新しい職場、新しい上司、新しい部署。この4月から環境がガラッと変わったけど、まだいまいち会社になじめてないかも……という声をよく聞きます。毎日楽しく仕事をするためには、いい人間関係はとても大切ですね。なかなか言いたいことが言えなくて、息が詰まって仕事に集中できない! そんな方に、今回は仕事も人間関係もスムーズになる「自己主張の仕方」についてお伝えします。
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「自分の意見を言ったら空気を乱す」は勘違い!
自己主張をしましょう! というと、「自己主張すると、なんとなく輪を乱す気がする」「自分の意見をはっきり言ったら、空気読めない人だなって思われそう」と心配する人が多くいます。しかし、そんなことはありません。そう感じるのは、自己主張の仕方を間違えて認識しているからです。自己主張とは、つまり“自分の意見を伝える”ということ。“気持ちのいい自己主張”と“気持ちのよくない自己主張”を分けるのは、「意見の対象が何なのか」です。
自己主張が飛び交う現場の例として、国会答弁を思い浮かべてみてください。国会議員は、非常に弁が立つ方が多いです。私は以前、とあるテレビ番組で国会議員の方々と議論をさせていただいたことがあります。みなさん、私が口を挟む間もないほどの語彙力と瞬発力、圧倒的な熱意で、議員になる人はこんなにうまく話せるのか……と、すごく勉強になったのを覚えています。
しかし中には、聞いていて気持ちのよくない自己主張もありました。皆さんもニュースなどで国会答弁の様子を見て、なんとなくこの人の意見は嫌だなあ、と感じたことが一度はあるのではないでしょうか。その嫌な感じの正体、それは「自分の意見を言う」=「他人の意見を否定する」になっているということです。「あなたの意見、まったく筋が通ってない」「あなたは国民の事を考えられてない!」など、とにかく人の否定から始まる人、いますよね。
自己主張するということは、他人を否定するということでは決してありません。もし自分が何か発言したときに、はなから「それは違うでしょ」と否定されたら、むっとしませんか? どうせ否定されちゃうし、と思って、何も発言したくなくなるかもしれません。それでは、いい議論が生まれません。自己主張のゴールは、自分の意見をもとに相手と議論し、何かの答えや、お互いが納得できる案にたどりつくこと。相手を否定することが目的ではないという基本を、忘れないようにしましょう。
「相手を否定すること」でしか自己主張できない人たちには、独立した自分の意見はなく、「他人の意見に対する意見」しか存在しません。まず自分があって、ほかの人の意見も存在するという世界ではなく、他人の意見があって初めて、自分の意見が存在するんです。だから、他人を否定するばかりになってしまい、相手を嫌な気持ちにさせるんですね。
本当に「うまい自己主張」って?
では、どうしたら上手な自己主張をできるのでしょうか。まずは、「私はこう思います。あなたはどうですか?」「あなたは○○という意見なのですね。私はこう思うのですが、いかがでしょうか?」といったコミュニケーションをするのが大事です。自分の意見と相手の意見に「対等の価値を認める」ということが基本です。そして、どっちが正しいかという議論はひとまず置いて、相手の意見にじっくり耳を傾けるということです。
そのためには、どんなに自分が正しいと思っても、まずは相手の意見をしっかり受け止めることが必要です。世の中、100対0で片方が間違っているということはほぼありません。自分と相手の意見が違っても、それは価値観の違いに過ぎず、客観的に見てどちらが正しいかはわかりません。むしろ、両方正しいときだってあります。それに、「ああ、私とは違うけど、こういう意見もあるんだな」と相手を受け入れることで、あなたの視野も広がっていきます。
1つだけ確実なのは、どちらの意見もただ1つの意見という意味で平等だということ。だから異論を述べるときは、「そういう意見もありますね」と受容した後に、私は違う考えだという事実を述べ、その理由付けまで伝えること。そして、「こうしたらいいんじゃないか」という提案をして、議論することです。
「意見が聞き入れられない…」それ、本当?
よく「私の上司は、私の話を全然聞き入れてくれないんです」と悩む人がいます。そういう方に私がお聞きするのが、「上司にちゃんと話してみたの?」ということです。するとかなりの確率で「いえ。直接話してはいませんが、周りのみんながそう言っています。同期も、同じ経験をしたって言ってたし……」なんて返ってきます。お互いにしっかり話し合えていないなら、わだかまりが残るのも当然です。
ここで確認したいことは、この「話を聞いてくれない上司」は、あくまで人から聞いた話をもとに作り上げた、あなたの頭の中での上司だということ。それが真実の姿かどうかは分かりません。話してみたら、意外と話が通じた! ということもあるはず。あなたの思う相手が“事実”なのか、それとも“ただのイメージ”なのか、しっかりと分けるべきでしょう。
「ハラスメント上司」対策は、人事部や産業医へ
私の経験上、周りに近寄りがたいと思われている人ほど、いざ話しかけてみると気さくで、人の意見もちゃんと聞いてくれる人が多いです。むしろ「周りの意見も聞きたいのに、みんながあまり意見してくれない……」と嘆いていたりするくらい。「話を聞いてくれない上司や先輩」は、なんとなくあなたの頭の中に生まれたイメージにすぎないのかもしれませんよ。
もちろん、部下の話をまったく聞き入れないハラスメント体質の上司が、世の中に一定数いるのは事実です。メンタルクリニックに勤務していると、同じ会社の人が数人、別々に診察にくるなんてことはしょっちゅうあります。私は企業の産業医もしていますが、社員との面談で「困った上司」として複数人から名指しされるマネージャーもよくいます。そういうハラスメント上司をいい上司に変えるのは、従業員1人の力では難しいのが現実です。最近はメンタルヘルスや労働環境を重視している企業は多いですから、思い切って人事部や産業医に相談してみましょう。解決に向かうことが多いです。
職場でなかなか自分の意見を言えない……という悩みを抱える方。そんな状況が続くと、メンタルに悪影響を与えます。仕事は、平日多くの時間を占めるもの。本格的に辛くなってしまう前に、自分の意見をうまく相手に伝えて、気持ちよく働ける環境をつくりましょう!