしは憧れの彼方へ……。でも、そんな憧れの暮らしを実現しまている人がいます。「ストアカ」で働く松宮さんは、平日は東京で働きながら、週末は千葉県いすみ市の古民家シェアハウスで里山暮らし。春には、裏の竹林でタケノコ堀り。梅を収穫して、梅酒づくり。迷いこんだホタルが家の中に入り込むほどの自然の中で週末を過ごすと、自然に身体がリセットされる感覚だといいます。「この暮らしは、意外と気軽に踏み出せるんですよ」と言う松宮さん。いすみ市での暮らしやお仕事について聞きました。(記事提供:わたし探求メディア molecule

子供を産んで、初めて気づいた閉塞感

古民家で腰掛ける松宮さん

松宮恵さん。1歳と3歳のお子さんを育てるワーキングマザー。教えたい人と学びたい人をつなぐ学びの

スキルシェアサービス「ストアカ」で働く。

週末は千葉県いすみ市での古民家シェアハウス暮らしをはじめた。趣味はフラダンス。

高速道路のICを出て車を走らせると、目の前には一面の田んぼが広がります。いすみ市は千葉県有数の米所。

「ほたるの里」「とんぼの沼」という看板を抜けると、松宮さん家族が住む築80年の古民家に到着します。このシェアハウスは、地域おこし協力隊*が、使い手のいなかった空き家を約1年間かけてリノベーションしました。

中に入ると、昔ながらの土間。その奥には、木の温かみを感じさせる広いリビング。お風呂場やトイレも最新式で清潔です。家の敷地では、虫の音と川のせせらぎが聞こえ、自然に、心が落ち着いていくのを感じます。昔ながらの落ち着きと、現在の快適な生活がほどよくミックスされているような空間です。

子どもを産む前は、趣味のフラダンスや仕事に好きなだけ没頭。夫も自分も気ままに過ごしたという松宮さん。子どもを産んでから、都市部での暮らしに閉塞感を持つようになりました。

子どもを持つ身になったことで、過ごしづらいなと思うことが増えたんです。子どもと一緒だと遊びに行ける場所が限られている。電車も乗りづらく、車で移動となっても、休日はどこも混雑しています。大型ショッピングモールのフードコートに行くのも面白くないなと感じるようになりました」

レジャー施設などに行っても、なぜか気持ちが乗らない。なぜなんだろう? と考えた時、都市部での生活は“ずっと消費するばかりで、常に受け取り手になっている”からだと気づいたそうです。

「子どもの頃、農作業や田舎暮らしに親しんでいた夫も『都会の暮らしに飽きてきた。畑をやりたい』と言うようになりました。そんなことをきっかけに、子どもだけでなく、“大人も楽しめる場所”を探すようになったんです。特に古民家シェアハウス暮らしをしたい! と思っていたわけではなく、家族みんなで楽しめることを探していたら、この暮らしにたどり着いた感じですね

*地域おこし協力隊…総務省が平成21年より始めた地方活性化のための施策。隊員は1年以上3年以内の任期の中で、各地方自治体の委嘱を受け、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援地方などの地域協力活動に従事する。

消費するだけじゃない暮らしで、生きる力が蘇る

松宮さん家族が住む千葉県浦安市からいすみ市までは車で約2時間ほどかかります。この暮らしをはじめて約半年。子ども達もまだ小さく、毎週とはいきませんが2週間に1回のペースで通い続けています。時には、週末移住を通して知り合ったメンバーとリノベーションイベントを開催することもあります。

「週末にここへ来ると自然に何か作ったり、生産者側に回ることができるので、それがいちばん楽しいです。夫もここへ来るといつも楽しそう。都会にいるときは、公園へ行っても全然動かない夫ですが、釜でご飯を炊いたり農作業をして生き生きと過ごしています

敷地内には、四季折々の自然の実り、タケノコや梅、栗、柿の木などがそろっています。虫もたくさんいて、子ども達も虫を追いかけるのに忙しそう。

 「四季を思いっきり楽しめるんです。ここにいても十分楽しめるので、あまり出かけませんね。雑草と戦ったり、獣もでてきます。子どもも逞しくなっていますが、大人も生きる力が戻ってくる感覚があります。都会の便利な生活で失われた力が戻ってくる感覚でしょうか」

きっかけはいすみ市主催の空き家再生イベント

火を起こし、釜で炊いている様子

夫の毅さんが、手際よく火を起こし、釜で炊いてくれたお米は絶品。 出典:molecule(マレキュール)

 

暮らしを変えたいと思うようになってから、千葉県内で、農業ができる移住場所を探していたという松宮さん夫婦。子どもが生まれてからは積極的に、農家ステイをしてみたり、気になる土地のイベントに参加してみたり……と行動をつづけていました。

そんな中で、いすみ市との決定的な出会いは“空き家リノベキャンプ”に参加したことでした。いすみ市が主催した、3日間の空き家再生ワークショップ。いすみ市に存在する実際の空き物件を対象にその活用方法を市内外から集まったメンバーが一丸となってワークショップ形式で考える内容で、いすみ市にオープンなイメージを持ったといいます。

「住民でない人たちも入り込みやすい雰囲気を感じました。イベントなどに参加する中で、徐々にいすみ市に人のつながりができていったというのが大きいですね」

週末シェアハウス暮らしのメリットは?

そもそも、古民家のシェアハウスとは、よくあるものなのでしょうか。また、シェアハウスであることのメリットはどのような所なのか聞いてみました。

シェアハウスのメリットは多いなと感じています。古民家の場合は2週間も人が入らないと、カビてしまったり、傷んだりしやすいんです。その点、このうちでは私たち家族以外に、平日も住んでいる他の住民もい ます。私たち以外の人が、家にいてくれることで風が通るので、とてもありがたいですね

子どもがまだ小さいので、毎週来れるとも限らないし、家の維持は大変。家を買うという選択肢はなかったという松宮さん。最初は庭つきの一軒家で、賃貸物件を探していたそうですが、貸すくらいなら売るという人が多く、物件は少なめ。一軒家の賃貸だと月々6万円くらいからだそう。 

その点、このシェアハウスは部屋によって異なるのですが、月々3.4万円から借りられました。この生活は、趣味のようなものだと考えているので、月3万円であれば何とか出せる金額でした。ただ、こういったシェアハウスは珍しいですね。今後、増えていくといいなと思います

働き方への考え方も、柔軟に変化

 

「ストアカ」というスキルシェアサービス企業で働く松宮さん。自ら「ストアカ」へ、リノベ―ションイベントの告知を出稿することもあるといいます。「ストアカ」は女性役員もいる比較的新しい会社で、子育て中のママも多く働く職場。リモートワークをはじめ、制度も整っており働きやすいと感じています。しかし、そうはいっても働きながら、2人の子どもを育てることの過酷さも感じているそう。

 「実家は電車で1時間以上かかる距離なので、頻繁にはサポートをお願いできません。平日は、イライラしたり息がつまるなぁと感じることが、やはりありますね。けれど、ここにくると時間の流れ方が全然違う。息つぎしている感覚になります

いすみ市で暮らすようになって、社員でフルタイムという働き方へのこだわりもなくなったといいます。

「前より、働き方への考え方が柔軟になりましたね。いすみ市で出会った人たちは、自営業や自分で起業したという方が多いんです。自然と私も、自分の働き方について考えるようになりました。子どもにとっても、色々な大人の背中をみることができ、良い環境だと思っています

大人も日常からはなれ、思いっきりリフレッシュできる場をつくりたい

 

この古民家の暮らしをとても気に入っている松宮さん。先日は、シェアハウスを運営しているメンバーやゲストの方達と一緒にウッドデッキを制作するイベントを開催しました。今後、このようなイベントを通して、実現したいこともあるそうです。

「ウッドデッキのそばに、1日1家族限定のキャンプ場をつくりたいと思っています。自分達もそうでしたが、子供も自由に遊べて、大人も日常からはなれてリフレッシュできる場所が欲しかった。だから自分たちが、そういう場作りをしたいと考えています。

  キャンプ用のコンポストトイレを作るイベントも近日、開催予定。イベントなどを開催しながら、自分たちのペースでキャンプ場を完成させていく予定です。キャンプ場が完成したら、里山暮らし体験とセットの新しいキャンプの形を提案したいとも考えています。

「最近、私たちの暮らしを面白い! やってみたい! と言ってくれる方が多くいらっしゃるんです。そのおかげで、ありがたいことに自分自身のことを発信する機会も増えました。そこで伝えていきたいのが、この暮らしは決してハードルが高いことじゃない、意外と気軽に踏み出せるよ、ということです」

この地域に関わることで、台風などの自然災害や、少子高齢化や空き家問題なども、ダイレクトに感じるようにもなったといいます。

「都市部でも、社会の問題はあるけど、ここに比べると見えづらいなと感じます。社会の問題が、ここではダイレクトに分かりやすいし、気軽に行動を起こせる環境が都会よりもあるように感じています。最終的に目指すは、夫婦でフルリモートの田舎暮らしですかね」

 そういいながら、笑い合う松宮さんご夫婦は、とても幸せそうでした。 

 

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柳澤聖子
Writer 柳澤聖子

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